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 衆院選は選挙戦中盤に入った。「消費の現場」にいる人たちは、安倍晋三首相が進める経済政策「アベノミクス」をどう見ているのか。週末の商店街を歩いた。

 7日午前、名古屋市西区の円頓寺(えんどうじ)商店街。まばらな人通りの中を、のぼりを持った運動員を従え、候補者が握手をしながら通り抜けていった。

 「大企業は潤ったかもしれないが、我々は末端。(アベノミクスの)恩恵は感じられない」。候補者が通った後、商店街振興組合理事長で、はきもの店を営む高木麻里さん(50)が言った。

 店舗数は、最盛期の1960年代と比べると、3分の1ほどに減った。客のほとんどは地元の高齢者。年金頼りの人も多い。「一部の企業でボーナスや給料が上がったとしても、売り上げ増にはなかなかつながらない」

 円頓寺商店街の西側に続く円頓寺本町商店街。今年9月、車いすの修理やリサイクル販売の店「ARA物語」がオープンした。経営者の白川薫さん(40)は、お年寄りが多いこともあってこの地域に目を付けた。「2カ月で10台売れた。上々です」。ただ、アベノミクスに関しては「輸出産業がもうかるだけ。ここにお金は落とされていない」。

 6日、JR岡崎駅東口。地元商店会「岡崎えきまえ発展会」の36店舗が、ハンバーグやヘアブラシ、シャンプーなどを一律100円で売るイベントを開いた。商店会の活性化が目的で、題して「100円ショップで街めぐり!!」。

 創業112年の和菓子店「清香軒」を夫婦で営む奥田晶子さん(64)は、クリスマス用の和菓子「雪だるまサンタ」(税抜き180円)を100円で販売。用意した50個はすぐに完売したため、急きょ30個を追加した。「仕入れ値を考えると泣けてきます」

 円安で、砂糖や小麦粉などの原材料費が上がり続ける。地元密着の店としては、なかなか値上げできず、利益は薄くなる一方だ。「手作りの個人商店はやっていけない時代なのか」。奥田さんは渋い顔だ。

 妻と3人の子どもたちと精肉店を訪れた会社員宮本彰仁さん(47)は、100グラム100円の鶏の空揚げを上限の500グラム買った。「アベノミクスの効果はまだ実感できていない」という。

 日用品の値段が上がったと感じる。10年ほど前、スーパーの特売で1キロ100円だった小麦粉が、最近見たチラシでは198円になっていた。「円安による好循環が自分の所に来るよりも先に、周りの日用品の値上げについていけない人が増えるのではないか」(小川奈々、木曽尚人)