リーハイパロ古美門:ココさん
黛:トリコさん
服部:小松くん
さんさんと朝日が降り注ぐ小さなテラス。
木製の椅子にゆったりと腰かけた見目麗しい濡烏色の男は、
自身の膝の上に招いた愛らしい人を見つめて、うっとりと微笑んでみせた。「はい、ココ先生。あーん♪」
「あーん・・・。うん、今日のパンケーキも最高に美味しいよ、小松くん。」
「ふふっ・・有難うございます。」
料理番の小松が作る一品は、どれもこれも頬が落ちそうなほど美味だ。
彩、バランス、食べ合わせ、旬。
すべてが調和された完璧さである。朝食のパンケーキには、特製のブルーベリーソースが添えられ、甘すぎない濃厚なクリームと非常に相性がいい。
ココは、小松に食べさせてもらうという最高のスパイスでもって、穏やかな朝食を楽しんでいた。そこへひょっこり顔を出したのは、青い髪をした大男である。
2メートルを超えるその長身と鋼の筋肉で構成された彼は、その見かけからは想像できない職業についている。
単純ゆえに六法全書を丸暗記した正義感の塊、名前をトリコという。
縁あって、ココの事務所で飼われることになった、新米弁護士である。「あ、あのよぉ・・・。」
「――首だ。」
「へっ?」
何となく、空気を呼んでおずおずと発言してみたが、飼い主から浴びせられたのは辛辣な毒舌だった。
トリコがぎょっとしてココを見やると、彼は膝の上から小松をおろし、すくっと立ち上がる。
行儀悪く品もなく、トリコを指さしながらツカツカと歩み寄ったココは、侮蔑の眼差しでトリコを睨み付けた。「ボクと小松くんの怠惰で甘美なる休日をぶち壊しにする奴は首だ。すぐに出ていけ。」
「いや、今日は平日じゃ・・、」
「ボクが休日だと言ったら休日なんだ。」
事務所の主とはいえ、横暴極まりない言動に、トリコはすぐ頭に血を上らせる。
「そんなら朝の八時半までに電話一本入れろよ!!」
食ってかかるトリコをココは、しっしと手で追い払う仕草をし、くるりと踵を返すとテラスへ戻っていく。
が、お目当てだったらしい愛らしい料理人は、パンケーキを乗せた皿を両手に携え、にこにことトリコの前に立った。「トリコさん、おはようございます。ご一緒にいかがですか? 朝食。」
「おっ、うまそー♪ もーらいっ!」
パンケーキをタワーバーガーのように積み上げたトリコは、大きな口でぱくりと飲み込んだ。
途端に、口の中で溶けたパンケーキの生地の滑らかさと柔らかさに、トリコの表情がだらしなく緩む。「うんめえぇ〜っ!! なあ、いっつも思うんだが、小松。お前、いったい何者なんだ?」
「何の取り柄もない、ただの料理人ですよ。」
見下ろされた小松は、気圧されることなく、柔らかな笑顔で答える。
そんな小松と目線を合わせるようにしゃがみ込んだトリコは、上から下までまじまじと小松を見つめた。「いやいや、お前なら、星がいくつあっても足りない・・そんなレストランのシェフになれるぞ!」
「ふふ・・・、買被り過ぎですよ、トリコさん。お粗末さまでした。」
空になった皿を誇らしげに見つめ、小松はちょこんとお辞儀をした。
「トリコ・・・・・・・死ね。」
お目当ての小松を取られたココの、毒舌を超えた呟きが、朝の陽ざしの中で溶ける。
+ + +
「だいたいお前はいつもいつもいつも金にならない案件ばかり持ってきて・・・、この間だって、」「あー悪かったよ。うんうん。」
「お前の単純かつ食欲にぶっ飛んだ愚鈍な思考回路を察するに、脳みそまで筋肉でできてるだろう?」
「あー悪かったよ。うんうん。」
「一度、レストラングルメに不法侵入して大竹シェフが考案したとされるセンチュリースープの出涸らしを啜ってくると良い。
少しはましになるだろう。」小松の焼いたクッキーを頬張りながら判例集と睨めっこしていたトリコは、ココの小言を右から左へ受け流していた。
と、鳴り響いた電話に意識を取られ、全員がそちらを伺う。
昼食の下ごしらえをしていたらしい小松が、いそいそと電話機へ向かい、受話器を上げた。
数言、話し終えると、やや困った風な顔で、ココに子機を差し出す。「ココ先生、お電話です。」
「用件は?」
「離婚調停とのことです。」
「――すぐに断ってくれ小松くん!! 離婚紛争など汚物だ!!!」
「かしこまりました。」
ですよね顔の小松が、”申し訳ありませんが・・・”とココに手渡されることなく戻った子機に耳に当て、頭を下げつつ応対する。
が、聞き捨てならないトリコは、徐にソファから立ち上がると、小松からひょいと子機を奪った。「おいおい、事情も聞かずに断るのかよ! 小松、オレが代わるわ。」
「勝手なことをするな、トリコ・・・。って、おい!!」
小松が困惑顔でココを見やる。
申し訳ありません、と顔に書いてあるから、ココは小松を責められない。
ったく筋肉バカめ・・・と呆れ顔のココのじと目も気にせず、トリコは依頼人とのアポイントを勝手に取り付けていた。
+++やってきたのは女性だった。
明るめの髪を肩まで伸ばした、顔立ちも華やかな美しい女性である。
身に着けている貴金属や衣服は、一目で高級品とを分かるほどのものだ。女性は、大竹という著名なシェフの妻で、今年で結婚3年目になるという。
が、突然旦那から離婚を言い渡され、困惑しているというのだ。
トリコは思わず、ソファから身を乗り出す勢いで、女性からの話を聞く。「で? アンタは旦那と別れたくないんだな?」
「はい。・・彼は以前から、その、不倫をしていたみたいで、」
大竹が妻を捨て、現在の不倫相手と一緒になりたいのだという。
トリコは、げえ、と蛙が潰れたような声を出し、身勝手な夫に嫌悪を抱いた。「有責側から一方的に離婚はできない。が、裁判起こされると面倒だな。」
何せ旦那には奥さんへの愛情がないんだから、とトリコが零すと、女性はハンカチを目元に押し当てさめざめと泣く。
「困ります、私。・・・主人とは、お見合いでしたけれど、それなりに上手くやってきましたの。それを急に離婚だなんて、」
「――それはお困りになるでしょう。
何せあの世紀のスープを考案した一流のシェフの妻となれば、その恩恵は多大なものがあるでしょうからね。」突然割って入った声音に、夫人とトリコは弾かれたようにデスクを見やる。
優雅なティータイムを楽しんでいたらしいココは、夫人に冷たい一瞥をくれてやると、再びふんぞり返る様にイスに深くかけ直した。「あの、ココ先生はこちらの方ですよね・・・。 私は、ココ先生の評判を聞いて伺ったんですが・・・」
「申し訳ありませんが、あいにくボクは離婚問題は扱いませんので。」
「あなたがお高いのは聞いておりますわ。ワタクシの希望通りに主人と再構築できましたらお望みの金額をお支払い致します。」
ぎゅっとハンカチを握りしめた夫人が、縋る様な目でココを見ている。
が、それを見たトリコは一瞬惚けてしまった。
何故だろうか、夫人の頬が少し赤らんでいるように見えたのである。「ボクはいくらお金を積まれても、引き受けないと決めている仕事が二つあります。
一つは美食屋。未知なる味を求めて探究した結果が、今のこの体質だからです。
もう一つは男女のもつれ関係。ボクのこの類稀なる能力は、親戚の世話焼きばあさんの代わりにあるわけではありませんので。」「そ、そんな・・・・。」
きっぱりと断りを入れたココに、夫人は泣きじゃくる。
その音が耳障りなのか、椅子を回転させるとついには背を向けてしまった。
あんまりな態度に、思わずトリコはソファから立ち上がって、ココに向き直った。「プロなら仕事選ぶなよ、ココ!」
「あーもー、小松くん、この脳みそまで筋肉でできた筋肉バカに説明してあげて!!」
夫人に茶のおかわりを入れていた小松は、ココの命令に笑顔で頷いた。
「はい。・・・・トリコさん。ココ先生は、大変見目麗しくいらっしゃいます。
そのためか、離婚調停を請け負うと、相手方や依頼人の女性がココ先生の虜になってしまうんです。」「見てくれ良くても中身最悪じゃねーかコイツ。」
ココのほうへ親指を向けながら、トリコは小松を見下ろす。
指さされたココは、カチンと来たのか、ガタン、と椅子から立ち上がって罵声を浴びせた。「指さすなトリコ! 失礼だろう!!」
激高している主人を背に、小松はトリコに向かって丁寧に説明を続ける。
「その・・・何といいますか、ココ先生は依頼人の利益のために一生懸命になられるのですが、
それを、女性方は、自分のためだと勘違いなさって・・・。それはもう、大変な修羅場になるのです。」何だそりゃ、とトリコがげんなりとした目を向けるが、ココは、しれっと毒を言い放つ。
「ボクはもう女性はこりごりなんだ。よって離婚訴訟など汚物だ!!」
どうやら一切合財引き受けるつもりはないらしい。
トリコが夫人を見下ろしながら、どうしたものか・・・と頭を掻いていると、
静かながらもはっきりと意思のある声が、ココのほうへ向けられた。「しかし、僭越ながら、ココ先生。トリコさんの勉強を見てあげるということで・・・サポートなさっては?」
「小松くん・・・・・?」
愛らしい料理人が意図することを測り兼ねてココが小首を傾げ、小松を見つめる。
小松の零れ落ちそうなほど大きな瞳は、まっすぐにココを見つめ返し、その頬には慈愛の色を含ませている。「不慣れなトリコさんを懸命に指導するココ先生・・・。ああ、とっても素敵です。」
「小松くんは、ボクの勇士をそんなに見たいのかい?」
薄笑いのココの問いに、小松は満面の笑みで頷く。
フィルターがかかっているココの瞳には、もはや小松は天の使いにしか見えなかった。「はい、とっても。」
「――うん、可愛い。これはもうしょうがない。小松くんのために引き受けよう。」
自身のもとへ引き寄せた愛らしい料理人に頬ずりする飼い主を、トリコは引きつった顔で突っ込んだ。
「いや、依頼人のためだろ・・・。」
------------------------------------------------こんな話を妄想中です。え?これ以上続きません♪
元カノ・・もとい、元彼の小松くんを色んな意味で忘れられない大竹シェフが夫人との離婚を求めるお話。
小松は、以前、五つ星ホテルのレストランで働いていたが、
同期の大竹と、”スープのレシピ&痴情のもつれ事件”を引き起こし
ホテルの顧問弁護士だったココが仲裁し、小松を引き取った経緯があった。
ちなみにセンチュリースープは世間的に大竹が考案したことになっているが、
実際に考案したのは小松であり、スープの最後の食材を発見したのも小松である。
レシピは存在しない=小松の頭の中にしかないため、ホテル側は大竹を使い、何とか小松を引き戻そうと画策する。
それを鮮やかに回避させるココ先生・・・みたいな。ココさんは毒舌毒体質な弁護士。金と小松君がすべての人生。裁判で一度も負けたことがない。
基本的には人嫌い、特に女性が苦手なド偏屈でトリコの面倒を見つつ、辛辣な毒を吐く。
弱点は小松くん。小松くんがいないと何もできない。小松くんは謎の料理人。ココさんの事務所に住み込みで働いている。
ココさんの身の回りの世話(夜含む)をそつなく献身的にこなす。中でも料理の腕前は一級品。
過去に、世紀のスープを巡るホテルの権力抗争に巻き込まれ、ココさんの元で身を隠しているらしい。
柔らかい笑みで奥底を読ませない、なかなかの策士。トリコさんは脳みそ筋肉バカ(ひどい)な弁護士。
依頼人の利益より社会正義を夢見る新米さん。困った人を放っておけない優しい性格。
金にならない案件を持ってきたり、勝手に仕事を引き受けて負けたりする度ココさんにしばかれるが、
小松くんの料理で復活するタフな奴。ゼブラさんはココさんの草の者。
報酬次第で割と何でもやる。(小松くんの料理に餌付けされてる)
過去に暴力事件を起こしたことがあり、ココさんの計らいで無罪になった頃からの縁。
一応恩義を感じているため、ココに従う。が、基本的には自由に振る舞う。サニーさんはココさんの同学年でありライバル弁護士でよく法廷で争う。
が、一度も勝てたことはない。
ちなみに最初に負けたのは、大学時代の女装コンテスト。それ以来一方的にライバル視。
妹のリンちゃんは秘書だが、あまり役には立っていない上に、トリコへ情報を漏えいしてしまうので頭を抱えている。
「こまっちゃん・・・、戻ってきてくれよ。こまっちゃんがいないと、オレ(のホテル)は駄目なんだ。」
「た、竹ちゃん・・・。」
「くそっ、何なんだあの妙な雰囲気は!! 徹底的に叩くぞ、トリコ!! 小松くんをあんな野心家に渡してたまるか!!」
「いつになくやる気だな、ココ・・・・・。」みたいな感じ・・・・です。
誰か続きor新作で書いてください〜〜〜(笑)
ゼブラさん編。
見かけは怖いけどすっごく良い人なんだよ、とココ先生がマシンガントークで教えてくださいます。
「おっすー・・・・・って、うお!!?」
トリコは、自分の肉体に自信がある。
2メートルを超す身長、がっちりとついた筋肉。
大抵の輩は、トリコに絡むことさえ許されない。
この隆々に盛られた鋼の筋肉は、週に六日通うトレーニングジムの所長お墨付きだ。そのため、自分より大きな人物に出会ったことがない。
が、つこうとした食卓をすでに陣取り、所狭しと詰められたごちそうたちを次々に空っぽにしていく男は
トリコの持つ、安っぽいプライドをズタズタにこき下ろしてくれた。
「でけえ! っていうか、誰!?」「ああ、トリコさん。おはようございます。ちょっと立て込んでますので、奥のテラスへどうぞ。」
エプロン姿の小松が、やや額に汗をにじませながら、せっせとダイニングとキッチンを往復する。
右手に大皿、左手にも大皿を抱えながらも、笑顔を絶やさないのはさすがプロだ。
「ああ? なんだあ、お前は・・・・? ココの新しいペットか?」「はぁー!? ペットじゃねえよ! オレは雇われてんの! お前こそ誰だよ!」
食事中に水を差されたためか、件の大男は酷く不機嫌そうな声音でトリコを振り返る。
ギロリ、と睨み付けるその眼は、明らかに堅気ではなかった。
初夏の時期に近づいたとはいえ、まだ朝は冷える季節柄だというのに薄いタンクトップ一枚。
やや褐色気味の肌は、トリコを上回る筋肉を誇る。
正直なところ、トリコは「初めて絡まれたかもしれない」と感動さえ覚えた。「ゼブラさん、こっち下げますね。まだいけそうですか?」
「いけるも何も、全然足りねえよ、小僧ォ・・・」
「ええっ、わ、わかりました。すぐに作りますからね!」
空になったお皿を重ねた小松は、バタバタとキッチンへ消えていく。
それを面白くなさそうに見送ったトリコは、小松の進言に従い、テラスへと向かった。
さんさんと太陽の光が降り注ぐとっておきのテラスには、すでに先客がおり。
赤ワイン・・もとい、果汁百パーセント無農薬にこだわった濃厚グレープジュースを傾ける麗しい飼い主の姿があった。「よう、ココ。おはよう。」
「・・・・首だ。」
「ってぇ、だから何でだよ!!」
「単にボクの機嫌が優れないからだ。朝から筋肉は見飽きた。もうおなかいっぱいだ。よってクビだ。」
「不当解雇には断固として戦うぜ!!」
ファイティングポーズをとるトリコを、ココは冷めた目でちらりと見上げると、
グラスを持っていない方の手で、しっしと払って見せた。「ああ、暑苦しい。筋肉隆々で暑苦しい。まだ夏が始まっていないのにお前を見ているだけで暑苦しい。」
三段活用ばりに罵倒され、あまり気が長くないトリコが怒りの咆哮をあげようとしたとき、
食事がやっと終わったのか、食材が尽きたのか。
件の大男が、木目を引きつる音を連れて、テラスへと顔を出した。
「相変わらず完璧な仕事ぶりだな、ゼブラ。これでこの件はボクが勝ったも同然。」ココは、テラスのテーブルに広げられた音声データのファイルやら隠し撮りと思われる男女の写真を見下ろし、悪魔の笑みを浮かべる。
どうやら先日引き受けた、企業訴訟に絡んだスキャンダル写真らしい。
あの手この手で、相手側の弱みを握り、徹底的に叩き潰すさまは、やはりココが真正のドSゆえか。
そんなことを思いながら、トリコもゼブラの仕事ぶりを見やる。「ふん、当然だろう。このゼブラ様だぜ? こんなの朝飯前だ。」
「ああ。トリコを上回る筋肉隆々の脳みそ脳筋馬鹿かと思いきや、
その数キロ先の会話までばっちり聞こえる病的な地獄耳は、
まさにお前が偵察するために生まれてきたかのような素晴らしい能力だ。
その禍々しい外見の反面、趣味がテディベア作りというハンクラーで、特技の歌では町内大会のカラオケ大会で優勝する始末。
たしか大手のレコード会社からスカウトされていたな。そのままデビューしたら面白かったのに断りやがって。
意外に弱いものや可愛いものに優しく、大荷物を抱えたおばあさんを駅まで連れて行ったり、
遠足ではぐれた幼稚園児を無事に園まで送り届けた挙句、モンペに人さらいの汚名を着せられ通報される哀れなツンデレのゼブラ様だからな。
あのときお前を助けた子供の「おじちゃんはボクを助けてくれたんだもん」という証言がなければ、お前はショタコンのレッテルさえ張られていただろう。
まさかトリコや小松くんと同じ25歳でまだおじちゃんじゃないです、なんて口が裂けても、いや、裂けてるが、言えなかったお前の悔しい気持ちごと、ボクが代弁してやったから
その節は大変お世話になっただろうボクのため、そしてボクと小松くんの愛の生活を守る為、これからもよろしく頼むよ、ゼブラ。
ああ、今のはすべて褒め言葉なので、ボクに吼え玉などお見舞しないように。」「・・・・・・・・ココ、てめぇ・・・!」
「はい、ゼブラさん。デザートですよ。ホエール鯨のミルクが手に入ったので、クリームたっぷりのシューを作りました!」
タイミング良く、召し上がってください、と差し出されれば、小松(の料理の腕)に惚れ込んでいるゼブラが拒めるはずもなく。
つい手を伸ばしたそれを口に含めば、裂けた頬の部分からクリームがだらりと垂れた。
それを見かねた小松が、いそいそとゼブラの頬を拭ってやる。「もう、ゼブラさん。あとで頬縫い直しますから、逃げちゃダメですよ?」
「いいんだよこれで。それよりもっと寄越せ、小僧ォ・・・・!」
「駄目です。あとはココ先生とトリコさんの分ですから。腹八分目医者いらず、ですよ。ゼブラさん!」
まるで手のかかる子供におやつを食べさせる優しいお母さんだ。
それにしてはでかい上に不良息子だな、なんて。
そんなことを思ってしまったトリコが噴き出してしまうのと同時に、暗黒の毒オーラを纏った飼い主が、徐に立ち上がる。「小松くん! ゼブラにばっか構わないで、ボクの相手をしてくれ!!
朝からキミがゼブラの世話を焼く度、寂しさと苦しさでもう色々発狂しそうだ!!」「わわ、ごめんなさい・・・。もちろん、ココ先生が一番格好いいし、素敵ですし、大好きですよ。」
ぽろぽろと涙を零し、構ってくれと地団太を踏むこの姿を、世の女性が見たら何と言うだろう。
小松は慌ててココのもとへ向かうと、膝立ちになってしまったココを抱き締めて、よしよしと頭を撫でる。「もっと、もっと言ってくれ小松くん! 何なら罵倒してくれたって構わない。昨夜みたいに、この淫乱毒虫野郎なんて、」
「もう、ココ先生ってば・・・しょうがないですね。」
よしよし、と大人の頭を撫でる小松は、この事務所の中で、もっとも影響力があるのだろう。
何せあの毒舌弁護士と名高いココが、まるで赤子のようだ。
ごろごろにゃんだなんて聞きたくもない甘え声が、ゼブラとトリコの背筋を震え上がらせる。
ここにいてはいけない。
本能がそう告げていた。
「オレぁ帰るわ。お前も、気色の悪い思いをしたくねえんなら、今日は帰ったほうが良いぞ。」「・・・・・今日は、たぶん、事務所休みの日だったんだ。うん、きっとそうだ。ということで、帰るわ。」
げんなりとした両方が、苦笑交じりに手を振る小松に背を向ける。
と、小松の腕の中で子猫のように甘えまくっていたココが、だらけた表情そのままに、辛辣な毒をお見舞いしてくれた。「お前たち、そのまま帰りに府中の競馬場へ行ってこい。
そして白い珍獣と名高いあのカバのような白馬が飼っているネズミに罵倒されながらマスタングスペシャルで思い切り後頭部を蹴られてくると良い。
少しはましになるだろう。」
ふん、と誇らしげに小松の胸元でにやついた男に、ゼブラとトリコは中指をおっ立てて、声を揃えた。
「「うるせえよ、変態弁護士!!」」
終わり。