日本、実は「おもてなし」不足 京都通の英国人社長苦言
増え続ける外国人観光客。東京五輪がある2020年に年間2千万人という国の目標に着々と近づいているように見えるが、米大手証券会社から日本の文化財保存修理の老舗社長に異例の転身をしたデービッド・アトキンソンさん(49)が、新著「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」(講談社+α新書)でこれに異論を唱えている。「日本の観光産業には『おもてなし』が足りない」。京都市内に町家を持ち、茶道の心得もある在住25年の元アナリストが日本、そして京都の観光にもの申す。
■客に合わせた対応必要
「お・も・て・な・し」。昨年9月のIOC(国際オリンピック委員会)総会で東京招致のプレゼンターとして登壇した滝川クリステルさんの演説がテレビや新聞で頻繁に取り上げられた。あたかも日本のもてなしが格別で、IOCの選考で高い評価を受けたかのような国内の騒ぎようにアトキンソンさんは違和感を覚えたという。
「外国人は、道を案内してくれるなど日本人個人の心遣いに感動するが、宿泊施設や飲食店のサービスについてはあまり評価していない」。むしろ、一方的で融通の利かない点が酷評される場合があるという。
その一例として自身の体験を挙げる。証券会社ゴールドマン・サックスに勤めていた頃、海外の大切な顧客に日本の名所を案内するため、箱根に1泊2日で出掛けた。宿泊先は名門老舗旅館。客人もアトキンソンさんも、日本の「おもてなし」を堪能できるに違いないと期待を膨らませていた。
予定より早く旅館に到着したため、長旅で疲れている客人を部屋で休ませたいと女将(おかみ)に頼むと、「チェックインは午後3時です」の一点張り。部屋は空いており、掃除も済んでいる。なのに入れてもらえない。仕方なく旅館併設のフレンチレストランで昼食を取ろうとすると、今度は「宿泊者専用」と言われ、チェックインが済んでいないため入店できなかったという。
「日本の高級旅館のサービスは一般的に、供給側の都合が優先されている。日本のおもてなしには客に合わせる概念が欠如している」
飲食店の閉店時間にも驚かされると話す。欧州の一般的な店では決まった閉店時間はなく、長居する顧客に追加注文を聞くなど遠回しに退出を促すことはあっても、日本のように直接的に閉店時刻を告げることはないそうだ。
「日本人は自分たちのおもてなしの在り方を正しく知ることから始めるべきです」
【 2014年12月05日 20時29分 】