消費税の再増税が17年4月に先送りされたことを受けて、自民、公明の両党が、改めて軽減税率の導入を目指すと表明した。民主党も軽減税率を否定していない。

 3党が決めた「社会保障と税の一体改革」では、国債発行に頼る社会保障費を今の世代でまかなっていくため、税収が景気に左右されにくく、すべての世代が負担する消費税を2段階で10%へ増税することになった。

 消費税には、所得の少ない人ほど負担が重くなる「逆進性」がある。低所得者への配慮が不可欠だ。軽減税率導入の狙いはそこにある。

 ただ、軽減税率の恩恵は所得の多い人も受ける。導入すれば税収が一体改革での予定額に届かず、社会保障を支える財源に穴があくことになる。

 軽減税率の長所と短所、効果と費用について、衆院選を通じて考えたい。

 例えば食料品に軽減税率を適用すれば、消費者は支払いのたびにメリットを感じられ、わかりやすい。欧州各国は、消費税にあたる付加価値税の基本税率が20%程度と高い一方、軽減税率を採用している。

 しかし、適用する品目・サービスの線引きが難しい。欧州各国も悩まされてきた難題だ。

 効果をあげようと対象を広げるほどに税収は減っていく。外食を含む飲食料品に適用しただけで、消費税1%あたりの税収2兆7千億円のうち6600億円、約4分の1がなくなる。

 わが国の財政難は深刻だ。消費税率を10%にしても巨額の財政赤字が残り、高齢化で社会保障費は膨らみ続ける。一定の経済成長を見込んでも、税率は10%を超えて上げていかざるをえないだろう。軽減税率はその時の検討課題とし、それまでは低所得者に的を絞った給付などで対応するべきではないか。

 政府は8%への消費増税に合わせ、低所得者への一時的な対策として臨時福祉給付金を用意した。住民税が非課税の世帯約2400万人に1人あたり1万円、一部の人への上乗せ措置を含めて総額は3400億円だ。

 食料品への平均的な支出額に基づき、再増税までの1年半を前提に負担増を計算した。再増税の延期で追加支給される見通しだが、所得の少ない人の生活は物価高で苦しく、手厚くするべきだとの意見もある。仮に総額が膨らんだとしても、低所得者層に的が絞られており、政策の狙いは明確に保たれる。

 目的を見極め、できるだけ少ない予算で効果をあげる。これが政策の基本ではないか。