ムンバイのメンタルヘルス施設で床にマットレスを敷いて寝る女性患者 Photo courtesy Shantha Rau Barriga/Human Rights Watch

 インドでは精神障害を持つ女性がメンタルヘルス施設で組織的な虐待を受けている---人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、最新リポートでそう訴えている。

 HRWが公表した106ページにわたるリポート「Treated Worse Than Animals(動物以下の扱い)」によると、障害者、特に女性の障害者は「無能で弱い」とされ、「人生で意義のある決断を下す能力を完全に」欠いていると見なされている。一部は本人の意思にかかわらず家族によって精神病院などの施設に入れられ、拘留や不衛生な環境、無視、粗雑な医療処置、暴力などの虐待を受けているという。

 多くの公的医療制度と同様に、インドのメンタルヘルスは資金が不足している。世界保健機関(WHO)の「メンタルヘルス・アトラス2011」によると、政府は保健予算の0.06%しかメンタルヘルスに割り当てていない。対照的に、米国では国内総生産(GDP)の6.2%、英国では10.82%が充当され、バングラデシュでさえ0.44%が振り向けられている。

 インド保健省によると、同国では人口の6-7%が精神障害にかかっており、医療専門家の数が不足している。WHOの統計ではインドに3500人の精神科医がいるが、人口に対する比率は34万3000人に1人。1万2837人に1人の米国とは大きな格差がある。

 西部マハラシュトラ州ムンバイには公立のメンタルヘルス施設が4カ所あるが、そのうちの1つでは患者数1500人ほどに対して精神科医が6人しかいない。この病院の患者受入能力は1850人だ。

 ベッドを置く十分なスペースが確保されていないため、患者の一部は床にマットレスを敷いて寝ている。この病院の精神科医の1人、ルチャ・ジョシ氏はウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに対し、スタッフの中には患者を見下す態度を取る人もいると語った。

 ジョシ氏は「患者が口頭で虐待されているとは言わないが、不適切な言い方をされている」とし、「スタッフが『ここにいるのは全員、精神的な知能遅れだ』などと言うのを患者は聞かされている」と話した。

 同氏によると、病院に入れられた女性の大部分は読み書きができず、家族に無視されて貧しい農村からやってきた患者だという。また、「最も困難なのは社会に患者の復帰を受け入れさせることだ」と述べた。

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