カネミ油症:子や孫に症状 高まる「救済を」
毎日新聞 2014年12月08日 15時00分(最終更新 12月08日 15時34分)
国内最大の食品公害「カネミ油症」で、患者の子どもや孫が患者と同様の健康被害を訴えている。原因の米ぬか油を直接食べていないが、主因のダイオキシン類が母胎を通じて伝わったとみられている。しかし、多くが患者として認定されないままだ。年齢を重ねるにつれ症状が顕著になる例もあり、救済を求める声も高まっている。【山本太一】
「国や企業が人命を軽視し、子や孫への被害が広がっている。何の罪もない子らを救ってほしい」。今秋、福岡市の大学であった講演で、患者の森田安子さん(61)=福岡県大牟田市=が学生らを前に声を震わせ訴えた。
森田さんは長崎県五島市出身で中学時代に米ぬか油を食べ3カ月間、ほぼ寝たきりになった。3回流産した末、やっと授かったのが長女(35)だったが、長女にも二十歳を過ぎて異変が生じた。背中や顔がやけどしたように赤くなる症状を繰り返し、爪も変形。数年前には子宮筋腫が見つかった。
カネミ油症と認定されれば医療費が無料になるため、長女は2010年と11年に検診を受けた。10年にはダイオキシン類の血中濃度が基準をやや上回ったが認定されなかった。「症状や経過、血液中の所見を総合的に判断した」という理由だった。
「どうすれば認められるのか」。長女は基準に疑問を持つ。「結婚して子供がほしいが、子供に悪影響が出るかもしれない」と不安も強い。森田さんは「子どもにつらい思いをさせた自分が嫌になる。今訴えないと放置されたままになる」と昨年秋から講演などで救済を呼びかけている。
「なぜ兄弟間で判断が分かれるのか、納得できない」。福岡県内の患者の女性(62)は憤りを隠せない。子供3人のうち長男、長女は生後間もなく認定されたのに、次男(38)は認められなかった。
女性は「生まれたときは顔がむくみ、体が黒っぽかった」と振り返る。幼い頃から高熱や腹痛などに見舞われ、現在も年に数回は原因不明の高熱で入院を繰り返す。へその緒から高濃度のダイオキシン類が検出されたが、診断基準にないとして考慮されなかった。