[戻る]2014年12月5日(金)  [ホーム]
▼死亡記事の中で芸能人は大きく扱うのがマスコミの常だから、高倉健さんの死が本紙で一面に掲載され、社会面に詳報が大きく載っても驚かない。全国紙はじめ、新聞はほぼ一面トップ級で報じてもいた

▼日を置かず亡くなった菅原文太さんも一面が多かったが、わが映画人生で時期が微妙に違ったから、本紙が社会面だけなのにも違和感はなかった。「二大任侠(にんきょう)スター」の見出しに個人的に少し違う気がしただけである

▼全国紙、地方紙の中で唯一、二人の訃報を一面で扱わなかったのは、広島県に本社を置く中国新聞。記事の中にも「任侠」「やくざ」関連の記述はなし。高倉さんは後半生の芸術路線だけ。菅原さんは、芸能界引退後の東日本大震災支援、脱原発、集団的自衛権反対活動だけ。菅原さんの出世作、広島市を舞台にした実録ものシリーズ『仁義なき戦い』のせいであることは言うまでもない

▼中国新聞が「暴力追放キャンペーン」で映画のモデルとなった暴力団らに立ち向かい、社長宅に銃弾を撃ち込まれたり、幹部らは常時警察の護衛を受けた。「暴力を少しでも美化するような報道にくみするわけにはいかない」と同紙記者が語っていた

▼熱烈な映画ファンでもない一人としては、高倉さんの任侠ものは歌舞伎や時代劇観賞と同じ気分で楽しみ、菅原さんの実録ものは見る気がしなかったが、そこまで映画に社会的責任を求める同社の重い歴史に恐れ入った

▼菅原さんの訃報は映画だけで、反原発、集団自衛権反対の活動は一切触れない全国紙もあったそうで、それはそれで、やれやれという気がした。

  [戻る]2014年12月4日(木)  [ホーム]
▼民主党元職の森本哲生氏が後援会緊急報告会で「選択肢をなくした責任を痛感している」。小選挙区立候補者が百七十八人。同党全体でも、同じことは言えるのではないか。野党間の「調整はかなりうまく行った」(岡田克也代表代行)からいいじゃないか、とは言えない

▼小選挙区は政権交代できる二大政党の存在が前提。なのに、対抗馬が過半数をそろえない。「小選挙区一党制という世にも悲劇的、世にも喜劇的な構図ができあがる」と言うのは、十月末に安倍晋三首相と昼食をともにして注目された政治評論家の森田実氏。一気に政権復帰は無理だから、今回は百人でいいと「馬淵(澄夫)選対委員長が(候補予定者を)どんどん切りまくる。切られた人間から訴えがきている」

▼岡田代表代行はしかし、生活の党の二人を小沢一郎代表との会談で受け入れた。「百人方針に方々から抗議がきて続けられなくなった。しかし、拡大路線に全面的に変えることもできなかった。やっと百七十八人までそろえられたということではないか」

▼再建策を聞かれて衆参国会議員約八十人を前に、政権獲得前の状態への再統合案を説いたらシーンと静まりかえってしまい、民主党との関係がそれ以来、途絶えたそうだ。小沢アレルギーは強い。自民党の体質とは大違い。二人の受け入れは小沢氏と関係深い岡田氏がやったことで「実力者ですから」

▼岡田氏自身、野党調整を強調しながらも、1区のてんまつについて「県側からすれば大変理不尽。県連代表としては受け入れがたい」。民主党の縮図でもあったのかもしれない。

  [戻る]2014年12月3日(水)  [ホーム]
▼年末の交通安全県民運動初日の出発式で、大賀眞一県警本部長が「子どもと高齢者の事故防止、シートベルト着用、飲酒運転根絶」が重点対策と強調。中部六県で唯一、事故死者増加県の原因がそこにあるということだろう。今年は記憶に残る大事故などがなかっただけに、前年比十六人増は意外だった

▼全国指名手配被疑者捜査強化月間で、県警が七日夜から県内主要幹線道路などで一斉車両検問した八日午前三時ごろ、JR津駅前から国道23号バイパスに向かう中心街で、小型車が道路脇に停車し若者を降ろした。千鳥足の若者が飲食店前に停車してあった四WD車に乗り込む。静かな街並みにエンジン音を響かせ、おしりを振り振り津駅方面に消えた

▼七十歳以上が義務付けられている高齢者運転免許更新講習のある日。バックからの車庫入れで側溝に脱輪してしまった受講者に、警察官出身の講師の容赦ない声が浴びせられる。「やめろという権限などないけどな、あんたは免許証を返還すべきだと思うわ」。しぶとい声が続く。ちょっとした買い物をするにも一番近いコンビニまでは遠い。足腰も弱り、歩くのは大変。車は必需品だ、と

▼未明に消えた若者も脱輪のお年寄りも、事故を起こしたかどうかは知らない。が、そんな小さな一つ一つの積み重ねが、死者九十八人の半数が高齢者で、飲酒運転件数も五件増えて八件という全国傾向と逆行する結果を形成しているに違いない

▼どうすればいいか。答えは分かっているはずだが、関係団体・機関単独ではできない。結束して実行しようとする気配は、見えない。

  [戻る]2014年12月2日(火)  [ホーム]
▼歳暮用の生き伊勢エビの出荷が始まる季節になった。漢字混じりが本物で、ほかはカタカナ書きでなければいけない、ロブスターは似て非なりなど、ずいぶん勉強させられたが、すでに昨年のこと。光陰は矢のごとく、この時期は迫ってくる

▼縁起もので、ひげが折れたら値はがくんと下がるそうだが、味に違いはあるまい。刺し身にしても焼いても、おいしい冬の味覚ということになるのだろう

▼志摩市商工会の第六回「めざせ海藻甲子園」では、アオサノリを使った焼き菓子「あおさ〜スコーン」を作った地元志摩高校の「SHSクッキングクラブ」が最優秀賞に輝いた。アオサノリも冬の風物詩。英虞湾、的矢湾のリアス式海岸線に沿って、養殖網がびっしり並ぶ

▼海苔(のり)の佃煮の原料だったアオサノリが健康食品として注目されてきたことに合わせ六年前、市は「あおさプロジェクト」を発足。キャラクター「あおサー」も作るなど、普及に乗り出した。生産量は全国の約三割を占める。志摩市を代表する特産品。光合成で海中の二酸化炭素を吸収。地球温暖化防止にも役立つ

▼テングサ、アラメなどとともに昔は海女が採取していたのだろうか。海女は、アワビなど底生生物を採るカイ海女と、海藻を採るクサ海女に分けられる。潜水漁で全身の筋肉を使うため山村に比べ老化が遅く、稼ぎ手でもあったので社会的地位は高く、自由で文字通り「輝く女性」だった

▼真珠産業の振興が厳しい海女漁から引き離した。養殖、栽培漁業の普及が追い打ちをかけた。高級食品の大衆化とともに、海女は希少価値的存在になった。

  [戻る]2014年12月1日(月)  [ホーム]
▼文武両道という。平成二十六年度「全国体力・運動能力調査」の結果が小中とも、体力合計点で全国平均を下回ったのはさもありなんという気がするが、県教委によると、前年度に比べると改善したのだという

▼なるほど調査対象の小学五年と中学二年のうち、小五は昨年度、男女とも体力合計点で前年度を上回っていたから、本年度さらに上回って過去最高になったことに意義はあろうが、中二は男女とも昨年度、前年を下回っている。上回ったからといって「改善した」と胸を張れるのかどうか

▼過去最高で全国平均との差が「年々少しずつ小さくなっている」という小五にしても、疑問がないわけではない。体力調査には、文科省が小中各一学年ずつ対象にする全国体力・運動能力調査と、県が毎年三分の一の学校を抽出して全学年を調べる体力・運動能力調査があるが、全国調査が小中とも97%以上の実施率なのに対し、県の調査は小学校の昨年度実施率が40%。それでも前年比では12ポイントの大幅増だが、前々年度からは小幅増

▼全教科担任制の中で、体力強化を体育の時間に取り入れるか、学校行事として取り組むかで定見がなく、設備の整備についても、課題が多いという。指導体制の底の浅さを感じさせなくもない

▼学力テストでは家庭でのゲームの時間などが問題になったが、体力テストでは低下続きのボール投げについて、小さいころからの経験不足が指摘された。公園のボール投げ禁止や塾通いも加わり、国体開催を前に、体力向上への展望は、知事が公約達成に懸命の学力テスト以上に深刻かもしれない。

  [戻る]2014年11月30日(日)  [ホーム]
▼東電福島第一原発事故の「吉田調書」に関する記事を取り消した問題で、朝日新聞社は記事を取材・執筆した記者二人を減給の懲戒処分にする。解雇の恐れが、杞憂(きゆう)に終わったのはめでたい

▼「意図的な捏造(ねつぞう)ではなく、思い込みや想像力の欠如などの過失」と処分理由を説明した。「捏造」とは「実際になかったことを事実のように仕立て上げること」。つまり「意図的」であり、逆に言えば意図的でない捏造はない。捏造ではなく、過失だったということだろう

▼同社は、当時非公開だった第一原発の故吉田昌郎元所長の「聴取結果書(吉田調書)」を入手し「所員の九割が吉田氏の待機命令に違反し撤退した」と報じた。が、吉田氏の意図に反したのは事実だが、所員のほとんどが命令を知らなかった。そのことの取材が甘く、所員の行動は「正しかった」と吉田氏が認めていることを書かなかった

▼誤解を与える報道であり「誤報」とされても仕方ないが、分かった時点で「訂正」「おわび」をするのが一般的。「取り消し」たのは、従軍慰安婦報道と一緒に発表することになったからだろう。ために批判も増幅されたが、元共同通信編集主幹でジャーナリストの原寿雄氏が仲間数人と担当記者らに聞いたところ、その後解説記事や詳報を書こうとしたが実現しなかったという。社内の意思疎通が不足していたのかもしれない

▼記者らは第三者機関の報道と人権委員会で事情聴取を受けている。異例な「取り消し」からも解雇の条件整備と疑われる兆候はあった。朝日の良心≠ェかろうじて守られたと言えなくもない。

  [戻る]2014年11月29日(土)  [ホーム]
▼窓外の皇居を指さし、廃棄物処理法を所管する環境省幹部が「産廃施設の建設申請があれば、あの中でも許可しなければならない」と言ったという伝説がある。同法成立は四日市公害訴訟判決前の昭和四十五年。産業活動優先の社会の中で、廃棄物発生は当然という考えだった

▼環境重視へ改正されていくのは平成に入ってから。特に十年代、規制が厳しくなっていくが、紀伊長島町(現紀北町)の産廃問題は平成五年に始まった。町簡易水道水源上流に処理施設建設を計画。産廃を所管する県は七年五月十日付で許可。町は同三十一日付で新たに制定した町水道水源保護条例で規制対象にし、業者と町の十八年に及ぶ係争になる

▼その間、最高裁の差し戻し、逆転判決で町が敗訴。続く損害賠償訴訟でも司法判断は揺れている。「条例の説明不足」を理由に名古屋高裁が一審から減額して損害賠償支払いを命じたことを不服として、町は最高裁への上告を決めた

▼町と十分な協議をせず、意向、窮状に配慮せず、北川県政誕生という知事選直後のどさくさに認可して係争の原因を作った県は今、何思うか。抜け穴だらけの法のもとで環境汚染が危惧される産廃施設の建設を阻止するにはあらゆる行政手法を駆使するしかないとは、問題発生のたび、県議会で指摘されてきた。改選を機に巧みに責任を回避したことにもなる

▼北川県政で成立させた産廃税。まめがらをもって豆を煮るだが、税を支払わせて市民権を与えるのか、ハードルを高くして施設建設を押さえ込むのか。定まらぬ県の姿勢の象徴する遺物とも言われる。

  [戻る]2014年11月28日(金)  [ホーム]
▼県内企業の障害者実雇用率が前年に比べ、伸び率で全国二番目の0・19ポイント増の1・79%。全国順位を四十七位から三十三位へ上昇させた。伸び率は全国一などと言われながらなかなか最下位を脱出できなかったが、ついに悲願達成。それも一気に三十位台の上位まで

▼「昨年分が発表になった時に労働局長と連名で異例の『障害者雇用改善プラン』を立てて、私も企業を訪問。県、経済団体一丸となって取り組んだ」として、鈴木英敬知事は「関係者に感謝している」

▼県内実雇用率の低さを例に障害者への理解が不足していると指摘しながら、自らは法定雇用率を達成せず、一昨年は厚生労働相から勧告を受けた県教委が、初めて法定雇用率を上回ったのも明るい材料で喜ばしい

▼その気になった途端、あっという間に目標クリアの感もあるが、一過性に終わらぬことを願いたい。というのも、三重労働局にしろ、県の「障害者雇用改善プラン」にしろ、企業の理解を得ることと、それに則した障害者の研修、教育をすることが二本柱で、健常者と障害者が平等の立場で暮らせる社会への展望が描き切れていないふしがあるからだ

▼改正障害者基本法は、障害者が健常者と同等の活動ができる「合理的配慮」を社会に求めているが、三重労働局に障害者の最低賃金例外措置を見直す気配はない。賃金について問われ鈴木知事は「もちろんもらえますよね」と事務局に確認して「はい、もらえます」。自立に不可欠な賃金について、二の次のように見えなくもないのだ

▼強力なリーダーシップも知事選までとならなければ幸い。