淫楽の宴

第二章

作:ワイワイ さん

花梨は部室に戻りながらこの騒ぎの原因らしい体操部に対する洗脳セッションを思い返す。それ
は、ただ単に欲望の赴くまま、手当たり次第に女生徒を催眠術で篭絡し続ける花梨ら三人が専
用部室と言う密室の獲得を実現するため、約二ヶ月前に始めた体操部に対する彼女らにとって
初めての計画的催眠洗脳だった。

「体操部にしよッ」
「はぁ?」
部室に入ってくるなり花梨が言う。舞と祥子の二人は花梨が何の事を言っているのか分からな
い。
「だから、部室乗っ取り計画の標的って事」
彼女らはここ数日間標的にすべきクラブを物色していた。花梨が最初こだわっていた部室棟の一
室を乗っ取ると言うのは頓挫していた。乗っ取り計画開始直後、部活動時間中にペットが四人い
る手芸部に調査に行ったのだが、そのうるささに驚いた。考えてみれば当然なことだった。部室
棟と言うのは校舎とさほど構造の違う建物ではない。ましてや部活動時間中は、ほとんど全校生
徒が部室棟に移ってくるのだ。そこで新しく作った物色条件は防音設備の整った部室を持ち、中
から施錠しても不自然と思われないクラブの部室、になっていた。防音壁に関係があると言えば
音楽室を使っているオーケストラクラブ、作法教室を使っている茶道、華道、舞踊部、ジャーナリ
ズムクラブの放送室、あとは新設体育館の奥にある体操競技専用施設を部室として占有してい
る体操部と言うことになる。音楽室は誰でも思いつくが、新館校舎の最上階にあるため周りから
目に付きやすい。防音壁に囲まれた練習ブースもあるが狭いし、乗っ取り勢力が分散させられる
のはあまり望ましくない。作法教室は作法の授業のときに使われるが、放課後は前述の三部が
使用する。教室の広さは通常教室の四つ分もあるので広さとしては充分すぎるぐらい。ただし集
まった後の人数が三十人を越える上、同じ作法教室を共用しているとは言え、別々のクラブであ
る以上制御に困難が予想された。ジャーナリズムクラブの放送室の奥には本格的な放送スタジ
オがあった。防音に関しては完璧。だが放送設備を使用するため、教員の出入りもよくある。結
局、最後に残ったのが体操部と言うわけだった。体操部と言うのは新体操、器械体操、などの体
操関係が全て集まって一つになったクラブだった。そのため単体のクラブとしては所帯も大きく体
育館の常に施錠されている部分を専用に使用できるだけあって設備も部室の中では一番豪華だ
った。

「それは考えたけどね」
舞が乗る気でないという態度で言う。
「何か口実があるの?体操部につけこむ口実がさ」
舞も祥子も体操部はもちろん色々な可能性を探していたが、物理的条件より遥かに厳しいのが
どういう口実を設け、効率のよい方法で誘導を行うかと言うことだった。花梨がオカルト部の上級
生から毒牙を広げたときのように部員に広げていく方法では時間が掛かりすぎる。あの時は目
的とする人数目標がなかったので、できる範囲でよかった。しかも目的意識を失ったオカルト部
員には快楽を与えて貰える代償行為として自発的に行動させるように仕向けるのは比較的簡単
だ。しかし自分の時間をわざわざ割いて参加しているという能動的要素が強いのがクラブ活動と
いうもの。体操部に限って言ってもオカルト同好会と違ってみんな体操に真剣だ。快楽に溺れる
人間もいるだろうが、やり方として確実と言う言葉からは程遠い。乗っ取るには全部員数二十四
人にもう一人、顧問も含めて二十五人を支配下におかなければならないのだ。一人一人広げて
行っている間には、どうしてもばらつきが出てしまうだろう。それを避けるには顧問を先に落として
催眠洗脳を正式な活動の一部として認めさせる方向へ持っていかなければならない。顧問を術
中に落とすためにはどうすればいいか、この口実作りが一番大きい問題だった。
「任せなさい。いいネタが入ったのよ」
寿司屋のような台詞を言いながら不敵な笑みを浮かべ二人に手招きをした。

体操部の顧問は宮森華菜恵という体育の教諭が担当している。教員の道を選ぶ前は体操でオリ
ンピックをも狙えるほどの実力者だったらしいが事故で断念せざるを得なかったと言う過去の持
ち主だ。持ち前の美貌に成熟した大人の体に引き締まった筋肉美が合わさり彫像のような冒し
難い美しさを持っていた。宮森は花梨が入学するより二ヶ月前に赴任してきた。体操部の実力向
上がその理由であった。宮森が赴任して来る前の体操部の成績は平均を抜け出ることが出来な
かった。それを宮森は平均を越えるレベルまで持ってきた。しかし全国レベルの壁は厚く、宮森
に担当が代わってから一年以上経つが大会での成績はトップ常連とはなっていない。花梨が掴
んだネタと言うのは体操部の部員のメンタル面が弱いという情報だった。メンタルと言えば催眠
術。絶好の口実だ。

「宮森せぇ〜んせ!」
これからやろうとすることに興奮のあまり声が上擦る。意識し過ぎだと自分を落ち着けるも、おど
けた呼びかけが空回りしているようだ。
「あら、藤崎さん」
意外だった。表向きの活動としている催眠実演会などで多少名は売れているとは自認していた
が、今の今まで直接口を利いた事のない相手だった。花梨の苗字を知っていたのはまだしも、淀
みなく言われたのには嬉しさ以外のものが過ぎった気がした。
「私の事を知っていてくれたなんて感激です」
半分本気で花梨は言う。
「それは当然よ、藤崎さんは有名人ですものね」
「え?何で?」
「ほら催眠術の実演会は結構評判いいでしょ?私も見たことあるわよ。あれを見れば授業を受け
持ったことがなくても印象には残るわよ」
心の中に舞う紙ふぶきの中、万歳三唱をした。まさか向こうから催眠術のネタを振ってくれるとは。
遠慮なく用意してくれた流れに乗る。
「その催眠術で先生のお役に立ちたいと思いまして来たんですけど」
「役に立つって、どういうこと?」
「先生の体操部がメンタル面が弱くて好成績が残せないって噂を聞いたので、もし私の催眠術が
役に立てばいいかなぁと…」
「う〜ん、噂になっているとは正直ショックね…確かにそうなんだけどね」
宮森の声のトーンが低くなる。接近目的が純粋に手助けだけではない事を見抜かれたか。慌て
ず、顔色声色を変えず、大急ぎで次の手を打つ花梨。
「でも、ほらメンタルのトレーニングと言うとイメージトレーニングが一般的ですけど催眠術を併用
すれば効果覿面ですよ」
「あなたのすごさは目の当たりにしているからいいとしても、正直どうなのかしらね?」
「心配…ですか…?」
「部員のみんなにそれで紹介するのはハッキリ言って気がすすまないわ…」
「じゃぁ、先生がまず試してみるってのはどうでしょ?それで納得がいけば安心して任せてもらえ
るかと」
一度掴んだチャンスを逃してなるかと、花梨は手を変え、品を変え駆け引きを引き伸ばす。しかし
宮森が意図的に翻弄しているかとも思える話の流れ方に、何度か花梨は引っかかるものを感じ
た。まるで宮森は花梨を諦めさせず、調子にのせないようにワザとやっているかのように話をは
ぐらかす。言いようのない心地悪さが漂うが宮森の真剣な顔つきから考え過ぎたと思う思いも同
時に出てくるのだった。自分自身のやましさが、こういう勘繰りを生んでいるのかもしれない。宮
森は真剣に部員の事を思っているのだ。催眠術によってコンセントレーションを高められるものな
らそうしたい。しかし、手塩にかけて育てた部員を仕上げにおいて他人の手に渡すのも気が引け
る。いくらうまいと言っても所詮は素人。何かあったら台無しなのだ。宮森の評判に違わぬ親身
の指導の賜物と言うべき真摯な態度が言葉の端々に見え、花梨はものすごい罪悪を感じる。こ
んなすばらしい先生とその部員をたらしこんでまで自分は目的を達成したいのか。部室を乗っ取
るだけでなく、真剣な部員やこの目の前にいる献身的な先生を性欲の奴隷にするなど罰当たり
なんていう言葉では表現できないような悪事に感じる。そう思い始めると自分がとんでもなく惨め
に感じてきた。これ以上やったらボロが出る。もうやめて目標を変えようと花梨が思い始めた矢
先、宮森が折れた。
「わかったわ。相談室でしましょうか。場所はそれでいい?」
やめようと思っていた矢先だったので、拍子抜けしたと同時に何も考えずに同意してしまった。相
談室は生徒と先生が個別の相談事などを話す場所で、完全防音とまでは行かなくても隔離され
ているので怒鳴らない限り声が漏れることはない。悪くはないが職員室の真隣なので、やる内容
を考えるとちょっと気が引ける。
「じゃぁ、明日の放課後にもう一度来てくれる?用意しておくから」
「あ…はい…わかりました」
何の用意だろうと思いながらも、既にやる気が半分以上削がれている花梨であった。

部室に戻った花梨の気分は最悪だった。誘い出しに成功はしたものの、気付かされてしまった自
らの罪悪に今更ながら苛まされているのだ。
「あら?失敗?」
顔を見て舞が言う。
「いや、一応誘い出しには成功したんだけどさぁ…」
重い口を無理やり開いてこれまでのいきさつを語った。花梨は前後逆さまにした椅子にまたがり
背もたれに上半身を投げ出して終始うつむいた姿勢だ。
「まぁ〜た、花梨は深く考えすぎんのよ…」
呆れて祥子が言う。同時に舞に目配せをする。舞もそう思っているらしく、祥子の目配せの意味
するところがすぐにわかった。
「でもさぁー…あの真剣な態度を見ていないからそんなこと言えんだよ」
「エッチモードになればそんなこと忘れるくせにさ…」
祥子が意味ありげに言い、舞に目で合図をする。いきなり舞が花梨を後ろから抱く。そのまま胸
を揉みしだき、片手でスカートをたくし上げてエッチモードのスイッチ近辺をまさぐる。首筋から胸
にかけて舞の舌が這う。
「ぁああん!いやぁ…やめてぇよ…そんな気分じゃないんだからぁ…ああん…だめぇ…あ、あ、あ、
まぁい…いやぁあ…ダメだって…あはぁ…はぁ…ぃやぁ…」
的確で無駄のない動きで花梨の体を走る舞の手は花梨をどんどん快楽の世界へと追いやる。舞
のテクニックは相手の感情を選ばない。増してや既に何度もやっている相手ならなおさらである。
快感の波が十重二十重に花梨の体を走り、まともな抵抗も出来なくなり、いつしか声もほとんど
が喘ぎ声になり始めていた。それでもまだ、言葉だけは抵抗のそぶりを見せる。
「まだ言うの?もう濡れ始めているくせに」
快感に悶える花梨の体はほとんど抵抗がなくなり、祥子がブラウスのボタンを外してもまったく抵
抗しない。開いた部分から舞は手を侵入させより濃密な愛撫を始める。舞の別の手は花梨のパ
ンティの上から愛撫をしていたがすでに濡れ始めていることがはっきりわかる恥ずかしいシミも見
える。舞の指は花梨のパンティの上から中に侵入し快感に滾り始めた秘部にさらに刺激を加え
るべく動き始める。
「ひゃあん!あ、あ、あ、ああん、だめぇ…感じちゃうよ…気持ちよくなっちゃう…」
「いいのよ、そうしてるんだから…」
ブラの中に手を入れ乳房を揉みながら乳首は指でリズムを変えた愛撫を行い、たまに乳首をつ
まんだり、つめを立てて刺激したりどんどん花梨は昇らされて行く。祥子はパンティを完全にずり
下げ、足を開かせると、舞秘伝の絶技で花梨のあそこをしゃぶり出す。花梨もかなり攻められ舞
の絶技を覚えているが、好きこそ物の上手なれとは真理を突いているもので、祥子のエッチに対
する情熱を伴った舌の動きには数歩及ばないものがあった。快感に引きつる動き以外抵抗らし
い動きも見せない花梨をいいことに、舞はブラウスを脱がしブラを外し、本格的な愛撫に移ってい
く。花梨の顔を横に向かせ、半開きになった口に唇を重ね、舌で攻めまくる。花梨も口では色々
言っていても何度もやっている仲間同士であり、所詮好き物であることが花梨の心情を裏切り舌
が勝手に動いて舞の愛撫を受け入れてしまう。下は祥子が相変わらず激しい攻めを継続してい
る。
「さて…イキなさい」
祥子は一気に花梨のあそこを啜った。花梨は宣言通りに昇天した。意気消沈していてギャップが
大きかったせいか、久しぶりに激しいイキかたで頭の中が真っ白だった。まだ舞の愛撫は続けら
れている。
「宮森先生に愛撫されているんだよ、すごく気持ちいい…」
祥子が何気に花梨の耳に言葉を流し込む。
「さっき見た宮森先生の指が、ほら花梨の胸を揉んでいるよ…見てご覧…」
そんな訳はないと思いながらも、目を薄っすら開けて胸を見てしまう。舞の指のはず、と思ってい
たのだが、なんか違うように見える。
「すてきな指輪が光っているわ、美しい細い指、すごく嫌らしく動いている、ものすごく気持ちよく
なってきた…」
(ウソ…なんで…先生が…)
花梨の目に舞の指は映らなくなっていた。さっき見た綺麗な指が花梨の胸を揉み上げている。そ
う思うだけで、じわっと下のほうに熱いものが広がる。祥子は何度か花梨相手に催眠の練習をし
ている。中学の時から経験者であったが、技術的には花梨に及ばない。クラブの真っ当な活動
の一部として花梨が実験台になって何度か誘導されているのだ。そう言うこともあり下地は出来
ている。また祥子は花梨の宮森を思うあまりの動揺に目をつけ一度イカせて熱が冷めないうちな
ら暗示が溶け込んでいくだろうと踏んでいた。ダメなら花梨に内緒で埋めてある鍵言葉を使うま
で。そこまで考えていた。ここで花梨にやる気をなくされてはせっかくのチャンスをふいにしてしま
う。舞と祥子は特に打ち合わせもせずにそこまで意思の疎通が出来るほどに今回の計画には前
向きだったのだ。彼女らの場合、その目的は部員と宮森を味わうこと。部室の確保が大事なのは
わかっていたが、花梨ほどこだわりはないのだ。
「あん!…先生…いいよ…気持ちいいよ…ああん、あ、あ、あ、いいッ…ああぁ…して…せんせい
ぃ…」
舞が愛撫をさらに強くしていくと、自分の胸を呆けた目でみていた花梨のまぶたが閉じ、小声な
がら宮森を求める声が漏れ始めた。祥子は静かに満面の笑みを浮かべて舞を見る。してやった
と言う感じだ。舞の指が再び花梨のあそこへ到達し、あそこを開いて指が踊り出す。祥子は引っ
切り無しに宮森との擬似感覚暗示を流し込む。何度も何度も宮森の幻影に愛撫されたように思
わせ、イキそうになるところでイカせないという事を繰り返す。散々花梨を焦らした後、祥子は暗
示で、舞は愛撫で花梨を昇天させた。
「どう?本物の宮森先生としたくなったでしょ」
祥子が勝ち誇ったように言う。花梨は白旗を上げた。



次の日、相談室の前で待っていると宮森はすぐに来て鍵を開けて相談室に花梨を通した。今日
の宮森は薄紫色のスーツを身にまとっている。普段も隙のない出で立ちだが、スーツを着ると大
人っぽさ引き立ち美しさがより映える。花梨が入ると宮森は『使用中』の札を表に掲げて内側から
鍵をかけた。花梨は今日一回で到達すべき目標が高いことを自覚し、いくつかのヘルプアイテム
を持ってきていた。席に座ると花梨は何気ない動作やアイテムの取り出しなどの動作でごまかし
ながら、対面の位置関係をずらし宮森の側面に向かって座る位置に移動した。取り出したのは
弥生の催淫誘導の時にも使用した小型MDコンポに香炉だった。香炉はリラクゼーションを助け
るための香を炊く。はじめての相手によく使う。一般に市販されているものや怪しい系の香を
色々試してみて候補を上げ、化学クラブに手伝ってもらい調合した『花梨スペシャル1』と呼んで
いる物だ。ちなみにナンバリングは5まであって2〜5はおもに催淫系から媚薬系までとなってお
り、5が一番強力。催眠状態で淫乱化しなくても猥談しているだけで5では効果があったと祥子が
うれしそうに報告してきたことがあった。そんな思い出に心の中でにやりとしながら香を焚く。まも
なく煙はちょうど顔の高さあたりを中心に広がり始めた。

部屋の換気はしっかりとした空調が備わっている建物なので香りが外に漏れると言う事はない。
またこの香の煙の性質として、こう言う空調下でも吸い出されずに漂うように作られているのだ。
煙草の煙のように嫌煙家にとっては腹立つほど嫌味な高度で漂い、風に流されても拡散し難い
あの煙。あれこそが理想とする煙であり、それを出すのに結構苦労したものだった。プレーヤー
に挿入したMDには市販のリラクゼーション・ミュージックCDから選りすぐりを録音し、さらに完全
にリラックスした時の脳波を引き出しやすい波長の信号が可聴域外に仕込まれていると言うこれ
また手の込んだ物だった。化学クラブもそうだったが、このMDの製作に携わったジャーナリズム
クラブの人間も催眠によって閉じ込められていた性への欲求を開放されてから協力的な関係を
築いていた。ジャーナリズムクラブは報道を専門に研究しているクラブで、専門的なDTP設備や
放送室に併設されている本格的なスタジオや音響設備を占有して使用する権利が認められてい
る。知識と経験の裏付けにちゃんとした素材があれば花梨が望んでいたMDの作成など造作も
ないことだった。

香りが漂い、MDの音楽もゆったりと流れ、深呼吸によるリラックスを宮森に促しながら、相談室
のカーテンを音が出ない様にそっと閉める。ゆったりとしたソファに身を沈め、言われた通りに深
呼吸を繰り返す宮森を見ていると、昨日舞と祥子にやられた『リハビリ』が思い出され胸が焦がさ
れる思いがする。このまま襲ってしまいたい。何度この考えが頭を過っては振り払われたことだろ
う。妙なものに気がついた。宮森のピアスである。安っぽい小さな赤いイミテーション丸出しの石
がこれまたアンバランスに大きく安物丸判りの台座に収まっていてやたら不細工なのだ。なんだ
ってこんなもんを、と頭を傾げずにはいられない品である。アクセサリーを選ぶセンスがないと言
うにしては指輪もペンダントも悪くはない。なんでピアスだけと言うのが納得いかない。後でその
理由を聞いてみるのもいいだろう。ペンダントに使っている宝石は何だろうと改めて見てみる。適
度な大きさで上品にカットされた石は宮森の肌色を通している。つまり台座になるものはなく回り
の装飾部分が石を止めている。身を沈めた姿勢は胸元を開放させ谷間を強調している。その谷
間に石が光っているのだ。香の匂いとMDの音楽が花梨にも若干影響してきたのか、その谷間
だか石だか分からないが何か吸い込まれそうな感触を花梨に与える。このまま身を投げ出して
あの谷間に頭を埋めたい、と強く思うようになってしまった。
(う〜〜〜危ない、危ない。この危険は予測していなかったなぁ…)
リラックス状態になった宮森がこんなにもセクシーになるとは予想すらしていなかった。ミイラ取り
がミイラにならないように自身に喝を入れ本格的に誘導に移る。宮森はソファに深く身を沈め静
かにゆっくりと呼吸している。一見するともう既に催眠状態にいるかのようだ。ここまでリラックス
しているならわざわざ起こして儀式のような導入を行うのは却って逆効果かもしれない。色々試
してみた結果、まぶたの反応を見ても、観念運動の反応を見ても、もう既に類催眠状態であるこ
とは間違いなさそうだった。このまま深化してしまえば手間が省けていい。これほど催眠に対して
反応がいいとは、昨日の乗る気でない態度とは裏腹に催眠初体験と言う訳ではなさそうだ。
「宮森先生、催眠術にかかったのは初めてではないですね?」
「…はい…」
(やはりそうか)
「いつどこで体験したのですか?」
「…大学生の時…合宿で…」
「それは何のために?」
「メンタルトレーニング…」
(んによ、経験者なら説明させないでヨねぇ…)
「先生のピアスは面白いピアスですね…」
気のせいか一瞬びくっとしたような気がした。タブーなことを聞いてしまったか。どっと冷や汗が出
る。その後続けざまに反応が出ないのを見計らって、深化とリラックスの暗示を施す。何か訳が
あるのかもしれないが、今どうしても知りたいことじゃない。
(ペンダントの事はどうだろ?もしかしたらこれもまた…でもやってみないことには先に進まないし
…)
「ペンダント…先生のペンダントはすてきですね…何の石が入っているのですか?」
「…未来が見える…石…」
(はぁ?)
「…学生時代に…中東に行ったとき買った…ジプシーの誠見の石でできている…」
宮森に対する勝手な印象ではそんなもの過去の話とは言え買うような人間に見えなかったのだ
が、その辺りは普通の女性と大して変わりはないらしい。花梨も興味を惹かれずにはいられない。
いかにもありがちな話で九割九分ウソだろうとわかっていても覗きたくなる。
「その石を私に見せたい、見せたくてしょうがない、首から外して見せたい」
宮森はゆっくりとペンダントを首から外すと片手でぶら下げながら、花梨の目の前に石をたらした。
肌から離すとどう見てもただのガラスのようにしか見えない。確かに変な曲率があるのか向こう
の景色が素通りして見える訳ではない。だからと言って他に特徴があるわけでもない。
「吸い込まれるの…見ていると…」
愕然として再び吸い込まれそうになっていた自分に気が付いた。誘導の途中で他に気を囚われ
るとは今までにないことだ。どうも自分のペースがつかめない。年長者や先生相手はこれが初め
てという訳ではないのに。それほど宮森が自分の中で特別な存在になっていたのか。ペンダント
を仕舞わせ仕切り直す。深化とリラックスの暗示をさらに重ね、質問を続けているうちに予想外
の宮森像が出て来る。これだけ綺麗でセクシーながら男性経験がなくレズだと言うのだ。そう聞く
と昨日の今日でどうしようもなく溜まっていた花梨は宮森に調教してもらいたくなった。
「先生…先生の目の前に女の子がいますよ…先生のことが好きで好きでしょうがないんだけど…
女性同士で告白する事をためらっている女の子…思いっきり気持ちよくしてあげたい、抱きしめ
てあげたい、キスしてあげたい、そんな気持ちがどんどん強くなっていく…目を開けるとすぐに見
えますよ…はい目を開けて…」
宮森はゆっくりを目をあける。そこには女教師としても聖なる光はなかった。性的に興奮し、かわ
いい獲物をものにしようとする妖艶な光が花梨を捕らえる。宮森は花梨の方に寄って来ると肩を
抱き、
「大丈夫…気持ちよくしてあげる…」
ゆっくりと唇を重ねてきた。舌が侵入してきて花梨の舌を引っ張り出そうとする。花梨は今までに
感じたことがないくらい多量に熱いものが分泌されているのを感じていた。花梨の胸を服の上か
らゆっくり優しく愛撫してくる。それだけでイキそうになるほど強い快感が走っていくのを感じた。
胸を愛撫していた手がゆっくりと花梨のあそこに伸びる。びくんとくると軽くイッてしまった。これは
予想以上のテクニシャンだ。このままでは花梨のほうが飲み込まれてしまう。宮森を引き離すと
万が一のために予め用意しておいたメッセージを携帯のメールで送る。
「いいのよ…怖がらなくても…」
自分の暗示で変貌させたのに、薄っすらと微笑む宮森がとてつもなく不気味に感じる。あまりの
迫力に地ではないか、覚めているんじゃないかと思ってしまう。花梨は目を逸らさないようにあと
ずさる。ちょっと早すぎるのではと思えるタイミングでドアを決められたリズムでノックする音が聞
こえた。どうせドアのすぐそばで待機していたのだろう、隙あらばおこぼれにありつこうと思って。
この場合そのスケベさがありがたかった。花梨は後ろ手にドアの鍵を開けると舞と祥子が中に入
ってきた。鍵をまた掛けると、これまでの経緯を手短に語る。

「舞、行きまーっす」
手をあげると小声ながらおどけて言う。一番手はレズテクでは多少自信がある舞が買って出た。
花梨が宮森の脇に来て、暗示を与える。
「今度は別の女の子があなたとエッチしたいそうよ。ほらほら、ものすごくしたくなってきた、抱きつ
いて気持ちよくさせたい、もう止まらない、欲しくて欲しくてどうしようもない…」
宮森は驚くほどの速さで反応し舞に抱きつくとその唇を奪った。舌がねちっこく絡み合う嫌らしい
音が相談室に響く。舞は早速宮森のスーツのボタンを外し、ブラウスの上からその形のいい胸を
愛撫する。宮森が舞の事をしっかり抱いているので、舞は片方の手で胸を揉みながら、もう片方
の手は肩から背中そしてお尻へと落ちていき愛撫しながら絶妙な手つきでスカートのホックを外
しジッパーを下げる。
「ほら上着が邪魔よ、とっても鬱陶しい、脱ぎたい、手伝ってあげるから脱ぎましょ」
花梨が囁くと、宮森は舞を抱いていた片手を外し袖が通るようにした。花梨が上着を脱がせてや
ると、解放された手はそのまま舞の胸の愛撫を始める。さっき花梨がイキそうになったあの手つ
きが舞の胸の上で舞う。その手つきの鮮やかなこと花梨は思わず目を見張った。花梨が溜まっ
ていたから特別に敏感だったわけではない。やはりテクがすごいのだ。
「ぁあん!」
舞も反射的に体を反らせてしまう。離れた宮森の唇は舞の首筋辺りを攻め始め、片手で舞のブ
ラウスのボタンを難なく外してしまう。前が開いたブラウスに間髪を入れずに宮森の手が侵入し
てブラの肩ひもを外すと舞の乳房を直に愛撫し始める。ブラウスの上からでさえあの反応を舞か
ら引き出したテク。直にやられたらどうにもならないだろう。舞もここが相談室だと言うことがわか
っているせいか必死に声を抑えているが、どうにもならないところまで昇らされるとあっさりイカさ
れてしまった。恐ろしいまでの手練れとしか言いようがない。花梨もまさかこれほどとは思わない
ものだから暗示によるアシストをしなかった。祥子に合図をすると二番手として行かせた。祥子は
いきなりブラウスとブラとパンティのみになっている宮森のパンティへ手を侵入させた。あれだけ
絡み合いながらまだほんのりしかシミが出来ていない。かたや舞はシミどころか失神に近い状態
にされてしまっているのに。花梨は間髪を入れずに暗示を流し込む。
「ものすごく感じる、あそこを触られてどうしようもないぐらいに感じる、すごく気持ちいい、すごく感
じる」
矢継ぎ早に快感暗示を重ねられ、さすがの宮森もあえぎ始めた。
「さぁ、パンティが邪魔よ、すごく脱ぎたい、脱いでもっともっと触ってもらいたい、弄られたい、しゃ
ぶってもらいたい、もううずうずして止まらない」
宮森は腰に手をやるとズルズルとパンティを脱ぎ出す。祥子の弄りと花梨の催淫暗示で水分が
増したのか糸を引いているのが一瞬見えた。脱ぎ終わると花梨がまだ言ってもいないのに続け
ざまに祥子のスカートを外すとブラウスをつけたままパンティに手をかけた。宮森としてはレズS
EXの真っ最中と思っているはずなので、自分が脱いでまだ相手が着ていればそれも脱がすの
だろう。しかし舞に対した時点でテクニックのすごさは実証済みなので祥子まで防備を落とすべき
ではない。
「向こうもパンティは脱げているわよ…さぁ弄ってもらいましょ…」
こんなとき舞が正常ならより効果的な舌技で攻められるのだが、舞はまだ復活していない。床の
カーペットにだらしなく転がっている。花梨は祥子が前屈みになって宮森のあそこに接近し弄り始
めた頃、後ろからブラウスのボタンを外し脱がすと同時にブラのホックも外して全裸にしてしまう。
その美しさに思わず見とれてしまう。これほどまでにバランスの取れた肉体と言うものは作れる
のか。無駄な肉は一切ない。あるべきところにあるべき量が付き、完璧と言ってもいいプロポーシ
ョンを生み出している。見惚れている間に祥子は宮森への攻めを本格的にし始めた、体をよじり
快感に打ち震える宮森。びくんと体を反らすとソファからずり落ちてしまう。滑り落ちた体は跨ぐよ
うにして攻め続けていた祥子の股をくぐる。芳しい香りと色艶を放つ祥子のパンティーが目の前
にある。淫乱化している宮森はそれを認めると祥子の腰にしゃぶりつくように抱きつき、祥子のパ
ンティの上からベロベロ始めた。祥子のパンティは脱がされていると思わされているのだが何か
違和感を感じるのか、祥子のお●んこを覆っている部分を指で横に押しやるとさらに激しい勢い
でしゃぶったり、舐めたり、啜ったり、挿入したりとあらゆる技が展開した。突然の形勢逆転に意
表を付かれた形の祥子は、立て直す前に土石流のように強引な快感に襲われ腰が抜けた。激し
い勢いで攻め続ける宮森を花梨が暗示で止めようと入る前に祥子は失神させられてしまった。
(とんでもないなぁ…・これじゃ元の木阿弥だよね…)
助けに入ったはずの舞と祥子が立て続けにイカされてしまった。成人女性のレズSEXとは女子
高生レベルでは計り知れないものなのだろうか。祥子をイカせた宮森は四つんばいで花梨の方
へ迫ってくる。その目つきの淫乱にして異様なこと、花梨は過去に見たことがないほどだ。ここで
花梨までイカされたらどうにもならない。何とかしなければと考えた時、宮森誘導の目的がとんで
もない方へ捻じ曲がっている事にやっと気が付いた。エッチな事をやっているからまともに先に進
まないんだ。今更ながらだが宮森の横に膝まづくと頭を抱えるようにして誘導の体勢を取ろうとす
る。宮森は近づいた花梨の体に抱きつき首筋に唇を這わせながら、スカートの裾から手を差し伸
べ濡れに濡れた花梨の秘部に近づき始める。花梨が体勢を整え暗示を囁き始めようかと思った
時、強烈な快感が体を走る。思わず息を呑む。準備のため宮森の侵入を防ぐことが出来なかっ
たが、心構えはしていたつもりだった。パンティの脇から直だったとは言え、ただ触られたようにし
か思わなかったのに、襲って来た快感は想像を絶していた。準備していた暗示が口の中で消え
そうになった。理性を総動員して頭と声を落ち着けると、宮森の眼を手のひらで覆い耳に暗示を
流し込む。
「すぅ〜〜っと暗くなる。暗くなってどんどん落ちていく。力が抜けてすごくいい気持ち。頭がぼうっ
としてくる。ぼうっとすればするほど気持ちがいい。まるで夢をみているような気持ち。そう夢だっ
たの、夢だから本当のSEXをしたわけでないからなんか物足りない、もっともっと気持ちよくなり
たかった、まだまだ体は熱く滾っている、大丈夫ここはあなたの寝室よ、朝起きたばっかりでちょ
っと恥ずかしいけどオナニーしましょ、ほらオナニーと考えただけで、ものすごくエッチな気持ちに
なってきた、もう堪らない、したくてしたくてどうしようもない、ほらほらほら手が勝手に動いてあな
たのとっても感じるところを弄り出すわ、今まで感じたことがないぐらいの強い快感があなたを包
み出す…」
宮森は花梨の暗示に素直に反応して自分の体を弄り始め、間もなく声もなく体を反らせると脱力
した。宮森をイカせたことにより花梨は精神的優位に立つことが出来た。やっと本来の目的に向
かって事を進められる。普通なら淫乱系の暗示を絡めながら洗脳するのだが、こと宮森にこの手
を使うのは危険すぎると判断した。茫然自失になっていた役立たずの二人を帰らせ花梨は宮森
の催眠洗脳にかかりっきりになった。何度も何度も復唱させ、催眠深度を変えてリハーサルをし
て刷り込む。必要性を信じるようにしたあとは花梨に依頼するしかないように思い込ませる。そし
て薄暗くなる頃にはようやく催眠セッションが体操部に必要不可欠なものと信じ込ませることに成
功した。
「せんせ?」
「…ん…あっ…ごめん…寝てた?」
「ひどい、先生が呼んだんですよ。なんですか用って」
「ご、ごめんなさい…そ、そう…え〜っと…その…あなたの催眠術でね…うちの部のメンタルトレ
ーニングをお願いしようと思ったのよ…それで呼んだんだけど…」
花梨はグ○コのポーズをしたい気分だった。ガッツポーズなどで表現できる到達感ではなかった。
最初の牙城さえ崩れてしまえば、後は比較的スムーズに行く。その後一週間にわたって、宮森に
対し催眠洗脳を施し、最後の二日ぐらいは導入もしないうちから花梨の事をしきりに誘うようにな
った。

その誘いに乗るという形で花梨は舞と祥子を連れて宮森のところへ行った。誘導において無理
がないように最初は部員二十四人を六つのグループに分け四人づつ誘導する。催眠に慣らしな
がら徐々にグループを融合させ、最後に全員で誘導できるように持っていくと言う手順だった。花
梨ら三人が宮森に付き添われて部室になっている体育館の奥の部分に当たる体操競技専用施
設に行く。三人ともこの中に入るのは初めてだ。授業で使うのは当然通常設備の部分だから内
部の様子はあくまで噂でしか聞いたことがなかった。
「どう?」
普段は公開されていない施設を部外者に見せるのは宮森にとってもちょっと嬉しいことだった。
危険と言う理由で普段は施錠されているので、一般公開されるとすれば体操部の発表会の時ぐ
らいなものなのだ。そう言う学校規模の催し物があるときは花梨もオカルト同好会の発表会で忙
しかったので今の今まで見たことがなかった。聞くと見るではこんなにもインパクトが違うものか。
三人は入り口に立ったまま唖然としてしまった。その横で宮森は満足そうに微笑む。花梨ら三人
にとってはテレビ放送でしか見たことがなかった特殊な体操器具がある。これら特殊器具は必要
に応じて入れ替えが出来るように床や天井などに保持支柱や折畳式の器具の一部などが仕舞
われている。壁の一部には鏡張りになっている部分があり、通常施設との敷居の壁に高さ二メー
トル以上はあるかと思える鏡が隙間なく張られている。さらに専用のシャワー室、更衣室、道具
備品倉庫、小分けにされ視聴覚設備が揃ったブリーフィングルームが四つ、床面積を有効利用
するため目的に応じた組み方ができる移動式のパーテションが無数にある。これら全部が事実
上一つのクラブのためにあるようなものだ。とにかくすごいと聞いていたので心穏やかではなか
った花梨だったが、嫉妬を通り越して呆れてしまった。唖然としている三人をよそに、宮森は既に
集まっていた部員にメンタルトレーニングの事を説明している。あえて催眠と言う言葉は使ってい
ないが花梨がいればだいたいわかると言うものだ。それが証拠に花梨らを意識する感覚がひし
ひし伝わってくる。メンタルトレーニングという言葉が花梨=催眠という等式に結びついていなけ
れば出るはずのない反応だ。しかし、そんな反応より三人を戸惑わせたのは彼女らのスタイルで
ある。引き締まった脛と足首、すらっと伸びた足、コンパクトにまとまって張りのある臀部、そして
鍛えられた体がベースで初めて可能といわんばかりの形のいいバスト。花梨は自分の喉を生唾
が下る音を聞いた気がした。ふと見れば舞も祥子もお預けを食らった犬のような顔つきをしてい
る。自分もそうだがちゃんと気合を入れておかないと初っ端からつまづきかねない。グループ分
けは当然ながら専門にやっている分野ごとの選別になった。最初のグループは新体操のチーム
の一つ。当然のようにレオタードを着込んでいる。
(うがぁ―――――)
花梨は頭を抱えた。よりによっていきなり新体操のレオタード姿である。花梨は自分が好き者で
あることが十二分に承知していたが、まさかここまで同性の姿に動揺するとは思ってもみなかっ
た。バクバク言ってそうな心臓を無理やり鎮め誘導場所をどうするか考えを巡らせた。他の部員
は練習があるし、練習フロアは広すぎて集中を欠き催眠誘導には向かない。そこで場所をブリー
フィングルームの一つを使用させてもらうことにした。広さは一般家庭で言えば六畳から八畳敷
きと言うところ。外に面している壁には大きい窓が一つあり、遮光性のレースカーテンと暗幕が掛
けられるようになっている。室内には白板、投影スクリーン、ミーティングテーブル、パイプ椅子が
八脚、エアコン、オーバーヘッドプロジェクターがある。壁やドアは防音性が高く、練習が始まった
外の音はほとんど聞こえてこない。体育館併設設備としては中々得難い環境といえる。ここと同
じサイズのブリーフィングルームがあと一つとさらに倍近い大きさの部屋が二つある。これだけの
環境なら、大き目の方に移れば全員の誘導もそこで出来るだろう。最初のうちは部員を安心させ
るためにも宮森にも加わってもらい、一緒に被暗示性亢進のためのトレーニングを繰り返した。
最初のうちからあまり長時間やるとダレるので、一グループにつき一時間弱で、一日三グループ
をこなす。二日で一回転。一週間で三回転と言うスケジュールだった。一番心配だった初めての
誘導に対する感受性は、さすがに体操でそれなりの成績を残すだけあって集中力が違うと言う
のか、花梨が心配したほどの困難さはなかった。また彼女らが一番信頼する宮森のお墨付きと
言うのもかなり影響しているだろう。次の週からは一回九十分で二グループまとめて八人を誘導
する。今のところ花梨をはじめ舞も祥子もよく自分を抑えて、真面目な誘導に徹している。このロ
ーテーションでは誘導の頻度が増すので、より効果も増してくる。先週一週間で下地はほぼ出来
上がっているので、人数が増えてもそれほど誘導に手間はかからない。二週目の終わりの頃に
は運動支配レベルはもちろんのこと、部員によってはかなり深く入って記憶支配の深さまで行く
のも現れ始めた。こうなってくるとそろそろ逸脱した方向へ走りたくなるのが人情と言うものだ。よ
くここまで我慢したもんだ。花梨は自分を褒めたくなった。
「今日もお疲れ様でした…シャワーを浴びてから帰りましょ」
深い催眠状態の部員たちを前に言う。
「さぁ、立ち上がれるよ、立ち上がるとそこはもうシャワー室。着ている物を脱いでシャワーを浴び
ましょう」
花梨は用意しておいた小道具の一つである小型MDコンポの再生を開始する。部屋の中に水飛
沫の音が響き、催眠にかかっていなくても目をつぶって想像すればシャワー室が思い描けるよう
な状態になる。椅子を引き摺るようにして体を起こす部員たち。なんとなくモジモジしている。
「ほらほら汗をかいたから肌に練習着がまとわりついて気持ち悪い。早く脱ぎたい、あ〜気持ち
悪い、溜まんない、脱ぎたくて脱ぎたくてしょうがない」
急に体をうずうずさせると練習着を脱ぎ始める。エアコンのよく効いた部屋で汗をかくはずもない
のに手のひらでパタパタ扇ぎ始める者まで出てきた。服やレオタードを脱ぎ、実用一点張りのス
ポーツタイプの下着が顔を覗かせる。半目をあけ、口もちょっと開け気味の呆けた顔つきの部員
たちがふらつきながら脱衣している。舞が手伝おうと一人の子のブラの肩ひもに手を掛けたとこ
ろ異様な気配に花梨の方を見ると鬼のような顔をしている。
(いい加減にしなさいよね!)
(大丈夫だったら…)
花梨の鋭さに心中冷や汗をかき、苦笑しながら目で訴える。すっと花梨の視線がそれる。視線を
追って見ると祥子は異様に顔を近づけ据わった目つきでパンティに手を掛けようとしていた。花
梨の血管が切れる音がしたような気がした。花梨は無言のまま二人に大股で近寄ると、仁王様
のように顔を引きつらせ風切音が出るのではないかと言うような勢いで腕を振り上げ指を壁に向
かって指した。向こうへ行っていろと言うことらしい。二人は舌を出してコソコソと隅っこの方へ行
った。ここで失敗したら何もならないと言うことでの同意だった。全員が全裸になったのを確認す
ると、花梨はさっきの雰囲気とは打って変わった猫撫で声で言う。
「あ、よく見るとあなたのほかにもう一人シャワーを使っている人がいるわよ。でも別に気にする
必要なないわ、もう一つ奥のシャワーを使えばいいのよ。あなたはその使用中のブースをちょっ
とだけ覗いちゃいますよ。誰が使っているのかな〜」
全員が軽くキョロキョロするような動作をする。
「あ、宮森先生がシャワーを使っているよ…もちろん裸で…すごく綺麗な体…あなたはなんだか
恥ずかしくなって隣のブースに逃げ込んでしまう、なんだかすごくドキドキしている、あなたの頭の
中にはあの綺麗な裸体が焼きついている。すごく綺麗な体だった…すごく気持ちが高ぶっている
…同じ女性なのに…ドキドキドキドキして胸が痛いような感じよ…」
花梨はすさかずMDの選曲ボタンを押して目的のトラックに飛ばす。一瞬水飛沫の音が途切れる
とすぐ同じ水飛沫に心臓の鼓動音が重なった効果音が流れ出した。
「すごくドキドキしている…段々早くなっているようよ…がまんできなくなったらシャワーの蛇口を
捻って流しちゃいましょ…そんな変な気持ちはシャワーを浴びれば流れるかもしれないわよ」
鼓動の効果音も段々早くなっている。下を向いたり、口に手をあてたり、胸の前で腕をちぢこませ
て赤面したりしていた反応がぱらぱらと腕を前に伸ばし、見えない蛇口を次々に捻り出す。花梨
は頃合を見計らってMDを操作し水飛沫のみのトラックへ戻す。
「あ〜すごく気持ちいシャワーね…温かくて汗と疲れが流れていくようなすごくスッキリした気分…
でもその分だけさっきの先生の体に抱いた変な気分が余計に強まって感じるわ…一緒にシャワ
ーを浴びたいでしょ…先生と…ほら頭の中には先生に体を洗ってもらっている想像が出てきた…
やだ、すごく恥ずかしい!…でも消えない…先生に触って貰うだけで…気持ちよくなりそう…そん
な考えが頭の中を駆け巡っているわ…」
全裸の部員は全員さっきより恥ずかしそうなポーズをとって自分の嫌らしい想像にもだえている。
中には自己嫌悪の表情まで出し始めているのも出てきた。これ以上自分を追い詰めさせるのは
危険だ。外的要因で逃げ道を作ってやらなければならない。
「あら、あなたのブースから出た湯気で、先生があなたの存在に気がついたみたいよ…あなたの
名前を呼んでいるわ…いつものすごく優しい声で…その声を聞くだけであなたは救われた気持ち
になるわ…ほら先生があなたのブースに入ってきたわよ…手を伸ばして耳から髪に指を通して
いる…頭の中がじ〜んとしてすごく気持ちいい…先生が両手を柄って髪に何度も指を通している。
指を通されるだけでものすごく気持ちいい。さっきの嫌らしさなど微塵にも感じない…先生は部員
としてあなたを愛してくれているのよ…労わってくれるのは当たり前なの…その愛が感じられるか
らものすごく嬉しいし気持ちいい…さぁ、あなたも先生の髪を触りましょ…」
花梨は素早く八人の間を歩き、二人づづ向き合わせる。全員呆けた表情の中にどことなく恍惚と
した感じを漂わせている。
「さぁ、目の前に先生がいるわよ…触ってあげましょ…この気持ちよさを先生にしてあげたい…先
生を気持ちよくしてあげたい…触りたくてしょうがない…そばにいたい…どうしようもなくいとおし
い気分が高まってくるわ…」
向き合わされた部員はたどたどしいが明確な意思をもって動き始める。ゆっくりと手を広げ、指の
間に相手の髪が絡むように差し込むと指ですくように動かす。その動作がだんだん早くなり、両
手ですくようになってくると心持ち息遣いが荒くなっていくのがわかる。室温も上がっているかの
ような感じだ。軽くあえぐような声も出てくる。
「どんどん近づいていくわよ…ほらほら…もう胸が当たりそう…でもあてたい…抱きたい…キスし
たい…」
向き合った四組は完全に抱き合うような格好になり軽く唇を合わせる。
「もっともっと強くキスしたい…頭の中はジーンとしてすごく気持ちよくてもう何にも考えられない…
もっともっともっともっと…強くキスしないと先生が消えてしまいそう…強く強く抱きしめないといな
くなっちゃう…唇だけじゃもう物足りない、唇を開けて舌を絡ませるともっと気持ちいい…もう止ま
らない…」
途端に即席レズカップルのキスは激しさを増し、俄然強く抱きしめ組み合わさった唇からは明確
な喘ぎ声や漏れる息の音が聞こえるようになった。
「先生があなたの胸を触ってくれているわよ…すごく気持ちいい…愛する人に触られてすごく気
持ちいい…あなたも触ってあげましょ…先生を気持ちよくしてあげなきゃ…」
触られたと言われた途端喘ぎ声が強くなる。集団レズ催眠をやるときのいつもの香りが漂い始め
た。舞と祥子は部屋の隅っこで催眠状態にもなっていないはずなのに制服のまま抱き合い始め
てしまった。八人の女の子たちは恐る恐る相手を抱いていた腕の一方を外し、手を相手の乳房
へ持ってくる。包み込むような優しい手つきでお互いの胸を触り始める。びくんと引きつるような
反応を見せさらに悶え方を激しくさせる。
「どんどんどんどん昇っていく…すごく気持ちよくなっていく…先生の気持ちよさそう…すごく嬉し
い…もっと気持ちよくさせたい…ああ、すごくいい…もっともっとよくなる…我慢できない…」
キスを引っ切り無しに続け、お互いの乳房を揉み続ける。動作が段々激しくねちっこくなっていく。
息遣いが激しくなり、喘ぎ声もどんどん大きくなる。このまま誘導すれば全員間違いなく絶頂に達
する。生殖器攻めやシックス・ナイン体勢に持っていく必要もない。もっともこれだけはまっていれ
ば肉体的な刺激は必要ないとも言える。それに、やるとしてもそう言うのはもう少し調教してから
の方がいいだろう。いくらなんでも淫乱化初日にシックス・ナインは刺激が強すぎる。
「これから十数えると一つ数えるごとにどんどん昇っていって十になると絶頂に達するわよ…、ひ
とーつ…ふたーつ…みぃーっつ…」
明らかに一つ数えるごとに昇って行くような声の高まりを見せる。動きもより激しくなっていく。全
員の内腿にはしずくが光っているのが見える。直接触らなくても気分の高揚で充分以上に濡れさ
せているようだ。
「やぁーっつ、ここのつ、とうっ!はい!!」
パァーッンと手を打つと同時に四組八様の断末魔とともに全員絶頂に達した。ついでながら舞と
祥子も。落ち着いたところで汗や唾液、愛液の処理をさせ再び深化をする。着衣をさせたあと記
憶封鎖にかかる。
「今日はすごく気持ちよかった…先生も満足していたみたい…何度でもしたい…でもあなたと先
生の関係は絶対秘密よ…ばれたりしたら大騒ぎだしすごく恥ずかしい…先生にも当然迷惑がか
かる…そうでしょ?」
全員がこっくりと頷く。した事に対して肯定的なイメージを刷り込みながらも、秘密にしておかなけ
ればならないように記憶封鎖を自発的に行なうための下地を作る。
「でもあんな秘密を隠しとおせるか心配…目があった瞬間に顔に出てしまわないか心配…毎日ク
ラブで顔を合わせるのよ…最初は大丈夫でもしばらくしてからでも隠しとおせるか不安…そうじゃ
ない?」
全員がおののくようなそぶりで頷く。記憶を封鎖する必要性を自覚させ追い詰める。
「先生との大事な思い出を薄めないように大事に保存しておく方法があるわよ…普段は思い出
せないから顔に出ることもないしばれる心配も絶対にない…思い出したい時だけ思い出せるよう
になる…こんな方法があったら試したい…でしょ?」
全員の反応を見て花梨は八つの水を入れたグラスを指し示す。追い詰めた気持ちを都合よく方
向付け誘導する。ただ単に封鎖へ誘導するより遥かに被験者の能動的な要素を含ませている。
「あのグラスには記憶を溶かしておける液体が入っているの。これをあなたの額にあてると仕舞
って置きたい記憶があの中に溶けて、思い出せなくなるわ…でも思い出したいときはもう一度グ
ラスを額に当てれば元に戻るから安心よ…」
全員にグラスを持たせ額につけさせる。
「ほらほら、もうさっきのことがぬけていく、でもすごく気持ちいい…大丈夫…ちゃんと保存されて
いるから抜けるがままにしておきましょ…ほらもうなんだか何をやっていたのかも思い出せなくな
ってきた…今日はここでずうっとメンタルトレーニングをやっていただけ…シャワー室にも行って
いなければ先生とも合っていない…なんだか白い霧のようなものが立ち込めて…すごく気持ちい
い…三つ数えると先生との秘め事は完全にあなたの頭から消えてグラスの中に保存される…い
ちぃ〜、にぃ〜、さぁん!ハイ、完全にグラスに移った。はいグラスを額から外して…目を開けて
グラスを見ましょう…さっき透明だった水があなたの記憶で色づいているわよ」
もちろん透明のままだが、彼女たちのぼんやり開いた目には色がついて見えている。
「でも何のことだったかもう覚えていない…今持っているグラスがなんだったのかも覚えていない
…何にもわからない…なんでグラスなんか持ち上げているのかわからない…こぼしちゃうと大変
だからテーブルに置きましょ」
さっき快感に歪んだ顔つきとはまったく別物のような呆けた顔つきの彼女らは、もう何の思い入
れもないグラスをテーブルに置く。花梨はこの後いくつかの鍵言葉を植付け覚醒させた。普通な
ら淫乱化させられた記憶が封じられていても妙な体の火照りが説明できずに戸惑うものだが、健
忘暗示後の花梨の仕上げによってこれが催眠術の気持ちよさだと条件付けされた。ほのかに残
る言葉に出来ない快楽の残り香が催眠による物だと思わされた。カリキュラムの一環として受け
ていた催眠誘導は部員一人一人にとって秘密の楽しみとなり、催眠にまたかかりたいという願望
が芽生えるように仕向けてあるのだ。

次の週は八人三グループのうち一つを四人づつに分けて残りのグループに融合させる。十二人
づつの二グループと言うわけだ。まだグループ分けされた状態と言う前提ではあるが、ほとんど
の者が後催眠暗示の鍵言葉のみであっという間に深い催眠状態に到達できるようになる。こうな
ってくるとさすがに好き者を自認している花梨ら三人も飽きてくる。さっさと全員をまとめて仕上げ
たい気持ちになってきた。それでも油断禁物と自ら気を引き締め十二人づつのグループに催眠
誘導と催淫化を繰り返し行っていく。そしてまた次の週はグループを組み直して一回に三グルー
プ十八人づつの誘導を繰り返すつもりだった。
「何、まぁ〜た分けんの?」
花梨の計画を聞いた祥子と舞がウンザリしたように聞き返す。二人は先週の十二人づつでも不
満たらたらだったのだ。早く二十四人プラス一人をいっせいに落としてレズハーレムをやりたくて
しょうがないらしい。
「でもね、ここで手を抜くのはどうかしらね?」
「ここまでやれば手抜きとは言わないんじゃない。だいたいから十八人づつなんて、常にダブるグ
ループが出るんだから逆にむらが出てくるわよ?」
花梨は片眉を上げ疑わしそうな目つきで二人を見るものの、言い返す言葉がない。確かに理に
叶っている。やることが基本的に同じとは言え、微妙に違ってくるのは当然で、一緒にやるグル
ープ間に経験の差が生まれるのは当然のことである。あそこまでかかりがよくなった相手にそこ
まで神経質にならなくてもと思う反面、それなら一気に二十五人でもいいじゃないかという気持ち
が花梨を支配していく。それと同時に花梨本来のすけべさが頭をもたげてきた。

「こら、藤崎さん。遅いわよ?」
体育館内の仕切りの壁のドアを開けるといきなり言われた。宮森以下体操部は全員揃っていて、
花梨らの到着を待っていたらしい。
「すいません、今日はちょっと趣向を変えたいと思ったのでちょっと用意があって…」
「あら?どうするの?」
「みんなぁ〜ちょっとこっち向いてぇ〜こっち〜」
花梨は両手を上に上げて大声を張り上げる。先生の方へ向いていたりしてバラバラだった視線
が花梨に集まる。
「おねむの時間ですよ!」
起立していた部員二十四人全員四十八の瞳が宙を彷徨うとまぶたを閉じ、ひざから崩れて次々
と催眠状態におちていく。体操着姿になったものやレオタードの女の子がバタバタ折り重なるよう
に倒れていく。少人数のグループでは何度も試していたキーワードであったが二十四人全員一
斉には当然初めて。結果はわかっていたがやはり壮観そのものである。宮森も唖然としているよ
うだった。
「藤崎さん…」
「せんせ、疲れちゃいました」
「え?…あ…やだ…何?」
部員と一緒になって誘導されていた宮森には当然埋め込んであるキーワードの記憶はない。花
梨が見る間にもズルズル脱力していく様がよくわかる。意識はハッキリしながら、体を支えている
ことが出来なくなってしまうのだ。ぺたんと尻餅をついた格好で座り込んでしまう。
「みんなぁ、エッチの時間だよ」
宮森は驚愕の顔で花梨を見詰める。舞と祥子も意外な顔をする。もちろんこうなるのは常に望ん
でいたことだが、本当にいきなりやるとはさすが師匠、と思う尊敬の眼差しが両人から注がれる。
折り重なるように倒れていた部員たちはキーワードを出された瞬間から思い思いの格好になり自
慰をはじめる。初めての淫乱化の後からこれまでの間に一回の誘導中最低一回は「おねむの時
間」というキーワードと「エッチの時間」というキーワードの組み合わせで淫乱化のリハーサルを
繰り返してきた。そのため最初のキーワードを聞いただけで、ほとんどの部員が淫乱化の準備が
出来ているような状態になり、花梨の予想以上に反応がいい。すぐに喘ぎ声も聞こえ始め、我慢
しきれずに脱ぎ始めるものも出てきた。二十四人の美少女たちがあわれもない姿になっていき自
慰をする。
「ちょ、ちょっと…止めなさい!…藤崎さん?!」
宮森は力の入らない体を何とかひねり怒って花梨を睨みつける。
「せんせ、ちゃんと部員の演技を見ましょ」
「何を言っているの?やめなさいと言っているのよ…あ…」
「…あ…なんですか?」
花梨は悪魔のような微笑を浮かべて問い返す。花梨の暗示は宮森が部員の自慰を見て発情す
るように刷り込んである。
「…ん…いや…あぁん…やめてぇ…」
動かないはずの両手がじりじりと動き宮森は片方の手を自分の股に沈ませ、もう片方を乳房に
持っていった。教員用のジャージのジッパーをゆっくりと下げ、Tシャツに包まれたふくらみを手が
包み込む。股に潜り込んだ手はゆっくりと反復運動を始める。部員たちの喘ぎ声に堪えたような
短い息遣いの音が混ざる。花梨は宮森付近で自慰をしていた六人に手早く暗示を与える。六人
はのっそり起き上がると宮森のほうへにじり寄って来た。
「ちょっと…止めさせて…いや…お願い…」
宮森の顔が恐怖で歪む。でも手は止まらない。六人は宮森を取り囲むとジャージを脱がせ、あっ
という間に全裸にしてしまった。十二本の腕が宮森に絡みつく。二十四人全員そうだが、暗示の
中でもう何度も宮森とはレズっていることになっている。六人の動きにためらいなどはまったくな
かった。
「あっ…はぁっ…あんッ…ああ…いい」
見る間にも宮森のあそこは湿り気を帯びたようだ。一人が宮森の秘部に顔を埋め舐め始める。
「ああん!ああ、ああ、ダメ!…やめてぇ…もっと…いい…いやぁ…」
先生としての理性と押し寄せる快感が綯い交ぜになって相反する言葉が交互に宮森の口から出
てくる。反り返った拍子にそのまま押し倒されるような形になって、ますます宮森の体は六人の格
好の餌食になっていく。
「先生?いい気持ちでしょう…すごく感じてくるわ…ほら…ものすごくいい気持ち…」
花梨は六人の隙間にはいって宮森の胸をもみ始める。相談室では圧倒されて味わっていなかっ
たのだ。弾くような張りのある弾力を包み込んで揉むとなぜか自分が揉まれているような気持ち
になって、下半身に熱い液体が溢れるのがわかる。
「ああ…いいわ…気持ちいいィ…もっとしてぇ…」
もう快感に支配されたかのような宮森は熱に浮かされたように呟く。花梨は宮森の唇に引き寄せ
られるような気がした。もうどうしようもなく花梨は興奮し始めていた。このまま宮森に身を預けた
くなってきた。どんどん唇が近づいていく。そして…
「うむ…」
唇が触れたかと思うとすぐに舌が侵入して来た。口の中のツボまで心得ているような的確な動き
で花梨の口の中を刺激して回る。花梨の頭の中は真っ白になっていくようだった。ものすごく大き
な渦巻きに飲み込まれていくような引力が花梨の気持ちを引きずり込もうとしている。体に流れる
快感の波はどんどん上昇していく。

にちゃ…

(はっ!やだ!私何してんの?!誘導途中なのに…)
宮森の手が花梨のあそこに触れた瞬間花梨は我に返った。花梨のブラウスのボタンはいつの間
にか全部外れ、自分の指先がブラの肩ひもにかかっていた。スカートもいつの間にか脱げていて、
パンティは膝まで下がっていた。体勢は膝だけ立てて下になった宮森の胸の上に突っ伏すような
形になっていて、ちょうど宮森の手が曲がると花梨の秘部に届くと言った具合になっていた。体勢
はもちろんのこと、いつ脱いだのかまたは脱がされたのかまったく覚えがない。頭から冷水を掛
けられたような気分であったが、それ以上に花梨を戦慄させたのは、宮森の胸の上で花梨が目
の前に発見したものだった。例のペンダントである。相談室の時も引き込まれそうになったが、今
回はかなりやばかった。もう少し宮森の触れるタイミングが遅く、花梨自身が快感の虜になってい
た後だったら正気に戻ることもなかっただろう。まったくあの宝石には催眠効果でもあるのだろう
か。それとも花梨自身が気が付かないほどに興奮していたと言うことか。花梨にはよくわからな
かった。とにかくこの場は離れた方がよいと思い六人に再び強い淫乱化暗示を与え宮森への攻
め手を強くさせる。花梨は釈然としないまま体勢を整えて回りを見回すと、当然のように舞と祥子
は全裸になって周りの部員たちに攻めさせていた。本当なら引っ張ってでも止めさせるのだが自
分があのていたらくだったのでは何も言えない。ここまではまっている部員だから大丈夫だとは
思うが、二十四人全員一緒しかも場所もいつもと違う板張りの床でやっていることが影響しなけ
ればよいがと願うしかない。花梨は催眠状態に陥っている部員の性感を加速度的に敏感にさせ
一気に絶頂に達しさせる。催眠状態になっていない舞と祥子の二人は完全に置いてけぼりを食
わされ不満顔で花梨を恨めしく見詰めている。

「花梨ばっかりいい気持ちになってさぁ…ずるいよ」
後処理を済ませ体育館から出ると開口一番祥子がブーたれた。
「そのことについて聞きたいのよ。全然記憶がないんだけど、私自分で脱いでいた?」
聞いた舞と祥子は絶句した。ずうずうしいにもほどがあるといった顔つきだ。
「何言ってくれちゃってるのよ。私たちが話し掛けてもまったく無視で、先生の方ばっかり見て脱ぎ
始めてたじゃないのよ。あんなエッチい顔の花梨は見た事なかったよ」
そのエッチな顔つきの花梨に欲情してしまいちょっと濡れてしまっていた舞は怒って言う。舞は久
しぶりにドキドキした気持ちが掻き立てられたのに花梨がまったく反応しなかった物だから怒りよ
りも寂しい気持ちのほうが強かった。
「冗談抜きでほんとに覚えがないの…相談室の時もそうだったけど…先生のあのペンダントなん
か怪しいわよ…」
「なんだってのよ、やたら石がでかい時代遅れもいいとこのシロモノじゃない?」
頭ごなしにバカバカしさを強調する口調で祥子が応じる。
「近くで見ていると吸い込まれると言うか…先生に夢中になっちゃうの…」
「魔法のアイテムじゃないんだから…しっかりしてよねぇ」
落ち込んでいるように見える舞を差し置いて祥子が疲れたようなトーンの声で言う。
「とにかく明日からは本道に戻って真面目に二十五人の誘導を繰り返すわよ。あのペンダントに
は充分気をつけてね」
「本道に戻るってネ…(ハァ)…始めたのあんたよ?今日ばっかりは」
ここぞとばかりに祥子が腕を組みながら横目使いで花梨を睨む。痛いところを突かれて返す言葉
もない。
「でもさ…確かにおかしいよね…体操部の練習にペンダントしてくるなんてさ…」
横で聞いていた舞が難しいそうな顔をして呟き一呼吸入れて続ける。
「百歩譲って先生の役目は指導のみにしたって、ピアスや指輪ならともかく首から下げる鎖に石
が付いているペンダントでしょう?素人目に見ても危ないと思うよ。なんかの拍子に首が絞まる
かも知れない…そんな事をわからない訳じゃないだろうに…」
「じゃぁ、花梨が言うようにへんてこな効果があるペンダントとしてあそこにもってくる理由は?」
「私に聞かないでヨ!そう思っただけなんだから…」
「どちらにしろちょっと用心した方がいいわね」
二十五人をいきなり淫乱化してしまったということ以上に厄介な問題が発生した事を認識した花
梨だった。

そしてそれから一週間、一斉誘導初日の不完全さを補うかのような執拗さを持って淫乱化三割、
洗脳七割で誘導を続け、完璧といっていいほどの出来で仕上がった。部員は花梨の事を体操部
のサポート要員として認識しており、彼女たちは花梨の催眠術によって助けられていると言う感
謝と尊敬の気持ちが刷り込まれていた。普段校内ですれ違うと、下級生や同級生は言うに及ば
ず上級生まで花梨らには会釈をしてくる。サポート部員ゆえ実際に体操をするわけではないので、
通常の練習に出てこなくても何の問題もない。必要なら部員たちの方が花梨に合いにいき、花梨
が部室の設備が必要な時は練習中だろうが最優先で使用できるようにしたのだ。

(ここまで出来ていたのに、なぜ…)
思い返していた花梨は改めて結果の完全さを確認した。ペンダントにつまずきそうになったのだ
って一度きり。それも本格的な洗脳セッションの前の話で、結果には影響していないと自信を持
って言えるものだった。それなのに弥生に投書と言う形が出たと言うのがどうしても納得がいか
ない。弥生はもちろん如月紗里奈にも催眠尋問をたっぷりする必要がある。

(続く)


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