【動画】福島県飯舘村で再生へ向けた米作りが続けられている=井手さゆり撮影
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 東日本大震災の福島第一原発事故による放射能汚染の影響で、全村避難が続く福島県飯舘村。村民と研究者らのボランティアが、独自に除染して2012年から米作りを続けてきた。この秋収穫した米は公的機関の放射能検査を経て、初めて試食することができた。

 11月8日夜。同県伊達市の宿泊施設に、認定NPO法人「ふくしま再生の会」(田尾陽一理事長)のメンバーら15人が集まった。15合の米が炊きあがると歓声が上がり、3年越しの試食にお代わりが相次いだ。

 同村佐須地区で稲作や酪農をしていた菅野宗夫さん(63)は震災直後、東京在住の田尾さんらと出会い、「村を孫の世代に引き継ぎたい」と活動を始めた。田んぼは除染のため、表土を5センチほど削る。削った土は、田んぼの一角に深さ約1・5メートルの穴を掘って埋め、掘り出した汚染されていない土を上からかぶせる。田んぼの土や収穫した米などは、東京大学農学部の協力を得て放射能値を継続して測っている。

 米の試食までこぎつけたが、菅野さんは「安全は証明されたけど、安心にはつながっていない」と話す。「どん底からでも、光を探していく」。来年も、試行錯誤の歩みは止めない。(写真・文 井手さゆり)