「前日または二三日前にキャンセルをかけてくる団体が最近多くて、ほとほと弱っています」
そう嘆く飲食店が広がっています。
金沢駅前のある飲食店のオーナーは、稼ぎ時にこの直前キャンセルをいくつか喰らって、怒り心頭となり、ご自分でその理由を調べ上げたそうです。
「最近の幹事さんは、一斉に複数の店の予約プラットフォームに入力して、宴会の場所を確実に確保します。そのあと、参加メンバーに日時などの調整をかけて、絞り込み、一つの飲食店に決めて、残りの店にキャンセルをかけるのです」
つまり、団体宴会は一つしかないのに、予約を複数するのが当たり前、という予約スタイルがしだいに拡大し始めたようです。
キャンセル連絡があるのはまだいいい方のようで、例えば、美容院では予約が入っている客を待っていても来ないドタキャン客が増えているそうです。
それらのキャンセルが売上減に直結することは想像にかたくありません。
その団体や個人のために、空間・設備とスタッフをあてがっていたのにロスになりましたので、利益減と言ってもよいでしょう。
消費者のこのような予約スタイルは、明らかに、ネットの予約フォームが普及した副産物、言い換えれば、弊害でしょう。
ネットビジネスの本質的特徴の一つは、匿名性です。
誰であるのかを知られることなく、確実に商品を入手したり、消費できることが、ネットビジネスの隆盛に直結しました。
それは電子商取引の最大分野が株の売買であることに象徴されています。
ネットの予約フォームがこの匿名性をいたずらに増幅させ、客である消費者たちの身勝手さを増長させた結果が、直前キャンセル・当日キャンセルの温床になっているということです。
便利なように見えるネットのシステムは、必ず大きな落とし穴を腹蔵しています。
白山市のある飲食店のオーナーは、数年前からこのスタイルを予感し、ネットの予約フォームは廃止。
予約はすべて電話のみとし、しかも、オーナーみずからが受け答えするようにしたそうです。
「山田さん、電話で生声を聞いていると、複数の店に予約入れてるのが分かるんやわ。これ、見て。直前キャンセルをしてきた団体や会社のリストやわ。二度と受けん」と。
企業防衛の一つではありますが、アナログにすべて戻した実例です。
先月私はブログで、「消費者のしたたかさで、店つぶされますよ」と警告しましたが、売り手のしたたさかも開始されているようです。
ところで、飲食店の皆さん。
こんなもの(↓)にひっかかってはいないでしょうね。
本日の楽曲は、ノルウェイのデュオ、ニコ&ヴィンズ「アム・アイ・ロング」(2103年)です。
いまだにビルボードトップ50位にランクインされていて、根強い人気、なかなかいい曲です。
「おれは間違っているのか」
いいえ、間違ってません。
売り手の対応が遅れているだけです。