淫楽の宴

第三章

作:ワイワイ さん

「へぇ〜弥生休みなんだ、まっ、あれだけやりゃ無理ないか」
弥生に対して初めての催眠に初めての淫乱化をやって、たっぷり遊んだ翌日、舞や祥子と合流
した花梨は二人からそう聞かされた。性的に派手なことなどおおよそ縁のない弥生のことだ、淫
夢に身を焦がして徹夜でやっていたのではないだろうか。今日は別の標的がいるから、弥生は
いない方が良い。花梨は忘れ物をしたとウソをついて二人を先に部室へ行かせ今日の標的、疑
惑の如月紗里奈の教室へ向かった。

目当ての紗里奈はまだ教室にいた。こちらにはまだ気がついていない。見れば見るほど本当に
かわいい。丸型の輪郭にきりっとした目鼻立ち、そのくせ大きめのくりっとした眼の妙なアンバラ
ンスさがかわいい方向でまとまっている。髪型はポニーテールで、髪をかき上げたうなじがまたそ
そる。ルックスも抜群なのだが、なんと言ってもそのボディーラインはとても高校一年生のものと
は思えない。余計な肉はなく出るとこは出て引っ込むところはピシッとしている。すらっと伸びなが
ら均等なバランスで発育した足は、ミニスカートを履くための足と言っても過言ではない。
「ちょっとー紗里奈ぁー、いいかなー?」
いつまで経っても動こうとしないので花梨は自分から声を掛けた。クラスメートは四〜五人を残し
てもういない。
「あ、せ、せ、先輩……!」
振り向きざまにこう言う反応が出るということは紗里奈の中で花梨は体操部のサポート要員にし
て先輩と言う認識がしっかりと根付いていることが証明される。その紗里奈が秘密を暴露する投
書を出したと言うのがどうも不自然に思えてならない。紗里奈はもう既に顔を赤らめ、来るべき悦
びを無意識に感じているのか両手を胸の前で組んで立ち竦んでいる。
「ちょっ、ちょっ、ちょっとさぁー、こっち来なって、恥ずかしいでしょ」
花梨のほうが恥ずかしくなって気短に手招きをした。
「あ、はいっ、ごめんなさい!」
赤みがかった顔がさらに赤くなって駆け寄ってくる。まったく屈託のないその顔を見ながら、さっき
感じた不自然さはいよいよ花梨を惑わせる。
(回りくどい事はいい、直球で行こう)
「ねぇ、生徒会に投書した?」
目をぱちくりさせて、紗里奈が花梨の顔を凝視している。
「え、それ何のことですか?投書ってそんなものするところあるんですか?」
「あるよ、生徒会室の前に箱が置いてある」
「あ、私生徒会室行った事ないです。あそこ最上級生の教室の廊下で、なんか怖いから…」
「怖いって事はないだろうけどさ…」
と言いながら教室を見るともう既に無人になっていた。花梨はそっと右手を紗里奈の左肩に置く
と首筋から耳たぶにかけて指を這わせる。
「あ!…せ、先輩…こんなところで…」
まだ催眠状態になってはいないはずだが、言葉とは裏腹に体はもう無抵抗だ。花梨を見つめな
がら段々近づいてくる。紗里奈の両手が花梨の腰に掛かりそのまま抱きついてくる。花梨は肩に
おいていた手を背中に持ってきて紗里奈を引き寄せると右の耳たぶを口にふくむ。
「あん!…」
そのまま舌先を耳の中に入れる。これが紗里奈個人に何度か使った淫乱化の後催眠暗示キー
ワードとも言うべき動作だった。催眠状態にして間違いがないかどうか確認する必要があった。
あくまで普通に入れるつもりだったのに、ここに来て紗里奈を見ているうちに苛めたくなってしまっ
た。もともと花梨ら三人は粒ぞろいの体操部にあって際立っていた紗里奈に目をつけていた。集
団もいいが紗里奈と二人っきりでエッチしたいと思っていたのだ。抜け駆けはなしと言う事で紳士
ならぬ淑女協定を結んだのだが、この期に及んではそんなものは頭からは霧散していた。心持
ち花梨を抱きしめていた紗里奈の両手から力が抜ける。花梨は右手で紗里奈のお尻を愛撫し、
紗里奈を引き寄せた左腕を前に持ってきて紗里奈の形のいいバストを揉みしだく。
「ぁあああん…んなああぁ…もっと強くもんでぇ…」
ただでさえ淫乱状態になりかかっていた紗里奈は催眠にかけられたことを認識して遠慮がなくな
った。
「先輩!好き!して…して…もっと…ああん!あ、あ、いい…」
紗里奈は勢い花梨のスカートを脱がそうとする。
「待って、まだダメよ。あなたがまず脱ぎなさい…脱ぎたいんでしょ…ほら…教室の中、誰もいな
いけど、いつ人が来るか分からない、誰かに見られたらすごく恥ずかしい、でも脱ぎたい…でし
ょ?」
「は、はい…」
「紗里奈はすごくエッチな子、だから脱ぎたい、見られたい…我慢できない…いいわよ脱いでも…
見ていてあげる…」
既に真っ赤になっていた紗里奈の顔はさらに真っ赤になる。両手のが軽く痙攣しながら段々上の
ほうに上がってくる。ブラウスの第一ボタンを外そうとするが、震えて中々うまく行かない。花梨は
優しく手を添えてやり、何か別なものを髣髴させるようないやらしい動きで紗里奈の手を愛撫す
る。
「ほうら気持ちよくなってきた。ものすごくいい気持ち…どんどんエッチな気持ちが加速していくよ
…脱がずにはいられない…見られるのが快感になる…早く脱がないと気が狂いそうになる…」
紗里奈の手の動きがいくらかスムーズになってブラウスのボタンを外すと、迷うことなく脱ぎ捨て
た。裾がスカートで止まっているが、紗里奈自身がスカートを緩めて手を離すとスカートと一緒に
ブラウスも落ちた。
「脱げば脱ぐほど、どんどん気持ちよくなる。全身を愛撫されているような抱擁感が広がっていく。
脱げば脱ぐほどエッチで気持ちいい感じが強くなっていくよ…」
紗里奈は心持ち息を荒くしながらブラのホックを緩めると、これも頓着無しに脱ぎ捨てる。美しい
バストはさらに快感を求めているといるように上向きに紅張し乳首もこりこりになっていた。当然
ながらパンティは湿り気を帯びている。紗里奈はパンティも下げようとしたので、花梨が手伝って
脱がしてやった。
「もう完全に裸よ、だからすごく感じる…」
形のいいバストをゆっくり揉んでやる。
「んぁ!…あぁ…いい…先輩…もっとしてぇ…」
「全身が性感帯になっているわ…どこを触られてもめちゃくちゃ感じる…」
花梨は紗里奈の胸をもみ続けながら首筋、腰、腿、などあらゆるところを触る。新しいところを触
られるたびに紗里奈は引きつったように体をよじり、悶える。当の紗里奈はさらに強い快感を期
待して、花梨の腕の中で小鹿のように震えていた。紗里奈の内腿には愛液がしたたり、二人をさ
らに興奮させるに充分な匂いを放っていた。
「…足を開いて…紗里奈…もっとよくしてあげる…」
紗里奈の足が50cmぐらい、すっと開く。快楽の泉に向かって花梨は口を近づけ、そして聖なる
粘液を啜った。
「ひゃぁ!!」
吸い込む。舐める。舌でかき回しそしてまた啜る。豊かな水源はどんどん聖水を湧き出させてい
く。舞に鍛えられた舌技が冴え渡る。最近開花したばかりの晩生の女の子を発狂させるには充
分なぐらい強烈な快感が彼女の心身を突き抜ける。声にならない叫び声をあげ悶えまくる紗里
奈。花梨自身興奮の極みに達してはこのまま押し倒そうかと思ったが、さすがに普通の教室でこ
れ以上はいくらなんでも危険すぎる。いくら周囲に人の気配がなくなったとしてもだ。そのことに気
が付き、あと少し、というところで花梨はやめた。だが快楽で半狂乱状態にある紗里奈はこんな
中途半端に止められては堪らない。
「あぁっ…あぁっ…あぁっ……あぁっ…いや!…やめないでぇっ…いかせてぇ…お願い…先輩…
いかせてぇ…」
「ダメよ。この先は私の部屋でしましょ…我慢しないとしてあげないわよ…欲しいんでしょ?」
まともに返事も出来ない紗里奈はお預けにされ解放しそこなった狂獣が中で暴れまわっている
体を何とか制御して頷く。
「それじゃ分からないわ!ハイと言いなさい」
「…は、…は…い……」
どうもこう言う具合になった女の子を見るとサディスティックになってしまう。
「このまま行くわよ…裸のまま…そうしないとしてあげないわよ。大丈夫誰に見られないわ、今は
放課後で部活動の時間。誰もいないから大丈夫。でも見られるのが快感な紗里奈は本当は見ら
れたいんでしょ」
「…は…い……」
「意地悪な先輩にいじめられて裸で歩かされている紗里奈はそんな恥ずかしいところを見られる
と、ただ見られるよりずっと感じる…ものすごく感じるわよ。そしてそれを味わいたい。そうでし
ょ?」
「はい…」
汗と愛液と唾液まみれになった体に発狂寸前の動きで乱れた髪が嫌らしさを倍増させる。紗里
奈は顔を真っ赤にして立ち竦む。
「んふふふふふふ…いい子ね…あ、前からクラスメートがきているよ!」
「…い、いやぁ〜…」
消え入りそうなか細い声で体をよじる紗里奈。当然そんなクラスメートはいないが紗里奈の目に
はハッキリと見えているのだ。
「感じる…見られてすごく感じる…もうどうしようもないぐらい感じるわ…」
途端に恥ずかしさでよじった体を今度は快感で悶えさせる。
「さぁ、行くわよ。…私の部屋に入ったらさっきの続きをしてあげる」
「…は、は…い…」
花梨はそう言うと全裸の紗里奈の手をとって歩き出す。ここは一年生の教室が並ぶ本館の一階。
寮に行くにはまず階段を登り二階から渡り廊下経由で行く。渡り廊下を渡れば一番手前の階段
を登ってすぐだ。時間的にほとんどの生徒はいないはずなので見つかる可能性は低い。こう言う
状況は部室棟と言う専用施設があればこそだ。

紗里奈の目はうつろになり、口からは止まらない快楽の溜息と軽い喘ぎ声が引っ切り無しに漏れ
ている。紗里奈の体を走り回る快感はどんどん強くなっているようで、喘ぎ声や体を引きつらせる
事が多くなり何度も転びそうになる。紗里奈の股下から内腿にかけて嫌らしい艶がある粘膜が覆
っているように見える。花梨としては、そんなものを見てしまうと胸の鼓動が高鳴り、紗里奈に我
慢させておきながら自分が我慢できなくなってしまうのではと思ってしまう。永遠とも思える道のり
を乗り越え、何とか無事に自分の部屋に辿り着いた。焦る思いで不用意にドアノブに手をかける
が、そのドアノブの音に花梨は固まった。迂闊ながら失念していた、この場合の最重要事項。花
梨は祥子と同室だったのだ。忘れ物と言い部室へ先に行かせたものの、これだけ時間が経って
花梨が行かなければ戻ってきている可能性は充分にある。見つかれば淑女協定違反を指摘さ
れ、せっかく『テイク・アウト』した紗里奈をハイエナに横取りされることはまず間違いない。しかし
手荒く掴んでしまったノブの叫び声は中に人がいれば間違いなく聞こえているはずだった。今更
どうしようもない。観念してノブを回す。
(・・・・・・・・・ふぅ・・・)
これほど緊張が解ける瞬間が気持ちいいものだと認識したことがないほどだった。周りを見渡し
ながら花梨はポケットに入れてある部屋の鍵を探した。

祥子と舞は他の部員のこない部室で待ちぼうけを食わされていた。他の部員も現金なもので具
体的な催眠実演計画がないとほとんどこない。寮に帰っているわけではなく他のクラブに参加し
ているのだ。机に突っ伏して舞が忌々しげに言う。
「忘れモンて絶対ウソだよね」
「だろうね、校内でこんなに時間掛かるわけないもん」
祥子はなにか別のことを考えているような雰囲気で答える。
「食ってんのかな…やっぱり」
「それしかないでしょ…」
「誰だろ…」
「師匠がつまみ食いしているなら私達もやろうよ」
祥子は舞の質問には答えず、していた考え事を披露した。やっぱり考えることはエッチに関係し
ている。
「え〜私達だけでぇ?誰をやるのよ」
「弥生」
「いいねぇ〜…」
舞はオヤジじみたスケベな顔をする。
「ちょっと思い出せないんだけど、花梨がかけた鍵言葉覚えてる?」
「当然」
得意満面にそう言うと舞が早速立ちあがり、祥子と連れ立って弥生の部屋に向けて走り出した。

「弥生〜いる〜?」
弥生の部屋のドアをノックしながら祥子が尋ねる。何も返答がない。結構頑丈な作りの寮だが声
が通らないと言う事はない。今度は舞がドアと枠の筋に向かって、
「生徒会のことで言伝があるんだけど」
と、もう一度大きな声で言う。しばらくすると慌てたような声色で中から弥生が応じる。
「ちょっと、待ってて…」
中から窓を開けているようなバタバタした音が聞こえると、舞はドアに寄り掛かった。なぜ居留守
を使おうとしたのか、その後で対応すればどういう行動に出るのかお見通しのようである。
「ごめん…きゃぁ!」
そうっとドアの一部だけを開けようとした弥生は舞が寄り掛かっていたため中にドアごと押し込ま
れてしまった。
「うわっと」
「あぶない!」
舞が叫べば祥子もわざとらしく付け足し大袈裟によろけて部屋の中に踏み込む。ドアは完全に開
け放たれ、二名はまんまと侵入に成功した。
「ちょっとなによ、危ないわね」
弥生が文句を言うが不自然な演技が見え見えである。舞と祥子は部屋の中が香水の匂いで充
満しながら、窓が全部開け放たれている状態でも、例の臭いを嗅ぎ取った。
(してましたね…ふふふん)
よく見るとドアに押し込まれただけにしては弥生の服が乱れすぎているようにも見えなくもない。
ベッドはわざとらしいまでにピシっとシーツが張っている。普通の子なら誤魔化せただろうが相手
が悪かった。弥生は二人の顔が訳知り顔なのが気に入らなかった。さっきまでの恥ずかしい行為
がばれるわけはないと思っていても勘付かれたかと言う焦りが噴き出してくる。弥生の記憶から
は昨日の誘導のことは完全に滑り落ちているのだ。
「なに?言伝って」
弥生がイライラを通り越して怒り心頭になりかかっているような勢いで言う。いわゆる逆ギレを演
じている。舞は周りに人がいないかを確認すると、弥生に手招きをする。いかにも内緒の内容だ
と言わんばかりに。生徒会の言伝が内緒の内容になる訳がない。正常な弥生なら気が付いてい
ただろうが、自分のペースを崩されている弥生は舞の策略に乗ってしまった。
「眠り姫」
近付いた弥生の耳元に舞は囁いた。弥生は一瞬目を宙に泳がせると舞に寄り掛かるようにして
脱力してしまいズルズルと床に膝立ちの姿勢になってしまった。舞は祥子に向かって勝利のサン
ブ・アップをする。こうなればあとは催眠誘導技術においては舞より経験のある祥子の出番であ
る。祥子は膝を崩して横座りの姿勢になっている弥生をさらに弛緩させ、深化させて行く。
「すご〜くリラックスしてとても気持ちがいい…でももっと気持ちよくなるには床に座ってたらダメよ
…ベッドに行きましょ…ベッドならもっとリラックスできるよ…足に力が入って立ち上がれるよ…ほ
ら、ゆっくりと支えてあげるから安心して立ち上がれるよ…」
弥生はそういわれるとゆっくり立ち上がる。祥子は一足早くベッドに乗っかると、弥生もそれに従
う。壁を背もたれ代わりにして開脚状態で祥子は座り、自分の体にもたれるように弥生を再び弛
緩させる。祥子は両手で弥生の肩を擦り出す。
「こうやって肩を擦られるとものすごく気持ちいい。すごくリラックスしてくる。リラックスすればする
ほどもっともっと気持ちよくなる…」
意識的に『気持ちいい』と言う点に抑揚をつけ、それにあわせて擦る手に若干力をこめる。これだ
けで催淫されるようなら、花梨の催淫暗示がかなり深く効いている事を表す証拠にもなる。果たし
て弥生は祥子の期待通り、かすかな喘ぎ声をあげ始めた。それを聞き二人は満面の笑みを浮か
べ、祥子はそれをさらにエスカレートさせる。
「もっともっと気持ちよくなる…どうしようもないほど気持ちよくなってくるわ…こんなに感じたこと
がないぐらいに気持ちよくなってくる…」
弥生の喘ぎ声とも溜息ともつかないような声が段々ハッキリしたものになっていく。
「でもこれだけじゃなんか物足りないでしょ…もっと気持ちよくなれる場所をあなたは知っているわ
…そこを触ってもらいたくなってくる…自分では触れないので触ってもらいたい…そう思うともっと
もっと触ってもらいたくなる…さぁ、どこを触って貰いたいか言わないとおかしくなりそうよ…もっと
もっと気持ちよくなりたいのに触ってもらわないと今の快感が段々遠のいて行っちゃうわよ…」
「…はぁ…はぁ…む、胸…」
消え入りそうな小声で弥生が言う。
「聞こえないわ…はっきり言わないと止めちゃうよ…大丈夫大きな声で言っても誰も聞いてないか
ら恥ずかしくないよ…」
誰もいないならなおさら大きな声で言う必要がない、などというような理性など当然どこかに霧散
している。
「胸…胸…」
「胸をどうして欲しいの?」
「さわってぇ…」
祥子はにやりと微笑むと肩を擦っていた両手を弥生の脇に忍ばせ後ろから両方の乳房を触れる
ように手を移動させる。
「ほら触るよ…胸に神経が全部集中している…触られたらものすごく気持ちよくなっちゃうよ…ほ
ら…」
「あぁ!」
触れた瞬間、弥生は上半身を仰け反らす。祥子の触りはまだ揉むとまで行かずゆっくり優しく乳
房の形に沿ってブラウスの上から撫でていると言った感じだが、敏感にさせられていた弥生の性
感には充分すぎる刺激になっているようだ。
「あっあっ…いい…気持ち…いい…」
「そう…すごくよくなるわ…もっともっと気持ちよくなる…どんどんエッチな気持ちになっていくわよ
…」
祥子の触りは段々と愛撫に変化していき、弥生の乳房は祥子の依然優しくゆっくりだが絞り上げ
るような動きに、その柔らかい形を変化させる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「すごくいい気持ち…ものすごく感じている…でもブラウスの上からじゃ物足りない…もっともっと
気持ちよくなりたい…ブラウスを脱ぎたくなる…もう邪魔で邪魔でしょうがない…さぁ…両手に力
が入って脱ぐことが出来るわよ…もう我慢できない…脱ぎたくて脱ぎたくてしょうがない…」
弥生の両腕がゆっくりと動く。ブラウスの第一ボタンに指をかけるとどんどんその下に続くボタン
も外していく。開いた隙間からは弥生にしては意外なほど派手なデザインのブラが現れてきた。
この間見た弥生のブラは面白みのないものだったのだ。今日のは青系の色でカップの部分はも
とより肩ひもにかかる部分にまで豪華な意匠が施されている。
(花梨の淫乱化でここまで変わるのか…それとも…)
祥子は悪知恵が涌いてきてさらに暗示を続ける。
「すてきなブラジャーね…いつもこう言うのを着けているの?」
「んーん…エッチな事をするときだけ…」
意外な返答だった。弥生が『エッチ』なんて単語を混ぜてくるとは思わなかったからだ。直接暗示
で指示したならともかく、こう言う変化は催眠でいきなり現れるものではない。自分の意思でやる
ようにならないと出てくるはずがない。納得がいかないという気味の悪い感覚が微妙に祥子の脳
裏を掠める。
「ブラウスのボタンを外してすごく気持ちよくなったわ…足も開くともっと気持ちよくなるわよ…そう
…膝を立てて思いっきり開くのよ…」
足と言った瞬間にすぐに反応する。かなり温まってきたと見ていいようだ。弥生は膝を立てそのま
ま足を割りどんどん左右に広げていく。
「そう…広げれば広げるほど気持ちよくなっていく…すごく感じる…もっともっとよくなる…」
祥子は舞の方を見ると目で合図をして姿見をこちらの方へ向かせるようにしてもらう。
「さぁ…スカートをたくし上げて…スカートの中が蒸れて暑くて暑くてしょうがない…もう鬱陶しくて
どうしようもない。大丈夫ここには誰もいないからスカートまくっても大丈夫よ…全然恥ずかしくな
い」
前に据えられた姿見に弥生の痴態が映し出され祥子の喉が音をたてた。ブラウスの前を肌け、
凝ったデザインのブラがちらりと見える。広げた足にかかっているスカートが、弥生自身の手によ
って段々たくし上げられる。膝が見え、峠を越えた布地は自然と腿の上を滑り落ちる。さっきから
チラチラとは見えていたが、やはりパンティもブラに合わせたような青系の色で凝ったデザインの
もの。今の催淫暗示で濡れたのか、二人の侵入前の自慰で濡れていたのか、既にあの部分を
覆う布地は濃い色に変化していた。
「目を開けて…目を開けてもこの気持ちいい催眠状態のままよ…開けても催眠状態からは覚め
ないから安心して目を開けられるわ…」
弥生が重そうにまぶたを軽く痙攣させながら目を開く。まだ何にも認識できていない虚ろな表情
だ。
「前を見て…鏡に映った自分の姿だけが見えるよ…ここにはあなただけしかいないから…あなた
しか見えない…当然のこと…ほら…」
虚ろな表情がゆっくり動いて前に置かれた姿見を見る。目はさっきより若干焦点が定まったよう
になっている。
「自分の乱れた服装を見るとさっきよりもっともっとエッチな気分になってくる…肌けたブラウスが
すごくエッチ…触りたい…気持ちよくなりたい…でしょ?」
「…ン……」
返事のつもりか弥生は鼻にかかるような微かな声を出す。祥子はブラの上から弥生の乳房を両
手で覆った。そしてゆっくりと揉みし抱く。ブラの複雑な凹凸が祥子の手のひらに直接伝わるよう
になって、祥子もまるで自分の性感帯が手のひらに移ったようにビクビクと来る感覚を自覚した。
弥生の声も段々大きくなる。乳首はブラが持つ複雑な凹凸越しでもはっきりとわかるぐらい硬く突
き出している。その部分が余計に祥子の手のひらを刺激する。無意識のうちに乳首の上を指で
はなく手のひらで転がすように愛撫する。乳房全体を寄せたり捏ねたりしている動作の中心部で、
硬くなった弥生の乳首とブラの凹凸が祥子の手のひらを刺激している。
「もっともっと気持ちよくなるわよ…ほら気持ちよがってくれっている自分の嫌らしい姿を見て…す
ごく嫌らしい…でもすごく気持ちいい…どんどんどんどん昇っていく…もっともっとよくなっていくよ
…」
見る見るうちにパンティのシミが高速度撮影の映像のように広がっていく様がわかる。中心部は
もうシミに収まらず、中身まで透けて見えそうな勢いである。
「ほら…パンティを見て…すごく濡れているわ…濡れていることがわかるとものすごくエッチな気
分が余計に増幅される…もうどうしようもないほどに感じてしまう…脱ぐともっと気持ちよくなるよ
…湿ったパンティは気持ち悪い…ほらほらもう脱ぎたくて脱ぎたくてしょうがなくなってきた…もう
我慢できない…あ〜溜まんない…両手は動くからさっさと脱いじゃうよ…」
急に体をむずむずさせたかと思うとお尻を浮かせ脱ぎにかかる。鬱陶しいものを剥ぎ取るように
濡れたパンティを両腿に通して脱ぎ捨てた。解放された熱帯雨林は独特の芳香を漂わせ、舞と
祥子の性欲を否応なく駆り立てる。誘導に集中していた祥子はそこではじめて舞が既に下着姿
になっていることに気がついた。熱病患者のような目で弥生を見詰め、正座を崩してお尻をつい
た状態の姿勢で、右手の指先が舞自身の熱い部分に届くように埋もれている。左手は自分のブ
ラの中に指先を入れ、自分の指先で自分の乳首をこねくり回しているようだ。弥生の痴態しか目
に入らなくなっている舞はそんな恥ずかしい姿を祥子がまじまじと見ているとはまったく気がつか
ない。祥子もその状態の舞を見て我慢の限界が自分のも含めて近づいている事を悟った。
「ほら…ぐちょぐちょに濡れた部分を触って…すごく気持ちいいよ…指で開いて…そう…いい気持
ちでしょ…駄目よ、目を開いて自分の嫌らしい姿を見ながら弄るのよ…もっともっといやらしいエ
ッチな気持ちになっていく…ものすごく感じる…もっと欲しくなる…」
祥子は両手を弥生の肩に添えて支え、弥生の両手が滾っている部分を充分に弄れるようにして
やる。左手の人差し指と中指で肉襞を開き、右手の親指がクリトリスを刺激し、他の指が出たり
入ったりしている。くちゅくちゅくちゅくちゅと粘り気のある肉が擦れて嫌らしい音をたてる。
「すごく気持ちいいけどまだ物足りない…もっと強い刺激が欲しくなる…もっと気持ちよくなりたい
…指をどけて…触っていたところを見るのよ…鏡に映った自分自身を見るのよ…」
祥子は性欲に憑かれ夢中で自慰をしている舞へ自分の携帯を投げた。手ごろに投げられるのも
が他になかったらだ。携帯がぶつかって我に返り赤面する舞に、弥生のあそこを指で指し、舌を
出して舐め上げる仕草をする。
「今からものすごい快感がくるわよ…期待でドキドキする…早く欲しくて欲しくてたまらなくなる…
さぁ…催促しないとしてもらえないかもしれないわよ…我慢できない…欲しい欲しい欲しい欲しい
…欲しくて欲しくてもう我慢できない…さぁ…声に出して催促するわよ…そうすればしてもらったと
きより気持ちよくなれるわ…」
弥生はもう呼吸困難になるのではと思えるほど、呼吸が速くなり喘ぎ声も発狂になっている。そ
れを何とか押さえ声を絞り出そうとしているのがよくわかる。
「はぁっ…はぁっ…はやくぅっ…してぇっ…はやくぅ〜…はぁっ…」
心得ている舞は絶好のタイミングで大きく出した舌で洪水状態の割れ目を舐め上げる。全てを解
き放つ噴火にも似た激しく巨大な快感の爆発が弥生の体を突き抜け一気に昇天した。一旦火が
つくと押し込めていたものがパンドラの箱を開けたかの如く噴出し、止め処ともなく求め何度も何
度も絶頂を繰り返す。今までの体勢が崩れ、三人がベッドに寝転び互いの体を愛撫し愛撫される
体勢に、まるで生き物のように変化していく。舞も祥子もここまで弥生が淫乱になる可能性を秘
めていたとは意外だった。いくら押し殺していた欲望が大きくてもここまで乱れた被験者は過去例
がなかった。そのうち祥子は体力の限界で昇天とともに身動きが出来なくなった。舞は意地でも
弥生より先にイってなるものかと、持てるテクニックの限りを尽くした。
「あっあっあっあっあっあっあっあっあっああああぁぁぁ…みやもり…せんせぃ…」
舞は自分の耳を疑い、同時にイッたのに余韻に浸るような心の余裕はなかった。
(みやもりぃ?…って言ったよね…間違いなく…)
失神したように動かなくなっていた祥子もそれを聞き咎めたらしく首をひねって眉を傾げ舞を見つ
める。当の弥生は完全に失神していた。

舞と祥子は昇天したまま眠りについてしまった弥生をそのままにしてシャワールームに行った。
祥子が入り口でいきなり止まり、わき見をしていた舞は思い切り祥子の背中に激突した。
「いったぁ〜い…何よ…」
憤慨していた舞の言葉がとまる。祥子が目を細め唇の端だけが上へ引きつり意味ありげに前を
見ている。二人が見つけたのは淑女協定を破って、紗里奈を独り占めした花梨だった。照れ笑い
をする花梨とその間で訳がわからずキョロキョロする紗里奈。
「いやまぁ〜色々あってさ…」
「ふ〜〜ん、色々ねぇ…まぁ、後でじっくり聞かせてもらおうじゃありませんか、ねぇ?」
嫌味たっぷりな顔つきで祥子が舞を振り返る。紗里奈は催眠でエッチな事をしているのは知って
いるが、それは自分だけのことと思っていた。まさか尊敬する三人の先輩が高校生とは思えない
行動力と変態性をもって催眠洗脳を大規模にやっているとは思っていない。三人もそれは承知し
ていたので、紗里奈の前で仲たがいはご法度との共通の認識があった。そのまま無言で別れて
各自ブースに入りシャワーを浴びる。

紗里奈と別れ花梨の部屋に入った三人は花梨の言い訳じみた説明をニヤニヤしながら聞いた
二人は確信犯的に恩着せがましい声色で言う。
「そう言う理由なら私たちがその間に弥生に手を出したとしても文句は言えないわよねぇ?」
「ええ、まぁ…って、弥生、やったの?」
「言えた立場じゃないでしょ?それよりね…」
舞と祥子は弥生があげた最後の絶叫について語った。ちょっとしたスキャンダルをすっぱ抜いた
気分で盛り上がる。品行方正な女学生のあるべき姿を勝手に解釈して自己満足に陶酔している
弥生と、その女生徒を指導する立場にいる先生の一人と同性愛発覚。この古風な学校にあって
は前代未聞の大事件になるだろう。仲を詮索する姦しい喋り声が永遠に続くかと思われた頃、三
人の頭の中に共通の疑問点が浮かんできた。どうやったら宮森と弥生はそう言う仲になれたの
か、という点だった。それほどの仲なら全寮制の学校で噂がたたない筈がない。しかし三人が知
る限り噂も聞いたことがなかった。だいたいから生徒会室に入り浸り、体育会系クラブとはまった
くと言っていいほど縁のない弥生と、担当する学年も違い、しかも主な担当教科は体育の教員と
ではそんな仲が構築されるような接点も普通は考えられない。相手が体操部の誰かと言うならま
だわからないでもない。先生が教え子に手を出すのか、と言う根本の疑問を無理やり無視したと
しても、宮森にとって思い入れもない生徒をレズに引きずり込む動機が思い浮かばないのだ。
「私たちとおんなじだったりして…」
結論の出そうのない事をぐるぐる考えるのが苦手な祥子がふざけた口調で言う。
「催眠術?まぁ、まったくの無知ではないとは思うけどね」
花梨は宮森を誘導した際、宮森自身の口から出た彼女の知識に思いをめぐらしていた。
「それにしたって十分な接点がなければ無理でしょ?」
舞は催眠に関しては他の二人に劣る。その二人が催眠にとって大事な点を考えていないような
ので言ったが、どうやら祥子も花梨も結論を探しているふうではなさそうだ。
「あ〜じゃぁ、あれよ、例のペンダント」
祥子は何の気なしに言ったのだが、ピンと来る物があって花梨は笑えなかった。
「普通では接触が少ない二人を結びつけるとしたら、何か普通じゃないものが介在している……
ペンダント…」
自分で言った言葉が頭の中で木霊している。あの引き込まれるようなペンダントなら可能かもし
れない。
「ちょっと〜宮森先生が弥生を調教したっての?」
ペンダントの事を最初に言及したのは自分だと言う認識も充分ではないまま、あまりのバカバカ
しさに呆れる祥子がさらに続けて、
「人気ナンバーワンの美人教師が教え子の一人をレズ調教?レズだとはわかってたけど、生徒
に手ぇ出すぅ?それもそんな怪しい物を使って。なんかのきっかけで恋愛関係になったと言う方
がまだ納得いくと思うけど」
「じゃぁさ、一つ仮定。先生に恋愛感情がないとしたら?私たちと同じような面白半分でやってい
るとか…」
実際ペンダントに危うい目にあわされかかっている花梨はあくまでこだわる。
「ちょっと待ってよ…相手は大人の女性よ?女子高校生を相手に遊んでいるって言うの?ふ〜〜
ん…じゃぁ〜そうなると相手は弥生だけじゃないかもね」
「……その可能性は…あるかも…」
祥子は嫌味半分で言ったのだが、花梨の反応は期待したものではなかった。花梨は祥子の指摘
である一点に思い立った、誘導中の宮森の変な行動だった。相談室のときはまるで誘導するよう
な口調で勝手に話し掛けてきた。次はただ渡せばいいのに、かざすようにぶら下げたのだ。
「じゃ何よ、私たちまでその毒牙に掛けようっての?」
ますますドライブが掛かる花梨の理論について行けないという感じで祥子が答える。
「体操部にまだ手をつけていなかったら私たちの催眠術で手伝わせようとしていたのかもしれな
いし、違うとしたらただ単にレズ調教コレクションの追加ってことでも説明はつくわよ」
呆れて物が言えない。そんな屁理屈を『説明がつく』と言うのだ。祥子の顔はまさにそんな感じだ
った。さっきから黙っていた舞が突然跳ねるように振り向く言う。
「二度もそう言うことがあったということは…かかっていない…演技?…」
舞は花梨と祥子の会話を頭の中で反芻しているうちに急に危惧の根源が見えてきたような気が
して思わず口走った。
「あるかもよ…」
催眠をかけている当事者の花梨は真面目な顔で呟く。
「あのねー、演技で生徒の前であんな恥ずかしいことが出来る人がいる?相談室でも、体育館で
も見たでしょ?先生の裸と嫌らしい行動を」
付き合いを考え直した方がいいかもと思い始めた祥子が言う。
「わかっているわよそんなこと。普通は考えられないけど、可能性はゼロではないわよ」
「もし花梨の推測が正しいとすれば、先生のやっていることは単なる趣味じゃないわよ…何かもっ
と…よくわからないけど…」
舞が恐ろしそうに言う。真性のレズである舞は女性を信じたい気持ちのほうが強い。むしろ見え
てしまった可能性に戸惑っているぐらいだ。
「とにかくもう一度先生にかけて見る。それでハッキリさせるわ。もっとも演技でしかも趣味以外の
動機があるとすれば付き合ってくれるかどうかはわからないけどね」

「宮森せんせ」
次の日の放課後、体育館にいく途中の宮森を花梨が呼び止めた。
「ん?なに?」

“パチンッ!”

宮森の目の前で指を鳴らす。下手に喋ってこっちの疑いがばれてしまっては元も子もない。演技
だとしてもそれをやってもらわなければ、いきなり手詰まりになってしまう。付き合ってくれるかど
うかは掛けだった。宮森にこっちが気づいているかもしれないと言う疑いを持たせたら駄目なの
だ。目の前で指を鳴らすというのは非常にオーソドックスだが分かりやすい。導入のキーワード
になる物は部員のとは別の物を用意しておく方がいいだろうということでトレーニング中に埋め込
んでおいた物だった。目の前で指を鳴らされた宮森の目は一瞬で焦点を失い、まぶたを閉じると
脱力し両手に抱えてた書類を放り出し花梨に覆い被さるように倒れこんでくる。本当に演技か、
疑わしいほどの自然さだ。だがまだ分からない。今までの宮森の行動が演技だとすると相当催
眠術を熟知していると見ていい。そのまま体育館に入り、誘導に使っていたブリーフィングルーム
に入る。黙って誘導される宮森の雰囲気は催眠状態に陥ったとき独特のものだ。宮森が催眠状
態になっていると分かったのは、既に活動準備をしていた部員にも分かるようだ。部員はみな唖
然と宮森と花梨のほうを黙って見守っている。ブリーフィングルームに入り宮森を椅子に座らせる。
ドアの外側ではかすかに舞と祥子の声が聞こえる。打ち合わせ通り部員たちを催眠誘導し始め
ている。手早く部屋の照明を落とし、舞台づくりを済ませ、宮森に深化暗示を施していく。演技だ
としたら完璧すぎる。弛緩しきり深い催眠状態に陥っているとしか見えない宮森を見て、花梨は
自分の疑いに確信がもてなくなった。今日も例のネックレスはつけているらしく鎖の部分が見える。
石はジャージに隠れて見えない。ネックレスと言えば宮森のピアスも気になる。相談室でピアス
の事を聞かれた宮森がびくついたように見えた事を思い出した。何かある。確証などない。直感
だった。これまでのことでペンダントはかなりヤバそうだと言う事はわかっている。主導権を握る
にはこいつを外させる必要があるだろう。さらにあの不自然極まりないピアスもだ。この二つを自
然に外させる状況を作らなければならない。深化もだいぶ進みかなりの深さに達したであろうこと
が予想された。演技でないとすれば相応の反応が出ている。たとえこれが演技だとしても、ここま
でやるなら、こちらの疑いには気づいていない。追い詰められるまでは付き合うだろう。
「先生が体操の選手だったときはいつですか?」
「…高校から大学のとき…」
「一番辛かったときはいつですか?」
「…事故にあったこと…」
「練習がきついこともありました?」
「それは…ないです…」
「怖い先生とか、嫌な先生とかはいました?」
「…高校の…時の…先生が怖かった…」
「先生は今24ですよね…24から一つづつ数を逆に数えていくと一つ数える度とに若返っていき
ます」
「…24…23…22…21…20…」
「今は大学生時代に戻っています…さぁもっと若返りますよ…」
「19…18…17…」
「はい、高校生ですね…今は練習中です…怖い先生がいるでしょう」
「…はい…」
急に怯えるような顔つきになって声も小さくなる。
「あ、あなたの方を指差して立てと言ってますよ…さぁ、のろのろしていると怒られそう…さぁ、早く
立ちましょう」
怯えているとしか思えないような縮こまった動きで立ち上がる宮森。
「先生が怒っているのはあなたのアクセサリーですよ…練習だってのにピアスにネックレスなんて
…早く外せと言っていますよ…」
心持ち宮森の反応が鈍い気がする。中々手が動かない。
「ほら早く外さないと先生に怒鳴られちゃいますよ…」
まだ動かない。いよいよ花梨がおかしいと思い始めた頃やっと動き出した。宮森の両手はまずネ
ックレスへ伸びる。鎖を外してジャージから石が出ると、花梨が予想したように不自然な掲げ方を
しているようにも見える。それを見た瞬間にまたあの感覚が花梨を襲う。予想通りとはいえ、素直
に喜べない。花梨は気力を総動員して石の部分を掴んで受け取り、さらに続ける。
「さぁ、ネックレスは大事に持っていてあげますからね…大丈夫…私が持っていれば安心です…」
石を握り視界から消すことで、心の準備をしていなければ効し難かった圧力が去っていくような
感じがする。やはりまともではない。
さぁ、早くピアスを取らないと今度こそ先生が怒鳴りますよ…あ〜怖い怖い、早くしないと…」
恐々なのか渋々なのかよくわからない動作で宮森はピアスを外しにかかる。今日のも相談室の
ときと同じ不恰好なものだ。
「アクセサリーをとったら急に体が軽くなった感じがしてすごく気持ちよくなる…後ろの椅子に座っ
てくつろぐとすごくリラックスした感じでいい気持ちです…今まで何をやっていたのかまるで気に
ならない…景色も真っ白になって、ふかぁ〜く沈んでいきます…どんどん深く眠っていきます…す
ごく気持ちいい…」
花梨はそっと手をあてて立ち上がったままだった宮森がスムーズに腰を降ろせるように誘導して
やる。宮森の後ろへ回ると両手を宮森の両肩に静かに置く。
「これからは私が肩に手を置いたときだけしか声が聞こえません。触らずに話されてもまったく気
になりませんし、まるで聞こえません」
花梨は両手を外してさっき受け取ったネックレスペンダントを宮森の前に掲げる。
「先生…演技なんでしょ?…かかっている振りなんでしょ?」
ごく小さな反応だったが、確かに宮森の体が一瞬強張った。
「今びくっとした…もういいよ…アクセサリーの暗示に反応悪かったもんね…何の秘密がある
の?」
悪あがきのように反応を示さない。
「最後のを除けばすごくうまいですよ、先生の演技…でも…どうして?…からかって面白い?」
花梨は泣きそうな声で言う。涙が止まらないのか鼻まで啜る。花梨としては自分の得意分野のこ
とで騙されからかわれたのだから泣きたくなるのも無理はない。ここまで来てやっと宮森の頭が
動いた。
「…ごめんなさいね…からか…う!」
言葉を失った宮森の目の前にペンダントの石が光っていた。
「いやッ!」
「何でそんなに避けるの?吸い込まれるんでしょ?」
花梨はまったく泣いていなかった。これこそ演技だった。宮森は飛び上がるのではと思えるような
勢いで上がりかかった頭を動かし、石の光から目をそらそうとする。過去の花梨における事例か
らちょっと見たぐらいではそれほどの即効性は期待できないと花梨は踏んでいたが、室内の環境
が幸いしたようだ。催眠誘導と言うことで部屋の電気は暗く落とし、ここでの部員の誘導中に何度
か使った蝋燭の残りに点燈していたのだ。蝋燭は直径10cmぐらいの太い暗色系のもので、火
のついている芯の周り部分は蝋燭本体の深いところまで溶けている。溶けていない外周部がカ
バーになるような感じで光りを減殺し光りをほとんど拡散させていない。ちょうど上に向いたスポ
ットライトのような感じで天井を照らし、電灯の消えた部屋をほのかに照らす絶好の光源になって
いた。さらにそう言う光り方のほうが直接被術者の視界に入らないので集中を妨げる原因にもな
りにくい。宮森が演技かもしれないと言う疑惑の上では過剰なほど凝っていると言えるが、その
疑惑を悟られないようにするための舞台演出でもあったのだ。上方向を照らしていた光はペンダ
ントの石に反射拡散され、蝋燭が頼り無い光しか回りに漏らしていない状況では暗い部屋の中
で唯一の光点とも言えるほどの煌きを放っていたのだ。

予想もしていなかった状況の転換と言う虚を突かれた事が動揺を招く。動揺は心の防備を脆くし
ていた。ほとんど真っ暗と言ってもよい部屋の中で強く煌くペンダント。神聖ならざる光は宮森の
心を焼き、彼女の意識を吸い込んでいく。宮森は仰け反った姿勢のまま固まり石を凝視している。
これがこの石の効果なのか。石を動かすと無言でそれを追う宮森。花梨は石を見ないように気を
つけているがどうしても目に入ってくる。だが以前感じたような吸い込まれる感覚がないし、当然
宮森のような反応も起こる気配すらない。花梨が訳がわからなくなって混乱しているとドアが軽く
ノックされた。舞か祥子だろう。
「いいよ」
「どんな感じ?こっちは…」
入ってきたのは舞だったが言葉が途中で止まった。見ると舞もペンダントを凝視して止まってい
る。
「うっそ…マジ?舞?」
「……ん…」
ちょうど催眠状態での反応のように力が入っていないのにつっけんどんな口調と同じ感じだが、
この石を見詰めただけでその状態に瞬間的になったと言うのか。
「…ちょっとこっちに来て…」
花梨は進行している事態の全容が見えず恐々と舞に話し掛ける。この状態では突拍子もない事
を言ってもそれに従うようになってしまっているのか。催眠なら何の脈略もなく受け入れがたい事
を言えば拒否反応が出るが…。
「…脱ぎなさい…服を全部…」
舞が裸になるのは何のテストにもならないかもしれない。しかし必然性のない状況なら嫌がるの
が普通だ。だがまったく表情を変えず無表情のまま服を脱ぎ出す舞。横を見ると宮森も脱ぎ始め
ている。花梨は慌てて宮森を止める。宮森はジャージの上を脱いだところで止まったが、舞はど
んどん脱いでく。半眼になって呆けた顔つきの舞は何の抵抗も示さずにブラウスのボタンを淡々
と外していく。まるで自分の部屋で着替えているような無防備さである。全身に鳥肌が立つ思い
で花梨は見詰める。いくら舞がスケベで淫乱と言っても何かしら理由がなければ服を脱ぐことは
しないだろう。だが今回はただ脱げといっただけで従っている。催眠状態に似ているが催眠状態
ではありえない反応だ。舞はスカートを落とすとブラウスも床に落とした。
「舞、もういいから服を持って部屋の外に出ていて」
部屋の外、つまり体育館内には誰もいない。祥子は部員と別のブリーフィングルームにいるはず
だからだ。舞をそばにおいて宮森に対する質問にいちいち反応されては面倒だ。舞は落とした服
をかき集めると、無言のままフラフラとドアの外へ出て行く。後に従った花梨は舞が出たあとドア
の鍵をかけ、再びペンダントを宮森の目の前に掲げる。
「先生、このペンダントはなんですか?」
「…だっ…こんの…石」
ワザと普通の口調で聞いてみる。催眠誘導の独特の口調はあえて使わない。これでも反応は出
るのかと言う試しでもあった。予想に反してと言うか案の定と言うか、宮森は口調こそ被術者の
それであるが至って的確な反応を示す。
「だっこんって?」
「…たましいを…うばう…石…」
またぞろ変な名前が出てきたと。前回が『誠見の石』で今度は『奪魂の石』ときた。なんだかネコ
型ロボットのポケットを覗いている気分になってきた。しかし今度ばかりは一笑に伏せない雰囲
気がある。前回と答えが違うのは前回が演技でのウソで、今回は石の影響下で本当の事を喋っ
ていると言うことか。
「どういうこと?」
「…持っている人以外が…見詰めると持っている人の…言いなりになる…長く見ていれば…より
…完全な…言いなりに…なる…」
「完全に言いなりにするには時間がかかるのね?どのくらい掛かるの?」
「じゅ…っぷん…ぐらい…」
宮森が見詰め始めてから、もう少しで十分と言うところだ。花梨が過去二回正気に戻れたのも、
見詰めてからそれほど時間が立つ前だったからだろうか。手がいい加減痺れて来たので仕舞お
うと思っていたが手を持ち替えて引き続き宮森の目の前にたらし続ける。あと少しかざし続けれ
ば完全に支配できるのだろうか。わからない事だらけで思考が集中できない。色々聞いてみたい
がもう一つ気になるものがあった。
「ではあのピアスは何?あれも何か特別なものなの?」
「…ちゅうわき」
「え?」
「…催眠…薬などの…洗脳効果を…中和する…」
「一体そんなものをどこで手に入れたの?」
「組織」
(組織?)
「きゃぁ!!」
花梨が引き続き質問をしようとした時ドアの外で悲鳴が聞こえた。思わず舌打ちをして自分の迂
闊さを呪う。下着姿になった舞が正気に戻ったようだ。外に出たあと着衣するように指示するのを
忘れていた。普通ならこんな不手際はしないのに。別のブリーフィングルームから出てきたのだ
ろう、祥子が加わり騒ぎが大きくなる気配がした。部員は祥子により催眠状態に導かれているだ
ろうが、このまま続けばどうなるかはわかる。こう言う予想外の事態に対しての祥子のフォローは
いささか物足りないこともわかっていた。花梨は自分の不始末に内心舌打ちをしながら事態の収
拾に乗り出す。
「先生はこれから深く眠ります。組織のこともペンダントのこともピアスのことも全部忘れます」
「…は…い」
「これは何?」
ピアスを手のひらに載せ見せる。さっきは中和器と淀みなく答えたが。
「…わからない…」
もうこの際、演技でもどうでもよかった。判断を下すには材料が少なすぎる。表の騒ぎを静めてか
ら再開すればいい。
「私が思い出すように言うまで全部忘れる」
「はい…」
「寝なさい」
「…」
呆気ないぐらいに椅子から滑り落ちてカーペットの上で熟睡してしまったようだ。暫し呆然とする
花梨。こんな簡単に人を操れるなら催眠術なんかいらない。もちろん演技の可能性もあったが、
どうも今回は様子が違うようだ。部屋の外では下着姿で泣いている舞に祥子が掛かりっきりにな
っている。おかげで花梨の危惧した通り部員たちは隣のブリーフィングルームで催眠状態のまま
放って置かれているが、騒ぎの影響で覚めかかっているのもいるようだ。花梨は全員を再深化さ
せると体育館フロアの方へ導き宮森が見えた時点で覚醒するように暗示した。この際ペンダント
を使って部員を操り、帰してしまおうかとも考えたがペンダントの能力や効果などわからないが多
すぎる。あえて無理をする必要はない。花梨は宮森を抱き起こし指導を再開するように指示を与
えた。とにかく仕切り直しだ。三人は自分たち本来の部室に戻ることにした。

「舞、どうして服が脱げていたか覚えている?」
花梨が聞く。舞は服を着て体育館から来る過程で気を取り直し、もう泣いていなかった。
「花梨を呼びに部屋に入ったところまでは覚えているんだけど…なんか光ったような…あと覚え
ていない…気がついたら外で…」
「あれが先生が持っていたペンダントの効果よ」
「え?!」
二人が同時に聞き返す。
「先生から借りてきたけど、見せるとまたさっきみたいになっちゃうからしまっとくね」
「どういうこと?」
花梨とまったく同じ質問をする祥子。
「奪魂の石、魂を奪う石とか言って使用者以外で見詰めている人間を言いなりにするんだって。
ネーミングはともかく効果は間違いなさそうね。これで分かったでしょ?私が先生の上で脱いだ
のはこれのせいだったって」
得意げに石を仕舞ってあるスカートのポケットを叩く花梨。
「あとあの変なピアスも催眠や薬による洗脳を防止するための効果があるんだってさ。よくわか
んないけど、あのピアスをあんたらどっちかがつけてやってみればその効果はわかるわね」
花梨は別のポケットからピアスを取り出すと、舞に消毒などの処理をさせ装着させる。祥子はあ
の石を未体験なのでモルモット役を買って出た。

「どんな感じ?」
ピアスをつけ終わった舞に花梨が尋ねる。
「別に…なんかかすかに振動していたみたいだけど…今は何ともないよ」
「じゃ、実験開始」
例の石をポケットから出して舞と祥子の前にかざす。舞には何も反応が出ないが、祥子にはすぐ
に反応が出た。一瞬目を見開いたかと思うと息を吸い込み、吐気とともに脱力して顔から肩にか
けて弛緩したような感じになる。花梨は舞に目で合図をして祥子の変貌振りを伝える。舞は祥子
の目の前を手で遮ったりしてみたがまったく無反応。舞らしく祥子の胸も揉んで見るがやはりまっ
たく無反応だった。舞は大袈裟に驚いた表情をする。
「脱ぎなさい…裸になりたい…ほら我慢できない…」
舞が催眠誘導のときのような口調で言う。祥子はさっきの舞のように淡々と脱衣していく。あまり
のことに驚く舞は花梨を連れてちょっと離れたところに来てから小声で尋ねる。
「ちょっと、あんなに簡単なの?」
「そうよ、しかも普通の口調で言っても大丈夫みたい。舞は何ともないんでしょ?そのピアスのお
かげと言うところね」
「すごいね、これ。全校集会で使ってみたいな…」
舞が心底感心したように自分の耳についているピアスをいじりながら言う。ペンダントの効果に距
離の制限があるかどうかは分からないが、問題がなければさぞかし凄まじい光景になるだろう。
「もういいよね?」
「ウン、でももう一個だけ実験させて。そしたら5すぐ終えるから」
なにが実験だと思い花梨は思わず苦笑しながらも舞に任せる。舞がやる内容といえばだいたい
想像はつくが、花梨だって分からないことばかりなので興味はある。二人が元の位置に戻る頃に
はもう既に祥子は全裸状態で突っ立っていた。床には服が無造作に散乱している。舞は祥子を
椅子に座らせると、再びかざされた奪魂の石を見詰め始めた祥子の耳に囁く。
「股を開いて。開くと途端にものすごくエッチな気持ちになるよ。もうエッチの真っ最中のような感
じ」
祥子は言われるとすぐに股を開く。大きく息を吸い込むと体をくねらせ軽くのけぞり、悩ましい声
をあげ始める。舞と花梨は祥子のあそこが刺激もしていないのに濡れ始めているのを見た。状
況とか経験に関係なく生理的な現象までコントロールできると言う事だ。我慢できなくなったのか
祥子はオナニーを始めてしまう。指示してから一分も経っていないのにくちゅくちゅ嫌らしい音を
たて、自分の世界に没入していく祥子。さすがの舞と花梨も声が出ない。花梨は石を仕舞いこの
状態からどのくらいで正気に戻るのか見てみることにした。舞はピアスを外し消毒するとケースに
入れる。

石を仕舞ってから三分経過した。依然祥子は激しさを増してオナニーを続けている。

「あっあっあっああああ…ああ…ああ…あ………ウソ…いやぁ…なんでぇ!」
五分経過してイキそうになっていた祥子は正気に戻って足を閉じると床に縮こまった。体の滾り
などは一気に飛んだのか、縮こまりながらガタガタ震えている。普段からやっている事を考えれ
ば、結果的にはたいした違いはないが本人にとってはショックなことだろう。意思とはまったく関
係なく操ってしまうところが暗示に若干の強制力があるとは言え納得済みで進行する催眠との大
きな違いだった。

(続く)


戻る