10年前、台湾MediaTekのプロセッサは大手携帯電話メーカーからほとんど相手にされていなかった。フィンランドのNokiaや米Motorolaといった大手が社内に大勢のエンジニアを抱え、電子機器や回路の設計にあたらせていた時代だ。
スマートフォンの時代となった今、市場には中国のメーカーが相次ぎ参入し、低価格スマートフォンで米Appleや韓国Samsung Electronicsからシェアを奪っている。低価格端末のブームに火をつけたのはMediaTekだ。同社は今や230億ドル規模の頼れる半導体メーカーとして、利益幅に敏感な携帯電話メーカーの支持を集めている。
MediaTekは、レンズやスピーカーなどのハードウェアの推奨情報とともにスマートフォン向け低価格チップを販売する手法を開拓した先駆者だ。このシステムオンチップ(SoC)のアプローチのおかげで、携帯電話メーカーは購入するプロセッサに適合するパーツを探したりテストしたりするコストを省き、その分、価格を下げられる。こうしてMediaTekはこの1年で業界トップのSamsungから市場シェアを10ポイント奪っている。
調査会社IDCによれば、スマートフォンの平均価格は主にSoCのおかげで、現在の314ドルから2018年には267ドルまで下がる見通しという。Appleの最新iPhone「iPhone 6 Plus」は米国での発売価格は749ドルだった。
MediaTekによれば、SoCはSamsungとAppleを除くすべての携帯電話メーカーに支持されているという。中国の低価格スマートフォンメーカーXiaomi Technologyが創業からわずか数年で業界第3位に躍り出たのも、SoCのおかげだ。インドではGoogleの低価格スマートフォンプロジェクト「Android One」も同様の成功を収めつつある。
「当社にはマクドナルドのようなフランチャイズ式のビジネスモデルがあると考えてもらえばいい。必要な設備はすべてマクドナルドから提供されるので、各フランチャイズは初期コストを抑えられる」と、MediaTekの最高財務責任者(CFO)デビッド・クー氏は語る。
SoC戦略が奏功して、MediaTekの時価総額は3年弱で125%上昇し、7158億台湾ドル(233億9000万ドル)に達している。
MediaTekはSoC戦略の一環として、中国の部品メーカーやアセンブリメーカー200社近くと提携し、自社のプロセッサと互換性のあるパーツを顧客メーカーに供給している。
このサプライヤネットワークはまだ従来型携帯電話が主流だった時代に構築したものだ。MediaTekによれば、当時は競合の半導体大手が携帯電話大手にプロセッサを販売しており、携帯電話メーカーはスクリーンなどのパーツの選択とテストのために何千人ものエンジニアを雇っていたという。
「携帯電話大手は当社との取引に関心を示さなかった」と、クー氏は語る。
そこでMediaTekは差別化を図るべく、部品の外注やテストを自社で行う余裕のない企業にターゲットを据え、自社のプロセッサに対応するハードウェアの推奨を開始した。これにより、スマートフォン事業への参入障壁は低下し、コストも下がり、市場へのより迅速な製品投入が可能となった。
「スマートフォンと従来型携帯電話のエコシステムは同じとまでは言わないが、よく似ている。すべてがうまくつながったパイプのようなものだ。どこの製品が使われているかは重要ではない」と、クー氏は語る。
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