■現実的に可能なのか
ロイター通信は、匿名の消息筋の話として「平昌五輪組織委が予算問題や工期の遅れなどを理由に、そり種目を1998年に冬季五輪を開催した長野で行う案を国際連盟と話し合っているところだ」と報じた。平昌五輪のそり種目が行われる予定のアルペンシア・スライディング・センターには1288億ウォン(約140億円)以上が投じられる。16年10月に完成予定で、現時点での工程率は6%を少し超えた程度だ。だが、そり種目移転説について、平昌五輪組織委員会は可能性が低いという見方をしている。同組織委の趙亮鎬(チョ・ヤンホ)委員長(韓進グループ会長)は「IOC総会で『アジェンダ2020』が確定すれば、五輪組織委にさまざまな機会が開けるかもしれないが、競技場の再配置に関しては現実的には難しいため、IOCと引き続き話し合っていく」と語った。
同組織委のシン・ムチョル広報局長は「そり競技が行われるスライディング・センターをはじめ、新設競技場6カ所は既に着工している。日本と冬季五輪を共催する可能性は今のところ薄いと見るべきだ」と正式な見解を表明した。
文化体育観光部(省に相当)関係者は「もしIOCがこうした改革案を1・2年前に出していたら前向きに検討しただろうが、全ての競技場建設が着工した現時点では非現実的なので受け入れがたい」と述べた。そして「バッハ会長の発言は、2020年の東京五輪を韓国と日本が共催しようというもの。もし夏季五輪の人気種目を韓国で開催すると言ったら日本は受け入れるのか」と問い返した。
IOCの提案は勧告にすぎず、強制力はない。しかし、IOCが正式に提案すれば、現実問題として慎重に検討する必要があるとの見方もある。あるスポーツ界関係者は「現在建設中のスライディング・センターを使わないとなれば、無駄になった費用や建設会社に対する補償金の額、そして違約金を考慮に入れても予算の半分は節約できる。完成後に必要となる維持費も莫大(ばくだい)な額になるため、経済性の面では非常に効率的な提案だ。組織委員会と江原道がスライディング・センター放棄に掛かる諸費用を全て補填(ほてん)し、夏季種目を江原道などに招致する条件で実利を追うことも現実的な代案になるかもしれない」と話している。