検索サイトで自分の名前を検索すると、過去の逮捕記事が明らかになり、名誉を傷つけられたとして、京都市の40代男性がヤフー(東京)に、検索結果の表示差し止めや慰謝料など約1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は7日、請求を棄却した。
栂村明剛裁判長は「ヤフーは検索結果の表示によって、男性の名前が載っているサイトの存在や所在、記載内容の一部を自動的に示しているだけだ。自ら逮捕事実を示していない」と指摘。人格権が違法に侵害されたとは認められないとした。
男性は京都府迷惑行為防止条例違反(盗撮)の疑いで2012年12月に逮捕され、13年4月に執行猶予付き有罪判決が確定。現在も検索すると、逮捕記事を転載したサイトのアドレスや記事の一部が表示される。
男性は「軽微な犯罪で、執行猶予付き判決後も実名を公表する必要はない。就職もできない」と訴えたが、判決は「小型カメラで盗撮したという特殊な犯罪で、社会的関心は高い。逮捕から1年半程度しか経過しておらず、公共の利害に関する事実だ」と指摘。
検索結果の表示は公益を図る目的があるとして、仮に逮捕事実を示していると認められるにしても、名誉毀損やプライバシー侵害の不法行為は成立しないと判断した。
ヤフー広報室は「いかなる場合でも削除をしないことが正しいとは考えていないが、今回のケースでは、当社の主張が認められたと理解している」とコメント。原告代理人弁護士は「ネット社会の進展を考慮しない判決だ」と批判した。
ネット訴訟に詳しい弁護士によると、検索結果からの情報削除を求めた同様の訴訟はこれまでもあるが、認められた例はないとみられる。欧州ではグーグルへの請求が認められた判決がある。(共同)