淫楽の宴

第一章

作:ワイワイ さん

「ちょっといいかしら?」
半開きになっていたオカルト同好会の部室とも言うべき教室のドアからノックとともに声が掛かる。
読書に没頭していた花梨はチラッと顔を上げてまた本に戻った。歩く梅雨空の代表格とも言うべ
き生徒会長の織部弥生だったからだ。
「どうぞ」
なるべく平静を保って返事をしたつもりだが無理だった。自分の耳で聞いても不自然なほど刺が
あった。返答された本人はそう言う事には慣れているらしく平然と教室に入ってきた。この織部弥
生という女、好かれていると言う話を聞いたことがない。

織部弥生。頭脳明晰で品行方正。何事に対しても明確な目的意思を持っており、果たすべき目
的に向かって精密なシナリオを頭の中で構築しそれを遂行する几帳面で気の強い性格。ただあ
まりにもシナリオが精密過ぎるため、予想外のことが起きると対処しきれなくなり思考停止してし
まう弱点も持っている。そのためシナリオから外れることを一番毛嫌いしており、そう言う要素は
積極的に排除しようとする。一年のころから学級委員を率先して引き受け、生徒会の活動は生徒
と先生の掛け橋とでも本気で思っているかのように人一倍情熱をささげ、生徒の噂や内緒の計
画まで事細かに先生たちに相談や報告するのに何の疑いも後ろめたさも持っていない。こんな
考えは他の生徒はもとより生徒会内でも喜ばれるわけがなかった。何とか排除や隔離をすべく
小規模な計画が何度か練られたが、そのほとんどが計画段階で報告されるか、最後まで行って
も結果を報告されてしまうので意味をなさない。そこで生徒会全体で結託して陥れるため、彼女
を二年生でありながら会長に推す計画を立てた。この学校における生徒会の会長および副会長
の選出は生徒の直接選挙ではなかった。代表になった各クラスの学級委員が投票すると言う形
だったので、どこかの国の国会のような陰謀も可能なのだ。計画では二年次にして会長に推され
るプレッシャーで押し潰そうと言うつもりだったのだが、生憎そう言う神経は弥生には備わってい
なかった。二つ返事で引き受けられた後の生徒会内部には不協和音が噴出した。上級生は一致
団結してボイコットし、同級生や下級生の一部にもそれに同調する動きが出た。結果、生徒会は
その本来の機能を失った。新会長はいつもの目覚しい活動で、これら不平分子たちの首は挿げ
替えられ、生徒会は先生のスパイ機関と呼んでも過言ではない内容に変貌させられた。

花梨としてはなるべく関わりたくない相手だ。表立ってロクに活動していないオカルト同好会は
生徒会にとってゴミでしかなく、何かしら理由をつけて予算無しにされそうになることが何度かあ
った。そう言う時は先生が仲裁に入ってくる。この状況こそが一番警戒すべき状況であり、またそ
れが弥生の目的としていることだった。要するに訳の分からない存在を認めたくない弥生は本当
なら潰したいところだが、さすがにそれだけの権限はない。そこで事あるごとに先生を介入させオ
カルト同好会のメンバーに嫌気を起こさせ自己崩壊させようと言うのが目的であった。そう言う陰
謀を画策する相手なので、弥生自身が部室に来たと言う事が意外であり不気味でならなかった。
平静を装い本に没頭しているように見せかけながら弥生の近づく足音を聞いていた。
「こんな投書が生徒会の意見箱に入っていたんだけど、心当たりある?」
突き出すように出された紙切れを一瞥する。丸々した文字でオカルト同好会について短く書いて
あった。

―――― オカルト同好会に変な事をされました ――――

珍しく記名があったようだが、その部分は破られている。察するに弥生が既に直接この投書の人
物と会っている事が伺える。と言うことは書かれている内容よりも遥かに事の内容を承知した上
で来ている事になる。演技半分で弥生の顔を無言でまじまじと見返す。視線が交錯しない。弥生
は花梨が開いていた本のページの角を見ていたのだ。

<催眠洗脳技術の実際 第三章>

(!!)
遅かった。咄嗟に手がびくついてしまった。まるで弥生の推理を裏付けるが如く。
「随分難しそうな本を読んでいるのね…」
弥生の声が勝ち誇ったように聞こえるのは気のせいだろうか。
「この投書の子、催眠術にかけられたそうよ。オカルト同好会が催眠教室までやっているとは知
らなかったわ」
もうこうなったら開き直って出たとこ勝負で何とか切り抜けるしかない。
「だから、何のことよ」
今更ながら本を閉じて大きな文字をセンスなく並べた表紙を裏に返す。
「ここで催眠術?ふん、私が習いたいわね」
弥生は芝居がかったような仕草で縁無しメガネの弦を指で押し上げ、目を細める。弥生の予想通
りの反応だった。
「あまり私をばかにしないでくれるかしら?こんな投書だけでわざわざ来るわけないでしょ?詳し
く聞かせて貰えるわね」
やはり投書の人物と既に会っているのだ。このタイミングで弥生がここに来ると言うと心当たりが
ある催眠セッションはおよそ一週間前に仕上げを終えた体操部に対するセッションだった。体操
部とその顧問は久しぶりに全く新しい標的で、他の相手ではいまさら来るようなタイミングのはず
がない。垂れ込んだのが誰なのかとか言う詮索は後回しにして、とにかくこの窮状を打開するの
が最優先事項。過去に何度かあった揉め事で薄々勘付いていた弥生の弱点を突く方法で行くし
かない。
「全部調べた上で来ているって訳ね…じゃぁ〜しょうがない、その通りやってるわよ、催眠術を」
椅子の背もたれに体を預けて反り返ると、ヤケ気味な喋り方で続ける。
「語感的に誤解を生みやすいから宣伝はしていないけどね…」
上目遣いでゆっくり喋り出す。弥生に遮ろうとする気配が見えたので、気持ち前に乗り出し一気
に捲くし立てる。
「人間の内なる未知の部分の探求こそオカルト同好会の研究テーマとしてはふさわしいでしょ?
ちがう?」
「いや…」
「ただ単に実験台じゃ、人は集まらないから教室と言うことにしているの。そこで興味のある子に
声をかけているってこと」
「だ、だから…」
「分からないかもしれないけど、実際催眠状態を経験したほうが習得には早いのよ」
「そんな事を聞いているんじゃ…」
弥生を無視して続ける。
「教室としても実験台としても催眠状態に導くことは当然のことよ?そんなことも知らないで来たと
は思えないけど、どうなのかしら?」
持ち前の計画性で作ったシナリオでは問い詰めれば観念する予定だったので完全に花梨のペ
ースに飲まれていた。
「ねぇ?どうなの?」
「いや、そうじゃなくて…」
「弥生の考える、この変な事ってどういうことなの?」
弥生の目が泳ぎ耳まで真っ赤になる。相手が誰であるかは知らないが、もし体操部の誰かだとし
たら変なことと表現する内容は、いくら女同士でもさすがに聞き出せていないだろうと言う花梨の
賭けが勝った。指摘を受けた弥生は自分が勝手に嫌らしい想像をしていたのでは、と言う疑問が
湧き上がり崩されかかったバランスは完全に崩壊した。
「ねぇ?」
おもむろに立ち位置を変え、弥生の腰が机にぶつかるような位置に立つ。
「催眠にかけると言うことが変なこととどう関係があるの?」
背筋を伸ばして何気なくつま先立ちになり、微妙に上から見下げるような姿勢で近づく。元々小
柄な弥生より少しばかり背の高い花梨は覆い被さらんばかりの威圧感を出す。
「催眠なんてね、どこでもしょっちゅう起こるものなのよ」
指先を突き出すと同時に弥生の踵の後ろに足をつけ、下がれないようにする。
「ほら!足が張り付いて後ろに下がれないわよ!!」
息を呑み花梨の足に当たって下がれなくなっている事に気づかず混乱する様を表情に浮かべ、
突き出された指先に対して反射的に瞼を閉じる。
「瞼が閉じて開かない。かたく閉じて開かない。力が抜けて立っていられないよ」
早口に捲し立て、間髪を入れずさらに語気を強め、
「後ろに倒れちゃう。グーっと引っ張られて倒れる。抵抗すればするほど倒れる。もっと引っ張ら
れる」
パチパチと瞬きをしたかと思うと弥生は瞼を閉じた。必死に倒れまいとしているようだ。その兆候
を見て取って、さらに畳み掛ける。
「抵抗してみてもいいよ…でもすればするほどもっと倒れちゃう。あごが上がってきた。頭が重い。
もう我慢できない」
もう弥生は見るからにふらふらしてきた。口も半開きになっているがまだ必死に抵抗しようとして
いるようだ。弥生の耳元に囁けるように移動し、今度は柔らかく、深みのある声でゆったりと続け
る。
「ほーら、倒れてきた。大丈夫よ、支えてあげるからね。倒れちゃうと凄く気持ちいい。ほら力が抜
けてすごーく気持ち良くなってきた。倒れるともっと気持ち良くなるよ…ほら、いい気持ち」
呆気ないぐらいに花梨に身を任せる弥生。多少不自然な体勢だったが何とか弥生の体を支え机
に腰を下ろさせ、手早く両隣の机を引っ張ってきて頭と足を乗せる場所を確保する。間断なく深
化暗示を弥生の耳に囁き続けどんどん弛緩させる。やがて弥生の体は完全に脱力して机に仰
向けになった。

弥生は一瞬浮遊感を感じたかと思うと体に力が入らなくなって上下感覚がぼやけた。自分の境
界線が溶けて広がっていくような開放感がある。宙を浮いているような感覚はそのままにゆっくり
ゆっくり落ちていき、くつろいだ気持ちが弥生を支配していく。

催眠状態に陥った弥生の表情をを眺めながら花梨はこれからどうやって投書の出所などを調べ
ていこうか考えていた。とりあえず弥生の記憶をたどって行けば誰からの投書なのかがが分るだ
ろう。最初は普通に深化して退行暗示を試すつもりだったのだが催眠状態で弛緩している弥生
の姿をみているうちにむらむらと来てしまった。何かにつけて邪魔盾する弥生を忌々しいとはもち
ろん思っていたが無視することに決めていた。下手に相手にするとろくな事がないことを悟ってい
たからだ。だがこうなれば飛んで火にいるなんとやらである。

正攻法でやっても我が強くプライドの高い女が相手のこと、そう簡単には行くまい。そう結論した
上で淫乱化をすることにした。『変なこと』と言っただけで嫌らしい事と結びつき、あれほど動揺す
るところを見ると相当な嫌悪、侮蔑、偏見で性行為に関すること全てが捻じ曲がっている可能性
がある。そう言う観念は性行為に対して受けた印象と生理的な反応に隔たりがあればあるほど
大きくなる物。無意識の中に認めたくない悦びを感じている場合もある。ならばその世界をさらに
膨らませて、溺れさせてやるのが一番。備品入れを開けると旧型のヘッドマウントディスプレーを
引っ張り出す。以前フリマで買ってきたものだ。それをこれまた初期型のDVカメラに繋ぐ。このカ
メラは舞が数百円とか言うまさに二束三文で買ってきたものだ。DVとは言え初期型なので現行
型に比べると画素数も貧弱で静止画もテープに記録するタイプだ。安く買えた訳はこの中古品の
静止画モードが壊れていて機能しないからだった。同じ場所にしまってあった数本のテープから
目当ての一本を探し当てるとカメラに挿入する。ビデオモードに切り替え、ヘッドマウントディスプ
レーがちゃんと画像を出すかテストする。ディスプレー付属のヘッドフォンはあまり良い物ではな
いので、小道具の一つである小型MDコンポの外部入力端子に接続する。内容は以前三人で行
った催眠レズハーレム大会が宴たけなわの時の映像である。女性のあえぎ声と絡みのシーンの
みがたっぷり入っている。こういう映像を売ったら高く売れるだろうことは想像できたが花梨の目
的は違うところにあったので、流出させたことは一度もない。もっともそんなルートなど花梨は知
らないのだが。花梨の目的とは今回の弥生のように堅物を淫乱化させるためである。この手のタ
イプがする淫乱な想像と言うのは貧困だし、そう言うものに対して嫌悪感が強い。いくら暗示で想
像を膨らませようとしても限界があるし、その限界を無理に越えようとするのは甚だ効率の悪い
話。それどころか下手をすれば覚醒してしまう。そこでこう言う映像の世界を擬似体験させれば
暗示だけよりも遥かに効率がよくなり、さらに無理やり想像させている訳ではないので覚醒してし
まう危険性も減る。このヘッドマウントディスプレーは旧型ゆえ若干重いが寝転んでいるなら問題
はない。花梨はそっと弥生にかけてやると、何事か囁き始め、しばらくしてからカメラの『再生』ボ
タンを押した。

「変な事ってどういうこと?」
真っ白な霧の中に溶けていた弥生は何処からともなくそう尋ねる声を聞いた。途端に弥生は自
分が想像していた嫌らしいことが頭の中に溢れ出す。あの子は女の子にキスされて、触られたり
脱がされたりしたんじゃないだろうか。あの子のそれほど大きくない胸が女性の手で制服の上か
ら揉みしだかれる絵が出てくる。なぜだか自分の胸も揉まれているような感じがする。よがり声。
ドキッとするが自分の声ではない。弥生は自分の秘部が熱くなるのを実感した。
(恥ずかしい!)
そう思うが普段は想像した事すらないような情景がどんどん沸きあがってくる。あの子は他にも
同じような事をされた子がいるようなことも言っていた。途端に複数の女の子が半裸状態の情景
が広がる。抱き合い、激しいキスを繰り返す。所々から響くようなあえぎ声。
(!)
弥生にとってショッキングなシーンが繰り広げられ始めた。足を広げられ、舐められている。しか
し舐められている方は嫌がっていない。むしろ気持ちよがっているのか。驚きのあまり手を口に
あてるが腕が自分の胸に当たる。普段なら気にもならないはずなのにやたら気になる。乳首に触
れた瞬間びりっと電気のようなものが走った。口を抑えたまま肩と肘が勝手に動く。カチカチにな
った乳首を刺激するように動く。じわっと熱い液体のようなものが股の奥で広がるのが分かった。
思わず腿に力を入れて閉じるが、腿も勝手に動く。刺激が増える。
(や、やだ!このままじゃ…!)
必死に止めようとするが止まるどころか動きが激しくなる。片方の手が勝手に腿と腿の間に滑り
込む。周りの女の子に気が付かれないように触りたくなってしまった。
(…どこを?)
指が向かっている先を想像しただけで、また、じわっと広がる感覚が襲った。指先がどんどん伸
びる、奥へ、奥へと。
(あ…!)
びくっと来た瞬間、口を抑えていた手が離れ胸に触れる。手は止まらない。自分の手のひらが自
分の胸を包み込む様が目に浮かぶようだ。
「オナニーしよ」
(オ、オナニー…?そんないやらしいこと…出来ない!)
雑誌で読んだことがある。気持ちいいだなんて。嫌悪感で吐きそうになった。あんなことできる訳
がない。でも体が勝手に動いてどんどん気持ちよくなっていく。
「気持ちいいでしょ?オナニー」
(私が?今、オナニーをしているの?)
途端に快感の怒涛が流れ込んできた。頭の中が爆発した。
(ん…!)
唇が軽くなにかに触れたかと思うと、熱くねっとりとした物が弥生の口の中に侵入してきた。頭の
芯が熱くなるのが分かる。
(気持ち…いい…)
頭の中に浮かんできたこの言葉に弥生は心底びっくりしたが、唇が勝手に開いて『それ』を受け
入れる。舌が勝手に動く。体の芯が音を上げて燃え上がったようだ。絡み合う、擦れ合う。まるで
弥生自身が舌になって絡み合っているような気さえする。体が熱い。強烈な衝動が体の中から
湧き出してきて止まらない。強く、強く抱きしめる。もうどうしようもなく愛おしくて愛おしくてしょうが
ない。
(もっと…もっと…もっと…もっと…)
何がなんだかさっぱり解らない。とにかく止めたら全部が消えてしまうような焦りのようなものが
突き動かすようにして、激しく絡み合わせていく。
「…あん!」
思わず声が出てしまった。キスしていた相手が弥生の胸に触れたのだ。ものすごく感じた。電気
が流れたように。声を出してしまった恥ずかしさなのか、顔が赤くなったような気がして、それを誤
魔化すためさらに強く彼女を抱きしめる。彼女の小さな掌が、私の左の乳房を撫でる様に包み上
げていく。ゆっくり、ゆっくりと。開いたり、閉じたり、押し上げたり。
(もっと…強く…強く…揉んで…)
思わず顔が真っ赤になる。すごく恥ずかしい言葉が頭をよぎった瞬間、彼女の親指と人差し指が
がこりこりになった弥生の乳首をぎゅっと摘む。
「はぅっ…!」
(のけぞった。喘ぎ声まで出した。もうどうでも良い。もっと欲しい。もっとして)
一気に流れ込んでくるドロドロした訳の解らないものが弥生の中を充満してくる。ふと見ると彼女
の横に見覚えのある女の顔がある。
(あ、…この人…誰だっけ……)
名前が出てこない。綺麗だけど、嫌いだった。その女の手が伸び弥生の胸を揉む。嫌いな筈だっ
たのに。揉まれてすごく感じる。名前と顔が繋がりそうなのに快感が邪魔をする。
(もうどうでもいい…)
そんなことより、彼女にされる愛撫から生まれる快感が体を芯から揺さぶり熱く、そしてどうしよう
もなく貪欲にさせられていく様が分かる。別の誰かが腕を首に掛かってきたようだ。頬擦りをされ
る。誰なのか見きわめる間もなく頬擦りをした小さくて愛らしい人物は舌を耳の中に入れてきた。
「あぁ…!」
今度は左の乳房だ。さっきとは違う女性が両手を添えながら先端を口に含んでいる。舌が乳首を
弄んでいる。快感が弾ける。足の方にも何人かいるようだ。足の指、くるぶし、すね、ひざの裏、
そしてスカートが捲くられる。そしてパンティがずり下げられるのがわかる。抵抗しようにも全く力
が入らない。体のすべてが蕩けてしまっているようだ。腿に手が掛かって、足が広がり、そしてす
べてが真っ白になり奔流がすべてを流し去っていく。そしてまた来る激しい高まりと強烈な流れが
繰り返し襲ってくる。完全に快感の渦に飲み込まれた。

清楚なセーラー服が見る影もなく脱げかかり半裸状態になりながら激しく自分の体をまさぐる女
生徒の両肩を両腕で支えながら、もう一人の女生徒がゆっくりと机を並べただけのベッドに横た
えながら何事か耳元で囁いている。何か言う度に反応して引きつるようだ。悶える体が机から落
ちないように支えながらも、囁き続けている。この二人組の後ろにはちょっと離れた位置に椅子を
逆さにして跨るような格好で女生徒がもう二人この異景を眺めている。

「ふぅ…」
花梨は再生モードのDVカメラを停止してヘッドマウントディスプレーを弥生の顔から外すと後ろで
見ていた二人の方へ向き直る。
「完全にはまっちゃってるね、弥生」
弥生のあわれもない痴態を見ながら、興奮押さえ切れないと言った状態で、神経質そうに指を唇
に触れさせながら舞が言う。花梨は何事か弥生に囁くと、ゆっくりと弥生の頭をベッド代わりの机
の上に置いた。花梨は額にかいていない汗をぬぐう仕草をしてはにかんだような笑みを浮かべ、
「いいタイミングで来てくれて助かったわ」
「事前に言ってくれればもっと楽に出来たのに」
不満そうに口を尖らせながら祥子が言う。
「わかってたら言っているわよ。危なかったんだから。相手が独善的な自信家じゃなかったら失敗
してたわね、間違いなく」
「どうしたの?」
「ここで催眠術にかけられて変なことされたって投書が入ってたんだって。今のタイミングで来たと
ころを見ると、この間の体操部が関係しているんじゃないかって思うんだけどね…」
「記憶の操作が完璧じゃなかったのが混じっていたんだ…あんなにしつこくやったのにね…」
「結果的にうまく行ったとは言え、穴になる可能性の点は結構あるわよ。あれだけの人数を計画
的にやったのも初めてなら、先生を生徒の前で淫乱化させたのもそうだし、部員と顧問の間にあ
る心の絆に対して充分な配慮があったかも怪しい」
「そんなこと言い始めたらきりがないわよ」
舞がうめく。
「だからこそ、どういう経路で投書と言う形に発展したのかを確かめたいのよ」
「で、これからそれをあのオナニー少女に聞くわけだ」
悶えながら痴態を演じている弥生の方へ祥子がニヤニヤしながらがあごをしゃくる。
「そのオナニー少女っての止めなさいって」
花梨は笑いながら言うと弥生に近づき手を取りながら耳元で囁く。
「脱ぐのよ、服を全部。脱ぐともっと良くなるわ。そう、いい子ね」
もぞもぞと脱ぎ出す弥生を手伝いながら、弥生のグチョグチョに濡れた陰部を弄る。
「っンはぁ…」
仰け反る弥生。
「そう、いいでしょ。ほら、もっともっと良くなる。触って欲しい…女の子に触って欲しい…それしか
考えられなくなる。ほら声に出して言わないと分かってもらえないわよ」
「…あん、ああ…さ、触って…もっとぉ…してぇ…」
「いい子ね、ほらもっといっぱい女の子が来た。みんなが触ってくれるの、すごく気持ちいい。どん
どん昇って行ってイキたくなったらイッちゃってもいいわよ。何度も何度もイカせてもらえるから」
「ああーー…あ、あ、はぁ、いい、もっと、…ああーん…」

ここにいるのが女性だけなのをいい事に、コリコリになった乳首が制服を突き出すようになってい
るのを隠しもせず異様なまでの性的興奮にすわった目で舞が呟く。
「ほんと。相変わらずすごいよ。見ているこっちまで興奮しちゃう」
淫靡な上目使いで指先にまとわりついた弥生の愛液を舐めながら花梨は満足そうに微笑む。高
校生とは思えないような凄惨な光を帯びた目が蔑む様に悶えるまくる体を見ながら陰険な顔つき
になっている花梨は静かに囁く。
「もうどうしようもなく淫乱な生徒会長に仕上げてあげる」
なんか目指しているものが違いやしないか、と祥子はツッコミを入れたくなったが薄笑いを浮かべ
ながら黙っていた。前々から気に入らなかった弥生を性欲の奴隷にしてやるのも見物だし、その
過程でテイスティングするのも悪くはない。以心伝心か、祥子と舞は視線を合わせるとほくそえん
だ。



彼女達が在学しているのは、全寮制の女子高校で名称は私立聖華女子高等学院。学業はもち
ろん付随するクラブ活動でも県内はもとより国内でもトップレベルを誇る。郊外にあるためか広大
と言う表現をしても差し支えないほどの校庭を備え、それとは別に広々とした敷地に施設は余裕
をもって建てられている。一番古い本館には縦に並ぶようにしてプレハブ作りの臨時校舎が併設
されている。これは二十数年程前のベビーブームの時、生徒の数が急激に増え、通常一クラス
三十人未満なのに四十人を越すような状態になった。少数教育を徹底している建前なのに、そ
の状態では建前以前に教育の低下が危ぶまれ急遽この仮校舎が作られた。今では生徒の数も
減った上、プレハブ完成後から三年後に完成した新館もあるので、臨時校舎の教室は使われな
くなっている。寿命が近くなった事もあり取り壊しが決定していたが、大型の部材を置いても邪魔
にならないと言う利点などからも倉庫として結構使い出があり取り壊しされていない。その他に学
生寮が三棟、クラブ活動の部室のみで構成される部室専用棟と体育館は二棟づつある。築四十
年近い昔の体育館は集会などを主な使用目的にして、十一年前に体育館を新設した。地下には
通年使用できる競技用温水プールとスカッシュなどに使用するの密閉型のコートなどが入ってい
る。一階は通常の授業でも使用する体育館になっているが地下に収容している施設の規模から
言って床面積はやたら広く、通常体育館の二倍以上の大きさがある。この床面積の3/5を通常
の体育などで使用する部分とし、残りの部分は壁で仕切り本格的な体操競技なども充分にでき
る専用の設備を導入している。こちらの部分は体操競技などに使用する専用の設備が常設され
ているので危険と言うこともあり常に施錠されている。2/5なので小さめの印象を受けるが床競
技用の面積をとってさらに別競技も同時進行できると言えば相当な広さだと言うことがわかって
もらえるかと思う。トランポリンや新体操、大型鉄棒などもできるようにしているため天井は地上
四階分以上の高さを確保している。これだけ大きな建造物があっても狭苦しさを感じさせない広
大な敷地にはさらに剣道道場や弓道と言った精神修養の授業に必要な鍛錬場なども専用で持っ
ている。とにかく設備は高校と言うクラスでは格別だった。

さらに特殊と言えばここの教職員の構成もそうだ。表に出てくる学校の職員、教員、管理者など
は全員女性で、しかも異様に平均年齢が若い。もちろん管理側など上役はそれなりに歳のいっ
た層が占めているが、生徒と直接接するような実戦部隊の年齢は二十代前半から三十代前半と
言う具合であった。昔は男性もいたのだが、過去に教師と生徒の一線を越えてしまう恥ずべき過
ちがあった。保護者の多くから男性教師は排除すべき、と言う圧力がかかった。学校側は感性の
バランスを保つためにも男性の教員は残すべきであると言う立場だった。当の男性教員としては
自分達の見たくない部分を見せられたような心境であった。圧倒的に女性が多く、しかもそのほ
とんどが純粋無垢で美しいとなれば、いつ自分も同じ過ちを犯すか自信がなくなった。そのうち了
解の上一線を越えるなんていう生温い物では済まなくなるのではないか、そんな疑心暗鬼に囚
われる者も出てくる雰囲気だった。そんな事を自覚してしまえば職場での居心地の悪さを感じる
ようになるのは当然であり、一人また一人と退職していく。居心地の悪さが口コミで噂が広がる。
募集しても男性教員がなかなか集まらず、入っても現実に居心地の悪さと言う物を体験するにあ
たり長く持たない。今ではほとんど表に出てこないが理事長のみが唯一の男性になってしまっ
た。

元々この学校は良家の子女を預かりその徹底した貞操教育で名が通っていた。入学条件は厳し
く、成績が優秀であることは当たり前。さらに社会的または伝統的に名の通った家柄の子女かま
たはそれらの推薦が必要であった。厳しさがブランドイメージとして通用した時代はこれでよかっ
た。しかし親が子供の進路に関して決定を押し付けるような風潮も減った昨今では、間違いなく
古い因習に囚われた煙たそうな学校のような印象を与え、条件を満たしながら入学する生徒本
人に敬遠されてしまうと言う事にもなり兼ねない。そう言う事態を避けるためにも学校の好感度を
上げて、厳格な点を引いても入学したくなる魅力を出すことが急務になった。その答えとして十年
前に高校と言う教育機関では前代未聞の本格さと実践さを兼ね揃えたクラブ活動というものがス
タートした。

趣向の自由度と活動の結果を示せる場の提供は学校側が徹底して行う。自由と言うのはクラブ
活動への参加の義務と言った物を設けないと言う意味も当然含まれているが、事前に独自のカ
リキュラムを組み定期的な報告を絶やさなければ一人で活動してもよいと言う事が独特な点でも
ある。それどころかクラブとして認められ根拠があれば活動予算まで下りると言う具合だった。活
動の結果は試合や発表会などだけでなく場合によっては学校が持つ『名門家柄の子女を集めら
れるコネ』を使って実社会での経験を積ませるところまで援助する。そして通用する才能があると
認められれば、親の了解の上で通常授業のカリキュラムを見直し才能を伸ばす方向へ転換でき
る足掛かりにもなりうる制度であった。こう言う本格的な制度なので、自由と言うのは放任と言う
意味ではなかった。時間を有意義に使い自己の発見と自分の将来を真剣に考え結びつかせる
だけの意識の発達を刺激するのが本来の目的なので、目覚められない資質にとってはカリキュ
ラムを与えられて言われる通りにやるよりきつくなる。十年前発足してから成果は中々上がらな
かったが、最近になってやっと芽が出始めた。クラブ制度の本格性が先輩から後輩へ受け継が
れ生徒の認識の中にも根付きやすくなってきた。生徒もそれがわかると積極的になる。学校側と
しても色々な可能性を試させるために、二つ三つぐらいの兼部なら認め、在籍クラブに対する縛
りなどは極力避けた。その結果、クラブ活動は多種多様になり、三学年で全校生徒数が三百名
弱であるにもかかわらずクラブの数は四十を超えていた。

そんなクラブのひとつにオカルト同好会があった。クラブ活動が解禁になった当時からある古株
のひとつである。発足当時はまだそれほど生徒の独立精神がまだ一般的ではなかったので何か
不思議なもの、超能力や怪奇現象、UFO、未確認生物、神霊、占い、など一見訳のわからない
ものに興味がある生徒たちが集まって発足させた。クラブ名のネーミングは読んで字の如く、な
んとなく曖昧で一括り出来そうな名前である。このような名前に収まったのも当時の部員のこだ
わりがそれほど大した物ではなかったと言うのが一番の理由だろう。そう言う発足時の事情だっ
たので、活動はまとまりがなかった。予算もろくに下りず、月日が経つにつれ真剣みのあるもの
は脱退して新しい専門分野の研究クラブを発足させる。そんなことが相次ぎ、去年、藤崎花梨が
新入生として入ってきた時にはオカルト同好会はまさに看板のみが残っていると言った様相だっ
た。

入学当時、花梨はすぐに失望することになった。クラブ活動が盛んだと言うことを聞いてわざわざ
この学校に来たのに、催眠を専門にやっているところがなかったのだ。そこでその当時の担任に
相談したところ、オカルト同好会なら器は出来ているので、まずそこから始めたらどうかと言うこと
だった。教えられた活動の場所はただの空き教室だった。大抵のクラブは独自の活動の拠点と
なる部室棟の一室をあてがわれている筈だが、オカルト同好会にはそれすらもなかった。これで
はまだ実績を上げていない個人の活動と何ら変わりはない。花梨は密室となりうる部室があるこ
とを前提に色々計画を練っていたので、完璧な肩透かしを食らったと言っても良い。その計画と
は彼女の催眠以外のもうひとつの嗜好に関わることだった。花梨はレズだった。少なくても彼女
自身はそう自覚している。同級の女生徒を相手に中学の時に初めてやった他者催眠の実験。そ
のあまりに無防備な被験者の状態に狂おしいまでの情熱をあおられ目覚めた。もっと試して経験
を積みたかったが、中学生の学校内の活動場所など多寡が知れているし、学校外と言っても厳
格な家庭に育った花梨にとっては外泊なんてよほどの事がないと出来ない。また出来たとしても
それは友人宅とかの話で、派手なことはしたくても出来ない。彼女が部室などの密室性に拘った
のはそういう過去があればこそだった。

多少不本意ではあるがこのオカルト同好会を自分に都合の良い環境に変えるのが花梨の目的
を達成するための最短距離だと言うことを悟った。花梨が入った当初、クラブへ顔を出す人数は
花梨の他には上級生が三人しかいなかった。名簿には一応八名いるはずだったが、皆、別の活
動をしているか帰宅部ならぬ帰寮部になっているようだった。目的も計画もなくただのお喋りクラ
ブと化したオカルト同好会のメンバーを絡めるのは花梨にとって造作もないことだった。ちょっと
それらしい話題を振ってやればもともとは興味を持っているだけあってすぐ食いつく。一ヶ月もす
る頃には花梨以外に不定期だがとりあえずは顔を出していた上級生三人はすべて花梨の淫乱
催眠術による快楽の虜になっていた。その三人のつながりから花梨はせっせと活動範囲を広げ
た。三人の友人関係、寮のルームメイトとその友人関係が花梨の毒牙に掛かるのは時間の問題
だった。そして半年も過ぎる頃にはオカルト同好会は内情を催眠研究専門の活動場所として変
貌を遂げた。名簿に載っていた八人のうち五人が復活し、校内の活動も出来る体制が整った。花
梨はたびたび小さな発表会などを催し、興味を持ち反応が良くて反りが合いそうな女生徒を探し
た。催眠に興味を持っていても支配され与えられる快楽に溺れてしまう者では話にならない。部
室と言う密室を確保できない以上、信頼の置ける共犯が必要だったのだ。それが後ろで見てい
た二人、高野舞と麻生祥子だった。

高野舞は花梨と出会う前からレズとしての自覚に目覚めていた。舞はネコの体質を見極める天
才的な才能を持っていた。一旦ネコと見極めた女性に対しては今のところ完全無欠の確立でレ
ズへの調教を成功させている。自分のそんな性質を自覚したのが小学校三年の時。始めてレズ
キスと初体験をしたのが四年のとき。以来毎年少なくても一人は舞のパートナーとなっていた。
特定の相手と関係を持つのもいいが、舞の本当の望みとしては出来ればより多くの相手と縛ら
れずに関係を持ちたいと言う欲張りな物があった。当然ながら普通にやるのでは中々そう簡単に
はいかない。高校に入って花梨と言う天性の才能をもった催眠術師に出会い利害が一致した。
花梨としては暗示だけでレズ誘導するより、暗示は補助的な誘導に徹し、メインは舞の愛撫に任
せたほうが被験者の落ちるペースは早いのだ。手技、指技は言うに及ばず舌技においても舞の
テクニックは洗練されていた。特に舌技には花梨も何度となくイカされた経験がある。

麻生祥子は根っからのスケベ体質でバイセクシャル。現在は女子高なのでレズで満足。要する
に気持ちよければ何でもいいと言うこだわりのなさ。初Bの相手が実の弟と言うのも祥子の普段
の行動を見ていれば何の不思議もないし、むしろCまで行かなかった方が不思議なぐらいである。
祥子は花梨ほど達者ではなかったが独自に催眠術を研究していた。花梨が最初こそは純粋に
技術として研究を始めたのに対し、祥子の目的は最初から悪戯のためであった。技術がある程
度磨かれてくると、祥子は遠慮なく道を外れた。と言うより祥子にとって本来の道に戻ったと言う
べきだろう。男女共学の中学生時代から活発化して、先生に生徒をつまみ食いさせたり、女性教
師を教壇上で淫乱化させたり、恋人どうしの片方だけをレズまたはホモ化させて破局劇を演出し
たり、教員研修の大学生には男女を問わず不祥事を起こさせたりとやりたい放題だった。要領の
よさと生まれながらの大胆な性格のお陰でついに卒業までにそれら異常事態が祥子の仕業であ
ることはバレずに済んだが、祥子自身かなり危ない橋を渡ったと実感させるものがあった。祥子
に言わせれば花梨のやっていることは持っている技術の割りに大人しすぎると言わざるを得なか
ったが、その洗練された技術と確実さは見習うべきものがあると心服している。

この三人組が結成されてからのオカルト同好会の活動は表にこそ出ないものの活発を極めた。
小さな発表会と称し小規模ながら催眠実演を行えば、必ず二〜三人を後催眠暗示で絡め取り性
的快楽の下僕に陥れることは結果と言うより目的そのものと化した。そしてそれが文化祭やそれ
に匹敵するような規模の催し物となると獲物の数も倍近くに上った。中心にいる三人組の好き者
振りもさる事ながら、その他オカルト同好会のメンバーも花梨らの催眠により与えられる快楽の
虜になると同時に、一緒になって直接他の女の子を自ら貶める背徳的な興奮と快感の虜になっ
た。彼女らにとってみれば催眠でやらされているからしょうがないと言う所に逃げ込むことによっ
て普段では出来ない淫乱さを発揮できることに夢中になっているようだった。生徒のほとんどは
厳しいしつけや厳粛な家柄の下で周りの大人達の期待を一心に集め育てられてきている。中に
は素直にまっすぐ育つのもいるが大抵は年頃の好奇心を無理やり押さえつけられている。解放
させたくても生まれて一度も道を外したことがないものだから自分から弾けることも出来ない。大
抵の生徒はそんな状態なのだ。だから花梨をはじめとするオカルト同好会に催眠を掛けられると
最初こそは暗示の影響力のほうが強くても、一度快楽や悦びを味わってしまうと、能動的に暗示
に反応するようになるのだ。こうしてかける側とかかる側に認識の差は若干あるものの、オカルト
同好会は淫欲の限りを尽くすにあたり一丸と言ってもよい体制が出来あがった。

花梨が二年にして事実上の部長になったとき、少しでも部外者の干渉を減らすため、本館横のプ
レハブ校舎の最上階である三階の一番奥に部室を移動した。一、二階は使われなくなった机や
椅子が山積していて倉庫として使用されたりしている。三階は教室のほとんどは空だった。当然
先生には反対された。花梨は単身交渉に臨み、催眠術という研究対象ゆえ通行人など気が散る
要素は排除する必要がある。現在満室になっている部室棟の一室を強制的に明渡してくれるな
ら、廃屋同然の教室を使う必要はない。クラブ活動を奨励しているにもかかわらず、割り当てる
部室がないという弱みを突く。こう切り出された学校側はぐうの音も出なかった。承認後、下の階
から十組程度の椅子と机を運び込んで部室とした。この臨時校舎は当然ながら別設計なので各
階が本館各階の廊下につながっていない。臨時校舎の三階から本館の三階に行く場合は一度
一階まで降りてからまた本館の階段を登らなければならなかった。移動直後、こう言う面倒臭さ
は不評だったが、外部からの進入経路が一箇所に限定できると言う点がすぐに理解される。そ
れだけでなく元々安普請のところへ持ってきて老朽化がすすんだ建築物。どんなに忍び足で来
ようが、無音で接近することは絶対無理。建物そのものが侵入者警報の代わりになるのだ。こう
して密室は確保できなくてもとりあえずは干渉や突然の邪魔が入ると言った可能性は下げること
が出来た。しかしいくら可能性が低くてもやっている最中に接近されてはやはりまずい。本格的
な活動を落ち着いてやるには密室性を持った部室が必要なのは動かしがたい事実だった。どう
しても密室が欲しい。そうなれば残る手はひとつ。乗っ取りしかない。こうして彼女らの思いつきと
欲望に任せた今までのような活動とは違い計画的な暗躍が始まるのだった。



「あん、あ、あ、あふっ……!」
何度目であろう、弥生がまた絶頂に達した。誰かに触られているように思わされているが、 実際
のところはオナニーである。もう既に机の表皮が愛液でふやけて浮き上がってしまうのではと思
えるほどになり、弥生自身も体力の限界のようである。ぐったりとしながらも、なお暗示の影響で
動こうとする腕を取り耳元で囁く。
「気持ち良かったでしょう。もっともっとよくしてあげる」
ゆっくりと空いた手で弥生の胸を揉む。穢れを知らないピンク色の乳首は硬く充血し、花梨の指
戯に敏感に反応する。音を立てて舌が絡みつく。弥生の上半身を仰け反らしたまま、花梨は舌と
指で弥生を攻めつづける。
「あ、あん、あああ…」
「いいでしょ?もっと感じさせてあげる…」
花梨の指が弥生の熱くたぎった部分に近づく。後ろでは祥子と舞が我慢しきれずに自慰を始め
る。まるで二人まで花梨の催眠影響下にあるようだ。祥子は若干腰を曲げて両足をもぞもぞさせ
ながら、上着の下から手を入れ、胸を弄り始める。舞はスカートをだらしなく下ろしパンティの上か
ら指を一定のラインに沿って反復運動をさせる。たっぷりと水分を吸収したパンティは透けて、舞
の女性自身が舞の指をくわえるさまが良く見えていた。熱い吐息が交錯し催淫効果は相乗して
行く。もう完全に目がすわっている祥子はゆっくりと舞に近づき、後ろから自分の愛液で濡れた指
を這わせ舞の胸を揉みほぐす。突然の愛撫にびっくりしながらも、それ以上に強い快感が渦巻
く。
「んはぁああ…し、祥子ぉ…」
「すごく硬くなってる…」
肩越しに顔を出す祥子に向き直るため腰を捻る舞。舌がねちっこく絡み付き、卑猥な光を放つ数
本の糸が紡ぎ出される。祥子の左手が慣れた手付きで舞のスカートを脱がし、ヌレヌレになった
パンティの上から指を這わす。舞の手も主人に見捨てられた祥子の秘部を下着の横から指を入
れ直に触る。沸き上がる快感に我慢し切れなくなった祥子の腰が抜け舞に寄りかかり、同時に抱
き合いながら床に倒れこむ。友人の痴態を横目で見て、花梨はどうしようもなく欲情してしまっ
た。
「弥生…触って、おっぱいを触って。今までしてもらってたようにするの」
余りの性的興奮にとろんとなった花梨が言う。ゆっくりと弥生の手が花梨の胸を服の上から弄
る。
「あんっ」
強烈な電撃が走ったような感じで、不覚にも花梨はそれだけでイキそうになった。もう頭の中がぐ
るぐる回っている。もっとほしい。半開きになった弥生の唇に、自分の唇を重ねる。舌がいやらしく
絡み合う。弥生もさっきの暗示とハーレムレズの疑似体験のせいか、反応がいい。とても品行方
正な生徒会長とは思えない乱れようである。弥生の手が優しく包み込むように花梨のおっぱいを
揉む。頭の中だんだん白くなっていく。もう片方の手が脇を通り、背中へ伸びる。耳たぶから首筋
へ弥生の指が舞い、気の遠くなるような快感が走る。欲しい、このままイカせてほしい…。催淫の
指はそのまま背骨からお尻の部分にきて、爪を立てるように円を描く。
「はぁ…はぁ…もっとぉ…もっとお…ほしいぃぃ・・…」
堪り兼ねたように弥生がうめく。
「しょうがない子ね」
ゆっくりと花梨の人差し指と中指が弥生の秘部に侵入する。親指が陰唇を刺激し、クリトリスを弄
くる。
「ほら、凄くいいでしょう。もっともっと感じる。どんどんどんどん昇って行く」
「ンなぁあ…あん、ああ、あふ…あ、あ、あああああ〜〜〜」
もう白目を剥いて絶頂に近づく弥生。上半身は弓なりになりシンボルとも言えるメガネがずり落ち
そうになっている。激しい反応に満足しながら、花梨はゆっくりと数える。ひとつ数えるたびに、激
しさと反応を増す。最後のカウントをした瞬間に、全身を反らせ硬直し絶頂に達した。
「イっちゃたのね。そう…いいでしょう。そのまま力を抜いて、そう…ゆったりと私にもたれ掛かる
のよ」
口を半開きにして、仰け反ったまま全身が弛緩した状態で花梨に寄りかかる。膝から下を机から
降ろしてやり、ちょうど机の上に座るような格好にさせる。花梨は弥生の髪を掻き分ける様にして
抱え込む。額から前頭部あたりを手のひらで撫でる様にしながら腰を支点に頭、首、肩、上半身
が回転するように動かしてやる。
「いい気持ちでしょう、こうやって頭をなでていると真っ白になってきた何がなんだかわからなくな
るわ。なんにもわからない。どんどん頭から流れて行く。なるがままにしておくともっと気持ち良く
なる。もう今まで何をしていたのか、全然わからない。頭の中はもう真っ白。ほら力も抜けてきて、
すごくリラックスしてきた。すごくいい気持ちよ」
弥生の顔からは淫乱さが消え、弛緩しきった表情になっていた。
「ねぇ、座っているところが変な感じしない?」
「…ん…ぅ…ん」
もぞもぞし始めたがピンと来ていないようだ。
「なんだか座っているところが濡れているわね。ちょっと拭いておきましょうか。服も濡れちゃった
みたいだから着替えた方がいいわよ」
全裸である弥生は暗示によって、いつの間にやら濡れた椅子の上に座った為、服が濡れてしま
ったように思いこまされてしまった。
「大丈夫。ここにはあなただけだから服を脱いでこれに着替えて」
花梨が弥生の服を指差す。当たり前のように服を脱ぐ仕草をし、弥生は本来自分の服を着衣し
た。
「ほら、さっぱりしたでしょ」
微かに頷く弥生を別の椅子の所まで連れて行って座らせる。これからが本番だ。体のそれほど
敏感でない部分をゆっくり優しく撫でる様にして、耳元で囁くように深化暗示を再び与える。見る
間に弥生の肩首の力が抜けフラフラになっていくのが分かる。花梨は別の椅子を弥生の座って
いる椅子の横に並べるようにくっつけ、弥生を横に向け花梨にもたれられるように姿勢をゆっくり
と変えてやる。弛緩しきった弥生の体は結構重く感じるが、慣れっこの花梨にとっては力の加え
どころが分かっている。難なく姿勢を変え、花梨の腿から下腹部を寝椅子の背のようにもたれさ
せる。弥生の胸の部分が曲がっている感じになるので、平均より大き目の弥生の胸はより大きく
見える。さっきの裸体が重なり、思わず唾を飲み込む花梨。
「今ちょうど全部の授業が終わったところ。弥生はどこかに向かっているわね?どこに向かってい
るの?」
「生徒会室…」
(…つまんない女ね)
つくづくそう思う。
(ま、その方がこの先は進めやすくて好都合だけど)
「生徒会室の前に着いたわ。そのまま入るの?」
「んーン、意見箱見なきゃ…」
「じゃぁ、意見箱を覗きましょ。あらなんか入っているわよ。」
途端に初めて投書を見つけた時だと思い込んでしまった。
「ホントだぁ…」
本当にうれしそうに微笑む弥生。
「目を開けて…開けても深ぁ〜い催眠状態のまま、今のままの気持ちいい〜〜状態のままだか
ら安心してまぶたを開けられるよ…」
この騒ぎの元である弥生の持ってきた投書を取って貰おうと、すばやく周りを見渡して舞と祥子を
探す。二人は花梨の背後で、いまだに夢中で求め合ってこっちに気づく様子などまるでない。弥
生はまぶたを瞬かせながらゆっくりと反応してきたところだ。スロー再生を見ているかのようなゆ
っくりとした仕草で力なく開いた眼には何も映っていないようで焦点が合っていない。
「あなたの目の前に今箱から取り出した投書があるわよ……見えるでしょ?」
(…ったく)
幻覚暗示を使うなら、なんのためにわざわざ弥生の目を開けさせたか分からない。
「ン…み、見える…」
ずっと幻覚状態でオナニーしていたから幻覚暗示に反応し易くなっているようだ。
「なんて書いてあるの?読んでみて。読んでも意味はわからないわ、ただ書いてある字を発音す
ればいいのよ…」
大丈夫だとは思うが対決姿勢に合った時のことが読むことによって突然蘇り覚醒してしまうかも
しれない。用心に越したことはない。
「…おか、ると…どうこ、う…か、いでへ、…んなこ…と…をされ、まし…た………い、ちのさ……
ん………きさ…ら…ぎさ…りな……」
(……一年三組 如月 紗里奈…か…)
聞き覚えのある名前だった。当然だ。予想通り体操部の中のひとりだった。一年の癖にやたらと
エッチな体つきをしている子だった。しかし腑に落ちない。たしかあの子は特に反応の良かったと
思っていたのに。エッチな体つきの割に全くの晩生だった。晩生には弥生のような堅物とおなじく
淫乱化暗示はあまり効果が出ない。淫乱になるということが理解しにくいからだ。もともと筋金入
りの箱入り娘が大部分を占める名門お嬢様校の生徒であり、『ウリ』を率先してやるような顔黒娘
とは違う。この手の暗示に反応が悪いのはごく当然の事である。弥生に映像を疑似体験させた
のと同様にちょっとした工夫で一旦快楽を教えれば後は簡単。通常セッションと平行して淫乱化
を繰り返すうちに完全なペットになって、肩に手を触れられるだけで軽く絶頂に達するほどのおも
ちゃ振りだったのだ。その紗里奈がなぜ記憶を蘇らせたのだろう。それにたとえ蘇ったとしても充
分承知の上で淫乱化していたはずなのに。意思に反してと言う事は絶対ない。元々そう言う素質
はあったのだが、恥ずかしさのほうがずっと大きく欲望を押し留めていただけなのだ。花梨はそ
の扉をこじ開けてやっただけ。
(まぁいい、後は紗里奈に直接聞けばすむことだし…さて…もうちょっといじってやりましょうか…
せっかく生徒会室に近づいているわけだし…)
「じゃ、生徒会室に入りましょうか」
「誰かいるわね…誰?」
「………分からない……」
「さっき見たばっかりの子じゃない?なんか感じが似ているよ。さっき気持ちい〜事した時いた女
の子の中にいたでしょ」
「……」
「一番最初にあなたの胸を揉んでくれた子よ」
「すごく気持ち良い愛撫をしてくれた子でしょ?忘れちゃ駄目じゃない」
「…あ……」
映像の疑似体験中にある顔写真を見せて顔を焼き付けておいた。
「ほらさっきの感覚がだんだん蘇ってきたよ…あの子にもまれた感覚がまだあなたの胸に残って
いる。顔を見たとたん、離れた場所にいるのに、すぐそばにいてまた胸を揉まれているような感
覚。すご〜〜〜〜っく気持ち良くなっちゃうよ。」
「…ぁン…ン……」
見る見るうちに弥生の顔が赤くなり、悶え始めた。
「駄目よ、すごく気持ち良いけど、こんなところで感じちゃったら恥ずかしいわよ。我慢しなきゃ」
「んふ…んん…」
「そう我慢して、でも我慢すればするほど気持ち良さは強くなるみたい。ほらもう直接触られてた
時のような感覚が来るわよ。でも我慢しなきゃ駄目。あなたは生徒会長なんだから…」
開き気味になっている胸元から手を入れ弥生のブラと肌の隙間に手を入れる。
「ぃやぁっ…あ…んん…」
反対側の手は服の上からも揉みしだく。
「あっ…く…ぁ…ん」
「恥ずかしい恥ずかしい…こんなことで気持ちよがっているところを誰かにばれたらすごく恥ずか
しい…でも…ものすごく感じる…大事な所も濡れて来ちゃったでしょう…ほらっ」
時かに触っている手の指で乳首を摘む。
「ひやぁっ…ぁく……」
必死に声を押さえようとするのかこぶしを口に強くあて始めた。さっきまで伸ばしていた足は立膝
になりもぞもぞさせている。スカートの裾が膝からずり落ち弥生らしい飾り気のない白のパンティ
がチラッと見えている。
「まだ大丈夫よ。あの子はまだ気がついていないわ。でもこっちを振り向きそう。目が合うと、びく
んって来ちゃうわよ。すごく良い気持ちになっちゃう。我慢しないと気がつかれちゃうけど、我慢で
きるかしら…」
「ぁ…ん…」
「ほら、こっちのほうに向いてきたわ。ほら、ほら、ほら…もうすぐ目が合っちゃう」
「ぁン…ンン…ン」
「ほうら目が合った!」
「ぅく!!」
一瞬軽く痙攣を起こしたかのようだった。花梨の膝の上でびくっと仰け反る。軽くイッたのだろう。
息が上がっているようだ。
「大丈夫何とか気がつかれずにすんだようね…でも安心は駄目よ。後姿より正面の方があなた
の思い出す快感はずっと強いんだから…」
折角着せた制服だったが面倒なので、捲り上げてブラを弛めて直に両方の胸を揉む。
「…!!んぁ……」
「不思議そうな顔をしているわよ…我慢我慢……ねぇ…誰?前にいるの」
「さっきすごく印象に残って顔だけは覚えているんじゃない?あなたの嫌いな人でしょ?」
「あ…ぁンン……」
「高坂由希でしょ?副会長の…」
「うん…んぁ…」
「あなた嫌いな副会長の由希に揉まれてすごく気持ちよがってたでしょ。思い出してくるわよ」

織部弥生が皆に煙たがられているのは既に語った通りだが、副会長の高坂由希からの嫌われ
ぶりは他の日和見的な行動とは一線を画していた。弥生が陰謀で会長に推されたとき二年生の
中でそれを一番推し進めていたのが由希だった。由希は会長の座を狙っていたのだ。三年は遅
かれ早かれ受験などで引退する。そうなれば副会長として、そして上級生の陰謀に協力的という
ことで好印象を作っておきたかったのだ。だが弥生は遠慮もせずに会長の座に座り、三年生の
委員はほとんど入れ替えられてしまった。弥生としては邪魔を排除するとか言うつもりなど毛頭
なく、ただ単に事実を先生達に報告しただけなのだが、結果的にはどう見ても『粛正』にしか見え
なかった。弥生には悪気がなかったので、会長に推してくれた由希には感謝しているぐらいなの
だが、由希自身は他の委員が粛正に恐怖して生徒会内の賛同者を失ってしまい、挙句に中心人
物のひとりであった自分が粛清されないのは弥生に生殺しにされていると勝手に勘違いして嫌う
どころか憎しみすら募らせていると言う始末ある。その表現があまりにも露骨なので弥生としても
由希の事を嫌な存在に感じ距離を置くようになっていたのだ。だから弥生にとって由希に触られ
て感じてしまうと言う暗示はレイプされているのに感じてしまうようなもので単なる催淫暗示以上
の影響力がある。そう言う効果を引き出すために花梨は先ほどの催淫誘導中に顔と名前を一致
させないようにしながら由希の顔のみを弥生の心に焼き付けておいたのだ。

「そして今その余韻であなたはもう狂いそうなぐらい感じている…でしょ?」
言うが早いか既にシミを作るまでになっていた弥生のパンティに指を滑り込ませる。
「!!…あぁぁ…んぐ…!」
「気がつかれちゃうわよ。我慢しなきゃ…でもものすごくいい…でも我慢よ……ほらほらほらほら
ほおら」
言葉に合わせて胸とクリトリスをリズミカルに愛撫する。
「…ぁあんっ……なぁっ!ぁあ!…あぁ…」
必死で声をこらえるが叫び声も漏れ始めている。
「声を上げちゃダメでしょ?気が付かれちゃうわよ、大嫌いな由希に欲情しているなんて…恥ず
かしい…我慢よ我慢」
しかし手は相変わらずそしてより煽情的に愛撫を強める。
「はん!んん…!ぁなぁあ…んぁ…」
「ほらいつもの冷たい軽蔑するような目つきであなたを見つめているわ…嫌な奴よね…でもその
目つきがものすごく感じる…もう一度あの手で揉みくちゃにされたい…口の中を舌でかき回され
たい…指でお●んこをグチャグチャにされたい…そうでしょ?」
「んんんぁなんん…ぁぁぁあ…」
「されたいんでしょ?されたいならちゃんと言うの。ハイと言いなさい」
「…んぁ・・は…は、ハイぃ…ぃ」
「ンふふふふふふ…いい子ね…でも大嫌いな由希にそんな恥ずかしい事言える?あなただって
生徒会長としてのプライドがあるでしょ?してほしいなんて言えないでしょ?」
「…い、いえ…なぁあ…ぅ…いいぃぃぃ…」
「そう言えないわよね…でも、あなたはこの感覚を絶対忘れられないわよ…どんなときも由希を
見ると今以上に欲情しちゃう…でも絶対そのことは言っちゃダメ…あなたは生徒会長…生徒の見
本よ…同性に欲情しただなんて変態じみた事言えない」
花梨の手の動きはさらに嫌らしさを増し、弥生はいよいよもって限界に近づきつつある。
「欲情しちゃったらトイレでオナニーをすればいい。声を出さずにね。そうすれば由希がよりあな
たを気持ちいい世界へ連れて行ってくれるわ」
「そしてその夜は必ずあなたのベッドの中に由希が現れるの…あなた一人部屋でしょ?遠慮なく
エッチできるわよ…それまでは我慢よ…」
「ほら、あなたを見つめている由希がイライラした顔つきになっている…あなたがいつまでも見つ
めているから…でもその目つきもいい…冷たい目つきで睨まれているのがものすごぉ〜くいい…
もうイッちゃいそうよ」
「んあぁ!!…んなぁ…ぁぁあん!」
「由希の手が伸びる…あなたを突き飛ばそうとしている…このスピードなら避けられる…でも避け
たくない…触られたい…突き飛ばされたい…触られたらイッちゃう…イクわよ!」
いきなり弥生の右肩を軽くはたく。途端に弥生の体が反り返り声にならない呻き声をあげて脱力
してしまった。
「いい〜〜気持ちでしょう…もう完全に癖になったわよ…あなたは由希を見ると必ず欲情してしま
う…そう、あなたは由希のことが好きなの…そして由希もあなたのことが好き…今の感覚でそれ
は間違いないわ。好きだからすごく気持ちよかった。でしょ?」
「気持ち…よかった…」
「だから好き」
「…好き……」
「でも表面的には憎しみあっている。普通には仲良くなれない。でもあなたは由希が欲しい。由希
ともっとエッチなことがした。由希にあなたの気持ちを伝えたい。伝える方法を知りたいでしょ」
「…は…い…」
「伝えるにはオナニーをすればいいの。由希を見た後あなたはものすごくエッチな気持ちになる。
それは由希からの愛があなたに届いているからなの…だからエッチな気持ちになってしまう…そ
の気持ちに応えるにはオナニーするしかないわ…分かる?」
「は…い…」
「人に見つからないようにトイレに行って、声を出さずにオナニーをするのよ。そうすればその夜
はあなたのベッドの横に由希が来てくれるわ。ベッドに横たわると由希があなたを抱いてくれる。
遠慮なく気持ちいいことが出来るわよ」
ゆっくりそして軽くだが弥生の胸を服の上から触れるように愛撫する。
「すごく気持ちいい…遠慮なく出来る…我慢する必要はないわ…でもこのことは絶対に秘密、ば
れたら大好きな由希に迷惑がかかるし……あなたも変態呼ばわりされてしまうわよ」
記憶封鎖や操作はそうしなければならないと本人に思わせることによって効果を高める。花梨の
常套手段である。この下地の上に、バレたくないから忘れていたいと言う本人の意志を引き出し
て健忘暗示を施せばほとんどの場合完璧。完全に脱力しきっているが花梨の暗示には集中して
いる。まぶたがトロンとしている割りに、眼は花梨に釘付け。この目つきがたまらない。もう下着も
ヌレヌレになっているしもう一度淫乱化させてめちゃめちゃにしてやりたいと言う欲望が抗し難い
圧力を持って高まるが必死の思いで押し留める。まだやることがある。
「…そして……眠り姫…と言う言葉を聞くとすぐに今と同じ深〜〜い催眠状態に落ちてすごく気持
ちよくなれるわ…。眠り姫と言われると今と同じ状態になるわよ……なんの言われたらあなたは
どうなるの?繰り返してみて…」
「…眠り姫…と言われたら…また…今と同じ…感じになる…」
「そしてそれはあなたにとってとても嬉しいこと…繰り返して…」
「…嬉しいこと…」
「じゃ、これから生徒会室に戻りましょう。随分遅くなっちゃったから。生徒会室についたらあなた
は完全に目を覚ますけど目を覚ましたら今までのことは全部、投書があったことすら忘れている
わよ。ほらほら…こうしていると頭の中を消しゴムで消されているような感じ…すっきりしてすごく
気持ちいい…」
花梨は弥生の両方のこめかみを軽くさするような手つきで続ける。さすられている弥生の頭はか
すかに揺れ、弛緩しきった顔はだらしなく口を半分あけた状態になっている。
「でも私が言ったことは必ず起きるわよ。由希を見たときや私が眠り姫と言った時は必ず言われ
た通りに反応するけど、そうなるまでは一切思い出せない。そしてそれ以外は、もう何があったの
かすら分からないほど頭の中から消えちゃうわ…生徒会室に戻りましょ。生徒会室に近づいたら
完全に目がさめる……はいっ」
擦っていたこめかみの部分を指の腹で弾くようにしてやる。弥生の顔つきはまったく変わっていな
いが、のっそりと起き上がるとふらふらした足取りでオカルト同好会の教室を出て行った。その後
姿を見ながら、もうちょっと遊びたかったなどと考えているうちに、冷や汗をかくような事に気が付
いた。
(あのパンティ…どう解釈するだろう…ヤバイかも…)
やはりヌレヌレになっていてスカートまでシミがついている下半身の処理を始めながら、横で余韻
に浸っている舞と祥子の二人に呆れ気味の視線を投げる。
「ちょっといつまでやってんのよ。私、後追わなきゃいけなくなったから!」
「な、なぁ〜〜〜にぃ〜〜〜?」
「ねぇ、ちょっとスカート貸してよ!!」
「むわぁ〜〜〜いぃ」
(パンティ、パンティ、パンティ…あ〜〜〜ない…あと他にあったっけ)
焦れば焦るほど見つからないものだ。普段からやることがやることだけに下着などの予備は備え
てあるのだが、たまに補給が間に合っていない時がある。まさに今がその時だった。下着入れに
使っている三つの鍵付き引き出しの底には、ふざけたつもりのメッセージ、『売り切れ』、『はず
れ』、『また今度(^▽^)/』の張り紙が花梨を余計にイライラさせる。しかも書いたのは自分だか
らなおさらだ。チラッと時計を見るともう五分以上経っている。
「これ履くぅ〜〜〜?えへへへへへへぇ〜〜〜」
らりった調子の声で祥子が自分のヌレヌレになったパンティを指先で回していた。
(付き合いきれん!)
花梨は一瞥すると相手にせずジャージの下をノーパンのまま履き、奪ったスカートを巻きつける
ように止めて、さっさと駆け出していってしまった。生徒会室は新館最上階の四階。オカルト同好
会の部室があるプレハブ作りの臨時校舎からは一階まで降り、本館から渡り廊下を伝って新館
に行ってから四階まで昇らなければならない。花梨は走りながら自分の後処理で結構時間を食
った事を認識した。駆け足で追っているのに弥生の姿は見えない。
(やっばいなぁ…大丈夫だとは思うけど…何とか生徒会室に行く前に捕まえなくちゃ…)
結局、生徒会室のすぐ手前まで迫った弥生の後姿をはるか前方に認めるまで見つけることが出
来なかった。
(あ、遅かった?)
正気に戻って万が一のことが起きたとき一番間抜けな位置にいることになるのは花梨である。早
鐘のように打つ胸を押さえつけながらそろそろと近づく。弥生は生徒会室に入ろうとしたところで
なにやらびくっとしたかと思うと戸のところへしがみ付いて寄りかかるように動かなくなってしまっ
た。忍び足ですぐ後ろまで来た花梨はそこで初めて何が起こっているのかが分かった。生徒会室
に高坂由希がいる。生徒会室の後ろの入り口にいる弥生からは背中しか見えないが、嫌いあう
ほど普段から意識している間柄、わからないはずがない。その姿を見て早速、後催眠暗示が発
動された。弥生は花梨が後ろから眺めているのにも気が付かず、寄り掛かった引き戸と弥生自
身の体で自分の乳房を挟むように刺激し始めている。引き戸に左肩から寄りかかり左手はこれ
以上体が教室内に入らないように支え、右手はスカートの上からあそこを刺激する。顔を廊下側
に向け頬を戸に押し付けるようにして声を堪えている。その異様な雰囲気に中にいた由希が気
付いた。怪訝そうな表情で肩越しに後ろを振り返ると弥生の体の一部が認められた。由希も弥生
の顔を見なくても背格好で分かる。聞こえるように舌を鳴らすとまた自分の世界に戻った。弥生
はもう我慢できないと言わんばかりの状態になり、足を引き摺るにしてトイレに向かっている。弥
生はやっとの思いでトイレに入ると一番奥のブースに入り洋式便座に座ると早速始めた。タンク
が背もたれ代わりになってちょうどいい具合に体を支える。最初はもぞもぞと静かだったがまもな
く息が荒くなり、堪えたような喘ぎ声がかすかに聞こえてくる。
「あぁ…ゆ、由希…いいわ…もっと…ああん…ぁ、そこぉ…」
「由希ぃ…舐めて……そう…そこよ…ぁぁあ!」
「もっともっと、強く…してぇ…由希ぃぃぃ…気持ちいい」
「気持ちいいよぉ…んなぁ!…ふぁ…ぁぁ…ぁあぬ…」
完全に由希とのレズSEX状態のつもりになっているようだ。時間にして十分ほどのち、くぐもった
叫びとともに静かになった。花梨はそれを確認すると満足げな表情でその場を後にした。

(続く)


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