December 5, 2014
対象に遠くから電気ショックを与えて一時的に動きを止めるテーザー銃(スタンガンの一種)という武器があるが、デンキウナギはこれと同じ能力を備えており、獲物を仕留めるのに利用していることが最新の研究で明らかになった。
デンキウナギ(学名Electrophorus electricus)が遠くから発するパルスは速く強力で、狙った獲物の筋肉を収縮させ、まひさせてしまう。そうなればデンキウナギは獲物の位置まで泳いで行き、簡単に一飲みにできる。
今回の発見は、動物が遠くにいる獲物を電気で操れることを研究者が確認した初めての例となる。
米ヴァンダービルト大学の生物学者ケネス・カターニア(Kenneth Catania)氏がこのことに気付いたのは、飼育しているデンキウナギをハイスピードカメラで撮影していたときだ。
「魚は逃げ回るのが実に巧みだ。もし・・・
デンキウナギ(学名Electrophorus electricus)が遠くから発するパルスは速く強力で、狙った獲物の筋肉を収縮させ、まひさせてしまう。そうなればデンキウナギは獲物の位置まで泳いで行き、簡単に一飲みにできる。
今回の発見は、動物が遠くにいる獲物を電気で操れることを研究者が確認した初めての例となる。
米ヴァンダービルト大学の生物学者ケネス・カターニア(Kenneth Catania)氏がこのことに気付いたのは、飼育しているデンキウナギをハイスピードカメラで撮影していたときだ。
「魚は逃げ回るのが実に巧みだ。もしデンキウナギにこの能力がなかったら、餌を捕るのは至難の業だろう」とカターニア氏は語る。「仕組みはテーザー銃と同じだ」。
ルイジアナ大学ラファイエット校の魚類学者で今回の研究には関わっていないジェームズ・アルバート(James Albert)氏は、「非常に素晴らしい成果だ」と評価している。
◆電気を使った早業
デンキウナギは南米のアマゾン川、オリノコ川原産だ。ウナギ目ではなくデンキウナギ目に分類され、名前とは裏腹にウナギの仲間ではない。
デンキウナギの腹部には3つの器官が並んでおり、電気パルスの送受信に使われている。
3つの器官のうち2つが低電圧のパルスを発し、第六感の役割を果たしていることは研究者の間ですでに知られていた。コウモリやイルカがエコーロケーション(反響定位)という一種の生まれ持ったソナーを使うのと同様、デンキウナギは弱い電気パルスを使って周囲の状況を「見て」いる。
カターニア氏によれば、3つ目の器官は高電圧パルスを発生させ、3ミリ秒で獲物を動けなくするのに使われているという。
「あっという間の早業だ。なぜこんなことが可能なのか突き止めたかった」とカターニア氏は振り返った。
カターニア氏はデンキウナギの捕食の方法に関する過去の研究論文を調べたが、何の情報も見つからなかった。そこで、この現象を自分で調べてみることにしたのだ。
◆触れずに攻撃
カターニア氏はデンキウナギと魚を同じ水槽に入れ、魚の筋収縮の程度を測定。魚は通常通り筋線維が収縮できる状態で、脊髄を切断した場合、神経系を毒物でまひさせた場合と、パターンを変えて実験を重ねた。
デンキウナギが高周波の電気パルスを発すると、魚の筋肉が強く収縮し、体は事実上まひしてしまう。カターニア氏の観察では、この過程でデンキウナギは獲物に物理的に触れていなかった。
だが獲物の動きを止める以前に、デンキウナギはまず獲物を見つける必要がある。カターニア氏はさらに実験を行い、「ダブレット」として知られる2種類の低電圧パルスによって、近くにいる魚に無意識の筋けいれんが起こることが分かった。
デンキウナギはこのけいれんで生まれた水の動きを感じ取り、獲物の位置を探知できるのだ。
◆神経系をハイジャック
また、カターニア氏はさらに一歩を進め、デンキウナギが発する高電圧の電気パルスは、標的となる魚自身の神経系を伝っている電気パルスと一致することも明らかにした。
これにより、デンキウナギは獲物の神経系を「ハイジャック」していや応なしに位置を暴いたり、体をまひさせたりして、巧みに捕食できるのだ。
今回の研究成果は、「Science」誌に12月5日付で掲載された。
Photograph by Norbert Wu/Minden Pictures/Corbis