書店員が質問に答える
全国の書店員さんが色々な質問に回答してくれるコーナーが連載されています。今回はネット書店や電子書籍について。
記事引用
電子書籍の普及は進んでいると思いますか?(愛知県 20代 女性)
内田剛(三省堂書店神田神保町本店)
進んではいますが急激に伸びているとは思いません。紙媒体の需要は相変わらず根強く共存していくと思います。
高橋佐和子(山下書店南行徳店)
進んでいると思いますよ。お客様でも、「電子書籍は文字を大きくして読めるから目の悪くなった年寄にとっては便利だ」とおっしゃいながら、本も購入してくださる方がいます。電子書籍が良い人、紙の本が良い人、どちらがいらしても良いと思うのです。本屋にしかないものを、私たち書店員が提供できて、居心地の良い場を作り上げることができれば、きっと、お客様は支持してくださると信じていますから。
とはいえ、書店の数が減っていることも事実。書店数はアルメディアの調査では1万3943店。前年から298店減と、ほぼ1日1軒の割合で姿を消しているそうです。
新聞記事で読んだのですが、どうして書店はどんどん潰れているのですか?(東京都 40代 男性)
内田剛(三省堂書店神田神保町本店)
本が売れなくなってしまったからですね。書店は文化の窓口です。ぜひとも足を運んでください。まずは「待ち合わせは本屋で」を復活させましょう。
そこで今回は、町の書店の魅力について書店員さんに語っていただきました。
ネット書店や電子書籍と比べて、実店舗の強みはなんだと思われますか?(東京都 40代 女性)
栗原浩一(あゆみBOOKS仙台青葉通り店)
一番の強みはやはり、手にとって見ることができるからだと思います。実際の書籍の装丁や質感、重量感や匂い? などなど。仕事で品出ししていても、いろいろ気になります。あとは、目的の商品以外の発見ですね。お店によって並べかたや売り方が様々なので、面白い本を発掘できる楽しみはリアル書店ならではです。
岡一雅(MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店)
ネット書店は迷わず最短ルートで購入をするには便利ですが、実店舗は読んでみたい本を探すことに向いています。 平台や棚差しにある、様々な装丁で自己主張する本たちを眺めて、自分の気になる箇所を手に取ってパラパラ読みできる。そういった紙の本が並ぶ売場をあちこち彷徨って、思ってもみなかったものに出会える機会を提供できるのが、実店舗の強味ではないでしょうか。
高橋佐和子(山下書店南行徳店)
「会話」や「コミュニケーション」によって、本に興味を持っていただけることです。入店することで、人と会って笑って話せる場があることで、何だか元気が出たり、読んでみたくなってしまう感覚があることです。パソコン上では会話が出来ませんし、「何が欲しいのか分からない、でも何か読みたい」といったときに実店舗は強いです。私は、お話をすることで、毎回「書店の強みはここだ!」と感じていますので、大事にしたいです。曖昧なタイトルでも、店員皆で捜索したりしますから、お客様と一体になっている感じ、自分たちが探している本のように感じられるところ、見つかったときにお客様とハイタッチする喜びは、実店舗でしか味わえません(笑)。
二村知子(隆祥館書店)
実際に、手に取って本を見ていただける。感動した本など直接、肉声でお薦めすることができること。隆祥館書店では、その本を書かれた作家さんと読者が、直接感想を伝え合うことができる「作家さんとの集い」を毎月開いています。小説の裏話や、いろいろなエピソードを聞かせていただけます。また、お料理や、ヘルス・ビューティ(医療。美容関係)の先生にご登場いただき実践体験講座も開いています。毎年6/15は、父の日イベントで、絵本の読み聞かせ・木工イベントをしています。普段ふれあいの少ないお父さんとお子さんの思い出をつくる催し。反抗期になっても、「思い出」があればきっと互いに思いやれると思うのです。町の小さな本屋は、本という媒体をただ販売しているだけではなく、本を介して、心と心で繋がることができるところが嬉しく、また喜んでいただけるところだと思います。イベントの予定はこちらでご確認ください。→http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/
内田剛(三省堂書店神田神保町本店)
本はその存在自体が文化です。作家が生み出した文章、言葉だけでなく、紙を触り、造本を楽しみ、表紙やイラストカバーまで全てが作品です。その質感をリアルに体感できるのは実店舗以外にありえません。
電子書籍と紙媒体
電子書籍が普及・一般化すると、紙媒体の書籍はどんどん駆逐されていく…なんて意見も、数年前の自炊ブームのときにはあったものです。電子書籍は普及しましたし、タブレットもずっと安い価格で入手できるようになりましたが、今のところ紙媒体の本は消える気配はありません。
わたしは電子書籍にどうも慣れない
わたしは、電子書籍に対してちょっと消極的です。大きいタブレットで表示させても、どうも慣れない。頭に入ってきづらいって部分もあるように思えます。DoCoMoのdマガジンで雑誌を購読していた時期もありましたが、やっぱ紙の本が欲しいなぁと思って解約しました…(電子書籍用に購入したASUSの10インチタブレットが泣いている)。今では寝る前にアプリで青空文庫で古い文学を読む程度ですねぇ(スマホ利用)。別に全否定したいわけではないけど、わたしはちょっと「合わない」「好みじゃない」って感じ。
こういうタイプの人間は他にもいると思うので、これから電子書籍が普及していっても紙媒体の本は共存し続けるんだろうなぁと思います(書店員も同じ意見のようです)。CDがDL販売に負けて、コレクターグッズとなってしまった…このような状況は、出版の世界では当分起きそうにないなぁってのが私の予想。
ネット書店
では、ネット書店はどうでしょうか?Amazonで頼めばすぐに来るし、学生ならAmazon Studentで10%ポイント還元受けられるし…ネット書店は、リアルの本屋の大きな脅威になっていると思われます。たぶん、電子書籍以上に厄介な存在なんじゃないかなぁ。
リアルの本屋にも存在価値はある
ただ、リアルの本屋じゃないと出会えない本もありますし…何より、目次や概要をパラパラとその場で確認することができるってのは強い。たとえば、宅建の過去問集を探す場合、どんな形式になっているのか(年次別なのか科目別なのか)などはリアル書店で比較しながら探すのが手っ取り早いものです。ネット書店でも立ち読み(試し読み)ができるようになっていますが、ちょっと不便だし時間がかかる。
わたしの本屋巡りの仕方
わたしは、本屋めぐりをするときには、Amazonのアプリで気になる本をスキャニングして、レビューや中古の価格などを確認するようにしています。ちょっと気になるなって本があったら、その場でお気に入りリストに追加。本って新陳代謝が激しいですから、その場でリストに入れておかないと一生で会えない可能性もありますからねぇ。本との出会いは一期一会、がわたしの恩師の言葉。
このように、ネット書店にもリアル書店にも双方のメリットがあります。今後は、両者がうまく連携していくんじゃないかなぁと期待。YAMADAみたいに、単なるショールームにはならないはず…
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音楽も今またアナログレコードが売れてるじゃないですか。
もともと90年代前半にアナログってなくなる予定だったんです。
でも、最後にプレスするジャズ盤の予約募ったらものすごい注文がきて。
で、それからもアナログはプレスされ続けているんです。
実は90年代末期~00年代上期ごろにはアナログバブルって起きたくらいですから。
猫も杓子もアナログをリリースした時代です。
ウタダもモー娘もアナログ出したんですよ。信じられます?
で、変わって00年代入ってダウンロードが出て今度はCD不況になった。
でも、07年にまたアナログが復活したんです。
07年以降は前年の倍倍ゲームで売れ続けています。しかもカセットも復活してる。
HMV渋谷は10年に閉店したけど14年にアナログショップとして復活した。
もう驚きの連続です。
こういう流れを見るとアナログってなくならないと思います。
音楽は再生装置が必要ですけど本はいらないですから。
買えば読める。これは大きなメリットです。
タブレットは重いし硬い。紙のほうが扱い易いんですよ。どう考えても。
ただリアル書店は確かに厳しいでしょうね。
アマゾンがある限りネットで簡単に紙の書籍は買えちゃいますから。
だからリアル店舗ならではの仕掛けが必要なんでしょう。
ワザワザ足を運ぶだけのメリットを感じられるように。
そうそう人は自宅に引きこもってばかりじゃいられないですからね。
絶対に遊びに出かけます。その経路に書店を含ませるようにするんです。
例えばコーヒーを無料で飲めるようにするとかいいんじゃないか、と思います。
カフェに持ち込んで読めるというのはあるけど、本を買ったら横のカフェのコーヒー無料権
あげるとか。もしくはいっそカフェを無料開放して本を試し読みしながらタダでコーヒー飲める、とか。
コスト的にどうかなど気になることはありますけどね。
でもソレくらい勝負にでればお客さんは本屋にいきますよ。
まず店舗に人を呼ばないと話なりませんから。そして本を買いたくなる仕掛けも作る。
今までみたいにほっといて本が売れる時代は完全に過ぎましたから。
まず客が本屋による動機付けを考えないと話になりませんね。
何事もイノベーションです。変革しなければビジネスでは勝てません。