アベノミクスでは、予想インフレ率引き上げ→予想実質金利低下→民間投資促進が需要拡大の柱として期待されています。
次のグラフは日本経済の生産力拡大に寄与する民間企業設備投資と公共投資のGDPに占める割合です。バブル崩壊後の民間企業設備投資は、GDPの約15%が天井になっていたことが分かります。2014年Q3は14.1%なので、「天井」が迫っていることになります。*1
資本形成を形態別に示したものが次のグラフです。生産力拡大に最も寄与する機械設備等は、8%強が天井になっていることが分かります。2014年Q1は8.2%、Q2は7.9%なので、こちらも天井に近づいていることになります。
2000年以降を拡大します。
この「天井」を突破できるか否かがアベノミクスの成否の鍵を握ることになりますが、そこで懸念されるのが、グローバル企業の現地生産シフトの流れです。トヨタ自動車のグローバル生産台数と国内販売台数を「2002年11月~2003年10月」と「2013年11月~2014年10月」で比較すると、
- グローバル生産+357万台
- 海外生産 +358万台
- 国内生産 -1万台
- 国内販売 +2万台
となっています。「海外需要が増える→海外生産増で対応」「国内販売が増えない→国内生産も増えない」の構図です。
国内需要の拡大が見込めないことが、国内投資の抑制要因になっていると考えられます。アメリカでの研究によると、投資は金利変動よりも需要(成長)見通しに強く影響されます。
New research: interest rate cuts don't shift corporate investment - MIT Sloan School of Management
Based on nearly 60 years of data, “what we find is that moving the interest rate by one or two percent does not generate a change in investment behavior on the part of corporations,” says Kothari.
Low interest rates didn’t spur corporations to invest, nor did high rates seem to inhibit them from investing, suggesting that “cheap” outside capital is of limited importance in investment decisions.
“What corporations really respond to is what sort of profit outlook they face, and the general environment for growth,”
国際決済銀行(BIS)のチーフエコノミスト等を務めたWilliam Whiteが先月のFT紙への寄稿で指摘しているように、企業利益よりも家計消費(国内最終需要の柱)を刺激する政策が必要ではないでしょうか。*2
個別企業にとってみれば、一社だけが賃上げをしても得るものは少ない。企業経営が不安定となっていき、経営者ばかりか、内部で出世するしかない幹部にとっても得策でない。しかしマクロ経済全体ではどうだろうか。家計の所得が上昇すれば、消費支出は増大し、必ず内需は盛り上がる。つまり個別の細かな行動の総和が大きなマクロ的なうねりをもたらすのである。
金利低下より重要な将来見通し改善 - Think outside the box
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