イラン:「イスラム国を空爆」外務次官認める

毎日新聞 2014年12月07日 21時35分(最終更新 12月07日 22時25分)

 【テヘラン田中龍士】イラン軍機がイラクで過激派組織「イスラム国」を空爆したとの未確認情報について、英紙ガーディアン(電子版)は5日、イランのラヒムプール外務次官が空爆を認めたと報じた。イランがイスラム国への空爆を認めたのは初めて。イラン側の見解は発言者によって食い違ってきた。背景には、イラクで空爆作戦を展開する米国との「協調」を疑われることへの強い警戒感があったとみられる。

 ◇米との連携は否定

 ガーディアンによると、ラヒムプール氏は5日にロンドンで行われたインタビューで、イラク政府からの要請で空爆したと明確に認めた。同じイスラム教シーア派主導のイラク政府や、共通の敵・イスラム国と戦うクルド自治区を「友人」と表現し、「友人たちの利益の保護」が空爆の目的だったと述べた。

 ただ、ラヒムプール氏は「米国とは協調は一切なかった。イラク政府のみと協調した」と強調。米国との連携は否定した。

 空爆を巡るイラン要人の見解は揺れ続けている。同じ5日にラリジャニ国会議長は「直接的にも、他国との共同においても、一切空爆はしていない」と明確に否定。これに先立つ2日に軍幹部のジャザエリ参謀副長、3日にはアフハム外務報道官がそれぞれ、米国との協調を強く否定しながら、空爆の有無には触れない不自然な弁明を繰り返していた。

 イランにとって、「米国は信頼できず、協調はない」(最高指導者ハメネイ師)との対米基本方針は絶対だ。ところが、イラクでの空爆を認めれば、同国上空で作戦行動中の米国と調整を図ったとの見方は避けられない。このため、最高指導者の方針と現実とのはざまで、要人発言に微妙なブレが生じている可能性がある。

 ラヒムプール氏の発言は、イランの空爆を示唆した米国防総省の2日の見解と矛盾せず、実際に空爆が行われた可能性はさらに高まった。だが、イラン国営通信は6日、ガーディアンの報道を否定する記事を掲載した。

 イランは1979年、親米のパーレビ国王を追放し、イスラム国家を樹立した。この革命以降、米国を敵と位置づけることで、国内強硬派を中心にイスラム指導体制の求心力を維持してきた。このため、米国と急速な融和ムードが広がれば、強硬派の存在意義は薄れ、体制の弱体化を招く恐れがある。

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