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【選択の現場】
(3)「ヒト」が回ってこない介護現場 問われる政治力 税と社会保障
冬の日は短い。埼玉県に住む50代の池田守さん=仮名=は午後4時すぎ、勤務先の介護施設に向かうため夕暮れの中、自転車をこぎ出した。自宅に戻るのは翌朝10時をまわる。踏み込むペダルは、そう軽くない。
4年前に建築関係の仕事から転職した。家庭の事情で日中は仕事に出られず、勤務は夜勤のみ。月収は18万円ほどで、この4年間ほとんど上がっていない。妻のパート収入と合わせ、なんとか4人の子供を養う。
「介護は総合的な人間力が試される。入所者と心のつながりを感じるとうれしくなる」
仕事にやりがいはある。ただ、夜間は入所者50人に対し、職員は2人。仮眠すらままならない日もある。
「何年たっても給料は上がらない。職員の入れ替わりは激しく、ベテランと呼べる人は増えない」。池田さんはため息をつく。
昭和22~24年に生まれた約700万人の「団塊の世代」が全員75歳以上になる平成37(2025)年。5人に1人が後期高齢者となるこの年、必要な介護人材は237万~249万人と試算されており、24年度の149万人から毎年6万8千~7万7千人を増やす必要がある。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」で雇用環境は改善した。しかし、介護業界まで「ヒト」は回ってこない。都内などで介護付き有料老人ホームを運営する会社の担当者(44)は嘆く。
「1人当たり20万円の採用予算を組んだが、足りない。お金をかけても採用が難しいのが現状だ」