少子高齢化と2007年問題(3)〜団塊世代の考え方
前々回(少子化問題)、前回(高齢化問題)に続き、今回は「2007年問題」を取り上げる。
「2007年問題」を早くから認識していたのはIT業界で、それが徐々に製造業でも問題視されるようになり、現在に至っている。IT産業の急成長を支えてきた古いシステムの解るSEがだんだんといなくなっていること、その時期が2007年の団塊世代の大量一斉退職と同時に増大するというのがそもそもの指摘であった。
2007年問題は、「団塊の世代が一斉にいなくなる」→「活力を維持するためには困った問題だ」→「企業(日本経済)は大変だ」という三段論法で数年前から散々議論されているが、実際の団塊世代(当事者)にとっては、そう簡単に消されては困るというのが本音だろう。60歳を越えても生活することに変わりはない。
そして、有力人材市場を多く抱える東京都ならびにその近郊(首都圏)と、おいしい空気や水と人間味あふれる暮らしを売りに大量移住して欲しいと考える地方自治体の間で、団塊世代の付加価値への皮算用(マーケティングによる顧客獲得)が始まっている。
多くの調査報告、提言では、団塊世代からの技術伝承が日本経済の継続的活性化には不可欠としているが、団塊世代にとって、スキルの公開と受け渡しは自らの居場所がなくなることを意味し、ノウハウやレシピをそう簡単に手放さないことに現役世代はそろそろ気がつくべきであるというのが、本稿での筆者の趣旨である。世代や性別に左右されない「新たなビジネスモデル」を捻り出す時期が到来している。
なお、いつものように、リスクマネジメントに係る突発的な事象、過去に掲載したテーマのその後については、適時「e戦略の視点2」にてトレースしている。関心のある向きは、ジャンル別の「現代リスク」などを参照のこと。
●2007年問題の構造化と課題
2007年問題は、リスク構造的には「少子高齢化(2)〜高齢化問題」と同じものを引きずっている。ただし、期日が目前に迫った話であり、該当者の比率が高いことから、歪(ひずみ)がより一層大きいと考えられている。前提として、今の雇用制度が維持され、団塊の世代が2007年〜2009年に順次退職していくと、プレ団塊世代と、ポスト団塊世代を加えた「日本の高度成長期を担ってきた人材」が「一瞬にしていなくなる」ことから、「さぁ大変だ、困ったものだ」、「でもビジネスチャンスにもなりそうだ」というのが、多くの調査報告での指摘である。本当にそうなのだろうか。問題の構造化を試み、事実を積み上げるなかで、リスクマネジメントの観点から、皆さんとともに議論を深めたい。
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