経済産業省は25日、原子力発電所の廃炉に関する会計制度を作る専門委員会の初会合を開いた。早期の廃炉で生じる巨額の損失を電気料金に算入できるようにする方向で、今秋にも会計制度の改正案をまとめる。電力会社の財務上の不安を和らげることで、再稼働が難しい原発の廃炉を促す狙いがある。
原子力規制委員会が7月に原発を稼働させる条件を厳しく定めた新たな安全基準を施行すると、電力会社は巨額の安全投資を迫られる。運転しても投資に見合う収益が得られず、再稼働をあきらめて廃炉を決断する電力会社が相次ぐ見通しだ。全国50ある原発が今年度中にすべて廃炉となった場合、特別損失の総額が4.4兆円に達する可能性がある。
専門委の座長を務める山内弘隆一橋大学大学院教授は同日の会合で「今の会計制度は、新規制に適合した会計制度に作り替えるべきだ」と語った。
会計見直しのポイントは3つある。第1に、廃炉に必要な設備の費用としての計上を認めること。30~40年かかる廃炉の期間中も、廃炉作業に使用する原子炉格納容器などの設備を「資産」とみなし、減価償却を続けられるようにする方向だ。
第2に、早期の廃炉で生じる費用の積み立て不足を解消する枠組みだ。
現行の会計制度は原発を40年以上稼働させることを前提に、電力会社が廃炉費用を積み立てる仕組み。40年未満で廃炉を決めると、廃炉費用の積み立て不足が特別損失となる。電力会社は一括計上を迫られ、財務基盤が急速に悪化する。専門委では廃炉後も積み立てを続け電気料金に算入できるようにする方向で議論を進める。
第3に、原発が稼働していないと積立金を積めない状況の見直しだ。再稼働できない状況でも積立金を一定額ずつ積めるようにすることも検討する。制度改正案は7~8月中にまとめ、意見募集をした上で今秋にも会計制度を変える方向だ。
経産省が会計制度を緩和するのは、電力会社の不安を払拭して廃炉を進める狙いがある。再稼働できない原発がいたずらに放置されれば、安全上のリスクも大きいためだ。
26日には電力各社の株主総会が予定されており、廃炉への対応について株主からの質問が相次ぐ見通しだ。業界関係者は経産省が株主総会の前日に会計制度の見直しを打ち出したことについて、「電力会社に『廃炉が可能』というシグナルを送った」と見ている。
廃炉費用、廃炉、電力会社、原子力発電所