▼死亡記事の中で芸能人は大きく扱うのがマスコミの常だから、高倉健さんの死が本紙で一面に掲載され、社会面に詳報が大きく載っても驚かない。全国紙はじめ、新聞はほぼ一面トップ級で報じてもいた
▼日を置かず亡くなった菅原文太さんも一面が多かったが、わが映画人生で時期が微妙に違ったから、本紙が社会面だけなのにも違和感はなかった。「二大任侠(にんきょう)スター」の見出しに個人的に少し違う気がしただけである
▼全国紙、地方紙の中で唯一、二人の訃報を一面で扱わなかったのは、広島県に本社を置く中国新聞。記事の中にも「任侠」「やくざ」関連の記述はなし。高倉さんは後半生の芸術路線だけ。菅原さんは、芸能界引退後の東日本大震災支援、脱原発、集団的自衛権反対活動だけ。菅原さんの出世作、広島市を舞台にした実録ものシリーズ『仁義なき戦い』のせいであることは言うまでもない
▼中国新聞が「暴力追放キャンペーン」で映画のモデルとなった暴力団らに立ち向かい、社長宅に銃弾を撃ち込まれたり、幹部らは常時警察の護衛を受けた。「暴力を少しでも美化するような報道にくみするわけにはいかない」と同紙記者が語っていた
▼熱烈な映画ファンでもない一人としては、高倉さんの任侠ものは歌舞伎や時代劇観賞と同じ気分で楽しみ、菅原さんの実録ものは見る気がしなかったが、そこまで映画に社会的責任を求める同社の重い歴史に恐れ入った
▼菅原さんの訃報は映画だけで、反原発、集団自衛権反対の活動は一切触れない全国紙もあったそうで、それはそれで、やれやれという気がした。 |