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過小評価は禁物、「長野県北部地震」の衝撃度

東洋経済オンライン 12月5日(金)16時30分配信

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過小評価は禁物、「長野県北部地震」の衝撃度

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過小評価は禁物、「長野県北部地震」の衝撃度
過小評価は禁物、「長野県北部地震」の衝撃度

11月下旬に発生した、長野県北部の地震は最大震度6弱と発表され、死者もゼロだったことから報道もやがて落ち着いた。しかし、揺れによる局地的な被害は激しく、「震度7はあった」と指摘するのは、活断層の専門家として現地を調査した名古屋大学減災連携研究センターの鈴木康弘教授だ。原発の安全性調査にもかかわる鈴木教授は、この地震の教訓を過小評価すべきでないと訴える(写真は2014年11月22日夜に発生した、長野県北部地震の被害状況/写真提供:鈴木康弘教授)。
■ 「震度7はあった」。過小評価すべきでない

【詳細画像または表】

  ――今回の断層はいつごろから知られていたのか。

  糸魚川-静岡構造線断層帯(糸静線)は1970年代には活断層だと広く認識され、その一部である今回の神城断層の存在も1980年代にはほぼわかっていた。糸静線は、長野県北部から松本市を経て山梨県甲府市と県南部にまで続く長大な断層。それが千年に一度は大きく活動する、活動度の高い断層と見られていた。

 阪神・淡路大震災翌年の1996年には、国の地震調査研究推進本部(地震本部)が、主要活断層の長期評価の第一弾として、糸静線に地震活動の危険性が迫っているとの評価結果を出していた。

 ――今回の地震の特徴は? 

 典型的な逆断層型の地震で、震源断層面が浅い位置にあり、地面まで到達した。それによって断層のずれ上がった側で、局地的に極めて大きな揺れが生じた。全壊した建物の9割が集中した白馬村の中でも、堀ノ内地区が建物の壊れ具合や、墓石の倒れ方が尋常ではなかった。

 震度観測点があり、6弱を観測した小谷村などと比べても明らかに被害がひどい。堀ノ内地区には観測点がなかったが、木造家屋の倒壊率が3割以上という震度7のレベルではあったはず。それは気象庁や研究者がもっと強調するべきだ。そうでないと、今回の地震のメカニズムと被害との関係がぼやけてしまう。

 一方で、地震の規模が小さかったことも事実だ。糸静線で想定されている地震の規模は北部、中部、南部でそれぞれM(マグニチュード)7.5ぐらい、連動すればM8クラスに達する。しかし今回はM6.7と、一回り小さい。それをどう捉えるかが問題だ。

 ――大きな地震につながっていくのか。

 糸静線全体が動く前触れかどうかはまったく分からない。

 北部ではM7.5以上の地震が起きるとしてきた予測も、見直しが求められる。千年に一度という大きな地震が別に起こりうるのか、それとも今回くらいの地震が数百年に一度起こると考えるべきなのか。また、もしそれが糸静線全体に言えることであれば、全体の地震予測モデルや防災体制の見直しが迫られる。

■ 小規模な現象ほどわかりにくく、やっかいだ

 これまで大きな地震がまれに起きるという予測を立ててきたが、それで本当によかったのか。今回クラスの地震が起きるとは考えていなかったが、これくらいの地震なら、かなり頻繁に起きるという考えは成り立つ。その場合、地震発生確率は大きく跳ね上がる。

 活断層の位置は公表されてきたが、それが実際に動いたとき、震度7の揺れがどこで起きるかという情報は整備されてこなかった。言おうとすれば言えたはずなのに、防災上、最も重要な情報が出されていないという反省がある。

 東日本大震災は「百年に一度、M8の地震が起こる」と思われていたところで「千年に一度のM9の地震」が起きて大問題になった。今回はその逆で「千年に一度、M7.5が起きる」と思っていたところに「数百年に一度のM6.7」が起きた。小さくてよかった、では済まない。今回、死者が出なかったのは奇跡的で、これくらいの地震が高い頻度で起きるなら、決して無視はできない。小規模な現象ほど分かりにくく、やっかいだということもある。

 ――日本全体で地震や火山活動が活発になっているのではないかとの懸念がある。

 やはり東日本大震災後、状況が変わっているとの覚悟は必要だ。今回の地震や御嶽山の噴火を考えると、東日本から中部に活動が移り、西日本に広がりつつあることを示しているかもしれない。

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最終更新:12月5日(金)16時40分

東洋経済オンライン

 

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