テレビ朝日『報ステ』反原発やりすぎ報道をBPOに自ら"ご注進"
2014.11.01
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叩き上げ早河会長派と天下り吉田社長派の"権力争い"の場に!?
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テレ朝叩き上げの早河洋会長兼CEO。7月には安倍首相と会食するなど、政財界に太いパイプを持つ
Photo:共同通信社
〈番組プロデューサー、番組ニュースデスク、社会部担当記者の3人が減給3ヵ月、(管理職にあたる)報道局ニュースセンター長ら4人がけん責処分〉
『報道ステーション』での、川内原発再稼働に関する報道(9月10日オンエア)に"やりすぎ"があった件で、テレビ朝日は10月28日、関係者の処分を発表した。
「あまりに重すぎる……」
 テレ朝社内には衝撃が走ったという。過去、減給3ヵ月の処分が下ったケースは、制作局の副部長が警察官を殴った際(’09年4月)や、ある番組の内容が総務省から「放送法に抵触する」として厳重注意を受けたとき(同年同月、制作部の担当副部長が減給3ヵ月)など、「明らかな法律違反や、それに近いことを行った場合」が主だった。今回はどうか。放送内容を振り返ろう。
「9月10日は、原子力規制委員会が『川内原発が新規制基準を満たした』と再稼働にお墨つきを与えた日で、報ステでも大きく取り上げました。ところが、田中俊一委員長が記者の質問に答えたにもかかわらず、『答える必要がない』と発言した場面だけを放送するなどアンフェアな内容だったのです」(テレ朝関係者)
 翌日、規制委からの厳重な抗議があり、テレ朝は『報ステ』内で謝罪。9月30日の社長定例記者会見では、吉田慎一社長が読売新聞記者らの質問攻めにあったあげく、やはり謝罪した。
 さらにテレ朝の上層部が、番組内容をBPO(放送倫理・番組向上機構)の審議にかけるよう現場に指示したという。結果、「番組作りのどこに問題があったか」について、総合編成局が〈「報道ステーション」における原子力規制委員会に関する報道について〉と題した23ページにもわたる報告書を作成、BPOに提出したのだ。
「放送局が自局の番組をBPOに"告発"すること自体が珍しい。23ページもの緻密な報告書を提出したのも、異例中の異例です」(BPO関係者)
狙われたディレクター
 たしかに報道内容に問題はあったが、法に触れるものではない。にもかかわらず、なぜ社員に重い処分を下し、自らBPOに"ご注進"したのか。
「テレ朝社内に報ステを快く思っていない人たちがいるのです」
 こう明かすのは、テレ朝の幹部だ。
「今年放送開始から丸10年を迎えた報ステは、最近、反原発報道に力を注いでいる。しかし原発特集は視聴率には結びつきにくいうえ、スポンサーを刺激したり、つき合いのある政治家からイヤミを言われることも多いことから、上層部は苦々しく思っている。安倍総理とも親しい早河洋会長(70)も同様の考えのようで、現場には『もう少しニュートラルな報道の仕方ができないか』との"要望"が何度も降りたそうです」
 そんななか起こったのが今回の"やりすぎ報道"。テレ朝内の反報ステ派はこれを機に、報ステの首に鈴をつけようとしているというのだ。
「BPOから何らかの指示が出れば、報ステにはさらなる慎重さが求められるようになり、自由な番組作りはできなくなるでしょう。報告書では、原発問題に熱心に取り組んでいたベテランディレクターが『彼が問題の原稿を書いた』と、わざわざ名指しで批判されている。これまで原発と火山の関係について特集を組むなどしてきた彼も、しばらくおとなしくするほかない」(同前)
「社長が責任を取れ」
 そして、報ステとともに窮地に立たされているのが、今年6月に朝日新聞から天下って社長に就任した吉田慎一氏(64)だ。テレ朝の社員が言う。
「吉田社長は、朝日の政治部記者時代にスクープを連発しただけのことはあり、硬派な報道姿勢を貫いてきた報ステに理解がある。就任直後、番組スタッフに『私はテレビのことはわからないが、ニュースのことはわかっているつもりです。どうぞ全力で番組を作ってください』とエールを送ったほどです。
 しかし、早河会長との折り合いが悪い。テレ朝の社長は、代々朝日新聞社の天下りポストでした。’09年に早河さんが初の叩き上げ社長となったのですが、彼の後任として、また朝日から吉田さんが送り込まれてきた。会長が社長のことを快く思うハズがないのです」
 そんななかで今回の報ステ問題が起きた。いきおい会長の周囲の幹部らは、
「吉田社長が責任を取るべきだ」
 と騒ぎ始めたのだという。
「報ステスタッフらへの厳罰も会長に近い幹部が決め、社長はただ判を押すだけだったと聞いています。反社長派は、社長を『テレビのことがなにもわかっていない。業界用語からいちいち説明しなければならない』とバカにし、報ステとともに力を削ごうとしているのです」(同前)
 テレビ朝日広報部は本誌の取材に、
「10月3日に、経緯や再発防止策をBPOに文書で報告しましたが、ご指摘のような、当社から『審議入り』を要請したという事実はまったくありません。原発関連の報道については、その後も継続して取材、放送を行っており、今後も多角的な視点で報道してまいります」
 と回答するが、前出のテレ朝社員は、
「報ステの現場には上層部からのプレッシャーがかかっているとのウワサです。近々プロデューサーの異動や、コメンテーターの変更などが行われるかもしれません」
 と話す。視聴者不在の権力争いで、テレ朝の看板番組の報ステが骨抜きにされるなら、それこそ"やりすぎ"だ。
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記者時代には新聞協会賞を2度も受賞した吉田慎一社長は、「朝日は慰安婦で、テレ朝は原発で"ねつ造"とは……」と頭を抱えているはず
Photo:濱﨑慎治
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テレ朝がBPOに提出した報告書。誰がどんな原稿を書き、どんな編集をしたかが詳細に記されている
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