韓国の牛乳メーカーは今年5月、騒然となった。中国政府が食品安全規制を強化し、韓国製の殺菌牛乳の輸入を全面的に禁止したからだ。殺菌方法と流通期限が中国国内の基準と異なるというのが理由だ。中国側では、摂氏70度で殺菌処理を行い、最低15日の流通が可能なことが基準となっている。これに対し、韓国製の牛乳は130度以上の超高温殺菌を採用し、流通期限は約10日だ。
韓国の方式に比べ、中国側の殺菌基準が劣るにもかかわらず、中国政府は自国の基準を問答無用に守るよう求めている。ある牛乳メーカー関係者は「予想外の規制で、今年中国に輸出した殺菌牛乳の量は年初時点の目標値の30%にとどまった」と述べた。
中国の非関税障壁が対中輸出の障害になっている。中国政府は他国にはない技術認証を要求したり、検疫基準を強化したりして、関税以外の手段で韓国企業の輸出に壁を設けている格好だ。
■キムチ輸出ついにゼロ
中国の非関税障壁の端的な例は、適正水準を超える行き過ぎた検疫基準だ。昨年対中輸出がゼロになったキムチが代表例といえる。中国政府は韓国製キムチを野菜の漬物を指す「泡菜(パオツァイ)」の一種と見なし、同等の衛生基準(100グラム当たり大腸菌30個以下)を適用したためだ。
韓国のキムチ輸出大手、大象FNFのムン・ソンジュン氏は「キムチは発酵食品で、体に良い乳酸菌が生まれるが、中国政府は乳酸菌を大腸菌群として扱い、輸入を阻んでいる。世界50カ国以上にキムチを輸出しているが、中国への輸出は全くできなくなった」と嘆いた。
化粧品業界は衛生許可手続きに苦しんでいる。LG生活健康は最近、中国で来年夏に販売する製品の衛生許可を現地当局に申請した。品目別に個別に許可を取得する必要があり、長期間を要するためだ。例えば、同じブランドのリップスティックでも色合いが違えば別途許可を取る必要がある。同社関係者は「中国で衛生許可を取得するには9カ月以上かかる。こんな構造では流行に敏感な最新製品をすぐには中国に輸出できない」と話した。
中国の製品認証義務付けも韓国企業には足かせとなっている。電子製品、自動車部品など工業製品157品目は、国際認証を取得したとしても、中国の品質認証を別途取得することが義務付けられている。また、認証の有効期間(5年)が過ぎると、再認証を受けなければならず、中国の安全基準が変更された場合でも、認証のやり直しが求められる。認証手続きが複雑なことで知られる欧州連合(EU)でも、一度認証を受けた商品は仕様変更がなければ再認証が不要だ。中国に自動車のヘッドランプを輸出している自動車部品メーカーは「認証を受けるたびに約1500万ウォン(約160万円)の費用が掛かる」と話した。