衆院選:投票所 出前します…高齢者「遠くて行けない」に
毎日新聞 2014年12月06日 15時00分
期日前投票所、出張します−−。14日投開票の衆院選で、山間地の集会所などに臨時の期日前投票所を開設する動きが広がっている。数年前、経費削減で投票所を減らす自治体が相次いだが、交通手段のない高齢者から「遠くて投票に行けない」などの苦情が出ていた。地方の過疎・高齢化が進む中、投票率を少しでも上げようと知恵を絞っている。
奈良県境に近い大阪府河南(かなん)町の青崩(あおげ)地区。山あいの狭い土地に段々畑が広がる。住民は87人で、半数が65歳以上。20歳未満はわずか2人だ。「交通の便が悪く、働く場所もない。若者はみんな出て行って、戻ってこない」。区長の徳若勝次さん(73)はため息をつく。
この地区では以前、集会所が投票所だったが、町は2010年に投票所を16カ所から5カ所に削減。この集会所も対象になった。
住民は選挙のたび、車で15分かかる小学校まで投票に行く必要が生じ、地区での投票率は12年の衆院選で約58%と09年より約20ポイントも落ちた。危機感を抱いた町は、今月8日、地区の集会所に1日だけの期日前投票所を設ける。午後1〜4時の3時間だけだが、効果があれば他の地域でも検討する。
近くで1人暮らしをしている女性(81)は「車がなく、これまでは町内循環バスで期日前投票に行くしかなかった。近くで投票できるのでうれしい」と期待する。徳若さんは「地方に活気が戻り、高齢者も若者も安心して暮らせる社会にしてほしい」と願って1票を投じるつもりだ。
他の自治体でも、同様の動きが広がっている。長野県中野市は今月7日、衆院選では初めて、山間地の6カ所に臨時の期日前投票所を設ける。12年に投票所を3割減らし、従来の場所から5キロ以上遠くなった地域もあり、高齢者から「近くで投票したい」と要望があったという。開設は各2時間だけだが、担当者は「投票率アップにつなげたい」と話す。
松江市は前回選に続き、山間地の11カ所で臨時開設する。投票日の14日は、投票所を巡回する無料バスを走らせる。
一方、富山県魚津市は昨年の参院選で初めて、市内のショッピングセンターに臨時の期日前投票所を開設したが、今回は「急な解散で間に合わなかった」という。投票日に無料バスで投票者を送迎する。【新宮達、藤田剛】