大野晴香
2014年12月3日16時18分
誕生日には携帯型ゲーム機を買ってくれた優しいお母さん――。11歳の目にそう映っていた母親(42)が、我が子の命を奪おうとした。何が母を追い詰めたのか。
新潟地裁101号法廷。身長150センチほどの小柄な女性が裁判員らの前に現れた。黒いスーツに身を包み、背中まで伸びた茶色の髪は一つに束ねていた。
被告は3月、新潟県上越市の自宅で小学5年生の次男の首をロープで絞め、無理心中を図ったとする殺人未遂の罪に問われた。心中は中学1年の長男に止められ、失敗に終わった。
検察官が起訴状を読み上げる。被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。か細くも、落ち着いた声だった。
検察と弁護側の冒頭陳述から事件をたどる。
被告は2000年に結婚したが、03年に次男が生まれる直前に離婚。2人の子を引き取り、実家の敷地内の離れで3人で暮らしていた。
介護の仕事を始めたが、他人とうまく話せないことから2年半ほどで辞め、09年から無職に。生活保護を受けるようになった。
足りない生活費は借金し、相談できる友人も周囲にはいなかった。医師から「パーソナリティー障害」と診断され、感情が不安定になる状態が続いていた。
次男は、発達障害だった。
日常生活でも頻繁な世話が必要で、子育ては大きなストレスになっていた。生活保護を長く受け取っていたこともまた、心の重荷だった。
今年の1月頃から「自殺」の2文字が被告の頭をよぎるようになった。
3月24日、事件は起きた。
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朝日新聞社会部
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