<衆院選・政治に望む>新制度、譲れぬ財源確保
◎(4)子育て/保育拡充を訴えてきた全国保育協議会副会長 佐藤秀樹さん(青森市)
−待機児童解消などを目指す国の「子ども・子育て支援新制度」が来春始まる。国は消費税率を10%に引き上げ、増税分から毎年7000億円程度を財源に充てる予定だったが、安倍晋三首相が再増税を2017年4月に延期すると表明した。
<増税延期で影響>
「予定通り15年秋に再増税しても、増税分を満額新制度に充当できるのは17年度という話だった。それがまたさらに1年半遅れる。もともと7000億円でも足りないと訴えてきたのに、財源を確実に確保できるのか非常に不安だ」
「少子化が進む中で、子育ての環境を後退させてはいけない。この国で子どもが豊かに育つことを担保するため、ほかの団体とも連携し、政府に財源確保を求める意見書を提出する予定だ」
−園長として青森市の育児環境をどう見るか。
「保護者は小さい会社で働く人が多く、育児休暇を取得できる人が少ない。市内87カ所ある認可保育園(全て私立)は、ほぼ全ての園で生後43日目から受け入れ可能にしている。つまり、法律で保証される産後休暇8週を切り上げて働かないといけないお母さんが多いということ。子どもと向き合う時間が少ない」
「子どもは、保護者の雇用が不安定だと、年度途中で入退所を余儀なくされる。1年を通じた保育目標の下で安定した生活を送ることが大事なのに、それが全うされない。子どものためにも保護者の生活安定は必要だ」
「うちの保育園は4月に幼保連携型の認定こども園に移行する。新制度では保護者の就労の有無で、子どもの保育が必要かどうか認定区分するが、基本的にどの子にも『保育』が必要だと考えている。3歳未満の乳幼児がいる専業主婦家庭や障害のある子を育てる家庭は育児不安を抱えていることが多い。人は社会の中でこそ育つ。『おいでよ、こども園』と積極的に発信し、地域にいるどんな子も受け止め、これまで以上に支えていきたい」
<待遇改善も急務>
−厚労省の調査(12年)では、保育士の平均月額給与は全業種より10万円以上低く、離職率が高い。 「保育士も生活者の一人。低賃金やパートなどの非正規雇用を改善し、わが子を育てる環境を守るなど、暮らしを保障することは必要不可欠だ。待遇改善の財源がないことにはそれもできない」
「一方で、保育を担う喜びは金銭的なものだけではない。保育者自身が、保育の志を持つ必要があるし、次世代の保育者を育て、定着させなければならない。雇用する側の倫理も問われる」
−今後の課題は。
「新制度では、従来の保育園、幼稚園のほかに認定こども園、定員19人以下の小規模保育所など、認可施設・事業が7パターンに増える。子どもは自分で選ぶことはできない。施設・事業によって差が生じないように、それぞれの違いを是正し、共通の保育目標を作っていかなければならない」(聞き手は生活文化部・越中谷郁子)
[認定こども園]幼稚園と保育園の機能を併せ持つ。保育を必要としない教育認定(1号)を受けた3歳以上児と、保育を必要とする保育認定(2号は3歳以上児、3号は3歳未満児)を受けた子ども両方を預かる。3歳以上児は保護者の就労に関係なく通うことができる。地域の子育て支援の拠点にもなる。
2014年12月06日土曜日