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“自民党300議席超え”という幽霊

14年12月05日

No.1715

昨日の永田町徒然草「これはもうファッショじゃないかい。」が、いろいろなところで反響を呼んでいるようだ。タイトルが刺激的だったようだ。戦いになると、発言はどうしても激しくなる。それはやむを得ない。政治は言論を武器とする戦いなのであるから。しかし、私は理性的な人間でありたいと思って生きてきたつもりである。だから向う受けだけを狙っての発言は、極力慎んできた。その私が「これはもうファッショじゃないかい。」と言わなければならない程、事態は深刻なのである

今回の総選挙で、仮に自民党が単独で300議席を獲ったとしても私は驚かない。いかなる事実も、事実は現実として受け止めなければならないからである。その上で、どう戦うかを考えていくしかない。私が驚き怒っているのは、事実でないことを事実のように喧伝(けんでん)し、そうすることによりそのような事実を作ろうとしている行為なのだ。

私は40年近く衆議院選挙をはじめ多くの選挙戦を闘い、またいろいろな選挙を見てきた。平成8年初めて行われた小選挙区制の下の総選挙を、自民党総務局長として指揮をとり、それを体験した。選挙については、その辺の評論家よりも知っているつもりである。これまで私の勘や予測が大きく間違ったことはなかった。

ただ1回だけ私の勘と予測が大きくが外れたことがある。平成10年の参議院通常選挙であった。私の予測とは大きく違い、自民党は歴史的惨敗を喫した。橋本総理大臣と加藤紘一幹事長が責任をとって辞任した。その大きな理由は、投票日1週間前の日曜定番のテレビ番組で、橋下首相が不用意な発言をしたことであった。選挙応援で全国を飛び回っていて、不覚にも私はそのテレビを見ていなかった。

このような経験と勘から言って、今回の総選挙で自民党・公明党が大勝できる筈はないと私は思っていた。選挙というものを知っている何人かの識者とも話し合ったが、同じような考えであった。そのような者から見たら、“自民党単独で300議席超え”というのは、明らかにおかしいのである。それは“自民党単独で300議席超え”という結果を狙って、誰かが仕掛けたのであるからだ。それを実際にやっているのはマスコミであるが、他にも犯人はいる。

マスコミが第四権力と言われるようにすでに久しい。長い間政府与党の中にいて、マスコミが大きな影響力を持っていることは否定しないが、日々の政治を行う上で第四権力と言われる程、大きな存在と感じることは少なかった。しかし、第一の政治権力は、選挙を通じて作られるのだ。選挙に勝たなければ権力を握ることはできないのだ。だから政治権力は、第四権力と呼ばれるマスコミに非常に弱いのである。

お互いに牽制し合う権力が競合していることが、自由主義政治の理念である。ところが第一権力たる政治と第四権力たるマスコミが結託し、一体となったらどうだろうか。それはもう自由主義政治が理念としている権力構造ではない。わが国では、第一権力と第四権力が癒着・結合しているのだ。これは安倍首相になって生じた顕著な現象である。安倍首相ほどマスコミを取り込もうと熱心に動いた者はいないし、安倍内閣になってから恥も外聞もなくマスコミが政府と公然と癒着したことは、戦後わが国ではなかった。

ファッショと呼ばれることは、自由主義者にとって最大の侮辱であり、屈辱である。自由主義者でない安倍首相や自公“合体”政権の議員たちにとっては、ファショといわれてもあまり痛痒を感じないのかもしれない。しかし、私がファッシズムをチャンと知った上で、「こらはもうファッショじゃないかい。」と言ったことを理解してもらいたいので、ファシズムについて念のため貼り付けておく。ご参考に。ただ非常に長いので、選挙の後でいいとは思うが…(笑)。

歴史上問題となったファシズムは、ほとんど凶暴かつ残酷な独裁(その大部分は軍事独裁)であった。粗暴かつ残忍であったが、単純なので国民の非難の対象になり易かった。四つの権力の三つが一緒になっている現在の安倍・自公“合体”体制と戦うことは、難しいし知恵がいる。理論武装もチャンとしなければ、この戦いは勝てない。

いま安倍・自公“合体”体制が喧伝している“自民党300議席超え”は、彼らが作った世論調査上の“数字”に過ぎない。爆弾でも弾丸でもない。マスコミが鳴り物入りで喧伝している“自民党300議席超え”は、単なる幽霊に過ぎないのだ。ところがいろいろな論調を見ていると、この幽霊がけっこう効いている。安倍・自公“合体”体制と闘おうとしている闘士・戦士さえ怯えていることを、私はいちばん危惧している。

闘士・戦士諸君。まずこの幽霊の正体に気付くことである。この幽霊が吐き出す毒ガスを吸わないことである。そしてこの毒ガスを恐れている国民に、毒ガスの正体を知らせることである。マスコミはいまや敵の手に渡っているが、私たちにも“武器”がある。生身の体と肉声である。またSNSとかいう新兵器もあるではないか。こういう時に使わなければ、SNSなどタダのゲーム機ということになる。この永田町徒然草が闘士・戦士諸君の武器の一素材となれば、これに優る喜びはない。

今日はこのくらいにしておこう。それでは、また。

  • 14年12月05日 04時53分PM 掲載
  • 分類: 2.国内政治

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