■“通告”にためらい
「非常に痛ましい事件が起こった。もう少し踏み込んだ対応が検討されるべきだった」
両親の逮捕を受け、記者会見を開いた茨木保健所の高山佳洋所長は肩を落とした。事件を「重く受け止める」として、対応の問題点などを検証する方針を示した。
保健所によると、長女の虐待を疑う情報が寄せられたのは前述の昨年10月の一度のみ。市役所や府警も虐待情報を把握できていなかった。
長女がベランダに閉め出される姿を目撃した近隣住民は取材に対し、「気にはなっていたが、通報までは考えなかった」と振り返り、「うちにも子供がいる。通報が知られて子供に危害を加えられたらと考えるとこわかった」とも打ち明けた。
子供の虐待問題に詳しい関西学院大の才村純教授(児童福祉論)は「複数の目撃情報がありながら、通告(情報提供)が1回にとどまったことが最大の問題」と指摘。問題の解消には、児童相談所側の啓発・周知に対する努力が欠かせないという。
「『通告』という言葉がネガティブな印象を持たれるなら『相談』に置き換えるなど、制度を分かりやすく啓発する。また、通告したことで逆恨みを買うことを恐れる人もいるが、児童虐待防止法で個人情報は守られると規定されており、制度の仕組みもしっかり説明していくべきだ」