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ジューク・ボックスというメディアの消滅~音楽メディアと音楽聴取形態の変容(2/3)

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FM放送の出現

ジューク・ボックスの消滅過程を糸口に70年代の音楽聴取形態の変遷について考えている。今回は第二回。「ジューク・ボックスの消滅」について。
70年前後、もちろん、レコード以外にも音楽聴取メディアは存在した。一つはラジオ聴取だ。1965年、NHKによってFMによるステレオ放送が開始され、1970年にはFM東京が開局。FM放送はAM(こちらは深夜放送などで若者に人気を博していた)よりも数段音がよく、しかもステレオ放送が聴ける魅力的なメディアとして出現する。この時期、放送を録音可能なテープ・デッキも存在した。つまり、これを録音すればコレクションを作成することは可能だった。ただし、それは映画フィルムみたいなテープを使ったオープンリール型のデッキ。高額であり、操作もややこしく(テープの取り替えが面倒、ライン端子がないなど)、しかも何のために利用するのかちょっと疑問なものでもあった(レコードをコピーするなんてことは現実的ではなかった。生テープが高いので、購入して録音するよりもレコードを購入した方が安かったのだ)。たとえば、一部のマニア(とりわけクラッシックの)が、NHK-FMが放送していた海外の音楽ライブを録音して楽しむなんて使い方のがあった程度(作家の五味康祐はバイロイト・フィスティバルで演奏された「ニーベルングの指輪」の全てを毎年録音していたことで有名)。だから、これらはまだまた一般的ではなかった。

オーディオブームとカセット・デッキ出現による音楽聴取の個人化

電蓄、ステレオ、そしてジューク・ボックス、三つのメディアの棲み分けが明確だった70年代初頭。ところが73年頃からこの構図が崩れ始める。これらがいずれも全く別のメディアに置き換えられていくのだ。また、それによって音楽聴取のスタイルも変容していく。それは、いうならば「音楽のパーソナル化」だった。
先ずカセット・テープレコーダー、それに引き続くカセット・デッキの普及だ。オランダ・フィリップス社はカセット・テープを60年代初頭に開発していたが、これが70年代になって質を上げ、TDKやSONYなどがテープを発売し始める。これによって録音という行為が一般的なものになっていくのだが、これをカジュアルかつ携帯可能なものとして重宝されたのがラジカセだった。ラジカセ自体もアイワが1968年に発売を開始していたが、ここに前述した高音質のFM放送が重なる。FMではコンテンツとして新譜が頻繁に放送された。放送ではシングルのみならず、場合によってはアルバム全て(多くの場合は片面=半分だったが)をそのままオン・エアーするというかたちを採用した。こうなるとFMの音楽放送をカセットテープで録音する習慣が生まれる。ラジオのソースをコピーすればライブラリーの出来上がりというわけだ。こういった行為は「エアチェック」と呼ばれ、あアッという間に若年層(下は中学生くらいまで)普及するようになる。また、これを煽ったのが『FM fan』『FMレコパル』といったFM情報誌だった(『FM fan』の創刊は66年。ただしブレイクは74~75年あたり。しかも当初はクラッシックとオーディオ(長岡鉄男の評論が人気だった)に特化されていた。『FMレコパル』の創刊は74年)。これら雑誌のウリは巻末のNHK-FMとFM東京の二週間分のプログラム。要するに、これを購入し、どの番組をエア・チェックするのかを吟味するというわけだった。

こういった、いわば「コピー文化」は、さらに一歩前進する。牽引車となったのはオーディオ・ブーム、そしてカセット・デッキの登場だった。これらは、よりHI-FIで音楽を本格的に聴きたいという輩にとっては、それまでの家具調ステレオが陳腐なものに見えてくる効果をもたらす。つまり「アレは音楽を聴く装置じゃなくて家具」という位置づけ。だからイケてない。そこでアンプ、チューナー、スピーカー、ターンテーブルを分離して機能美溢れるかたちで再生機器が売り出された。これらは組み合わせることから、総称してコンポーネント・ステレオと呼ばれた。そのメタリック調でメカニカルなデザイン、そして小ぶりなそれは、まさにセパレート型の家具調ステレオへのアンチ・テーゼとも言うべきデザイン。実際はともかくとして、いかにも「音質にこだわる」といった装いだった(コンポーネント・ステレオは安価なセット販売(SONYのListenシリーズなどが典型)と、それぞれを高額で別売りするスタイルへと分化する。前者は「シスコン」、後者はバラして売るので「バラコン」と呼ばれた)。以降、コンポーネント・ステレオは一般にオーディオという名で呼ばれることになるのだが、これが70年代前半のオーディオ・ブームへと結実する。電器メーカーはこぞって独自のオーディオ・ブランドを設立(ナショナル=Technics、日立=Lo-D、東芝=Aurexといった具合)。音楽機器専用のメーカー(サンスイ、アカイ、ナカミチ、ティアックなど)も隆盛を極めた。音楽再生機器は応接室に飾るものから、自室で音楽を聴くものへと変化したのである。

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