デバイス市場
アジア地域を中心とした携帯電話契約数の増加と、スマートフォンの需要拡大によって、2015年度の世界におけるスマートフォンを含む「携帯電話端末」の販売台数は20億台に達します。今後も、新興国における低価格スマートフォンの販売台数の増加が市場を牽引していきます。
日本市場では、フィーチャーフォン(従来の携帯電話端末)からスマートフォンへの移行の鈍化、および買い替えサイクルの長期化に伴い、携帯電話端末の販売台数は徐々に減少に向かい、4,000万台規模から3,000万台前半にまで落ち込みます。
「タブレット端末、電子書籍端末」は、2020年には世界で3.8億台、日本では1,300万台が販売され、パソコンの出荷台数を上回ると予想されます。タブレット端末は、先進国においてはパソコンやモバイルノートパソコン(持ち歩きできるA4サイズ以下のパソコン端末)の置き換えとして、新興国では1台目のパソコンとして普及が進んでいますが、スマートフォンの大型化などにより、成長率を急速に鈍化させています。
「超高精細テレビ」の保有世帯数は、2014年度末の166万世帯から、テレビの買い替え需要と4Kテレビへの買い替えを主な理由に、2020年度末には約2000万世帯まで拡大します。同様に、「インターネットテレビ」の保有世帯数は、2014年度末の1831万世帯から、より高機能なテレビ端末への買い替えを主な理由に、2020年度末には約3,000万世帯まで拡大します。そのうち、「次世代スマートテレビ」は、2020年度末に約1,300万世帯にまで拡大すると予測されます。
「コンパクトデジタルカメラ」は、スマートフォンの普及により、世界的に台数・金額ともに縮小しています。2014年のコンパクトデジタルカメラの市場は、販売台数ベースで前年比約75%と減少し、さらに2020年の販売台数は3,000万台強と、2011年の市場のピーク時に比べて4分の1にまで減少すると予想されます。
「ウェアラブル端末」は、市場の起爆剤と思われたアップル社の「Apple Watch(アップルウォッチ)」、グーグル社の「Google Glass」などブランド力のある端末の投入の遅れや、販売力のある携帯キャリアの参入の遅れにより、2014年の国内販売台数は44万台にとどまる見込みですが、その後市場が拡大し、2020年には556万台に達すると予想されます。
ネットワーク市場
「固定ブロードバンド回線」の加入件数は、 2014年度末の3,310 万加入から、2020 年度末には約3,540 万加入に達すると予測されます。
固定ブロードバンドの中心である光回線においては、市場の約7割(サービスベース)のシェアを保有するNTTが、「サービス卸」の開始を2014年5月に発表しました。通信事業者のみならず、多様なプレーヤーが光ファイバーを利用したサービスを提供していくことにより、新サービスの創出や既存の光回線インフラの効率的な利用が促進されていくことが期待されます。
「携帯電話回線の契約」数は、タブレット端末や通信モジュールが組み込まれた機器の増加、 多様なMVNO(Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)の登場などにより、 2014年度末の約 1億4,805 万回線から、 2020 年度末には 1 億 6,104 万回線に増加します。
「モバイルキャリア・ワイヤレスブロードバンド」の分野においては、これまでのような携帯電話、スマートフォンに加えて、M2MやIoT(Internet of Things)と呼ばれるさまざまな機器における通信機能の付加が進んでおり、異業種との融合による利活用が進んでいくと考えられます。また政府の政策においてMVNOの普及促進が掲げられており、携帯電話サービスの多様化も進む見込みです。
プラットフォーム市場
「B2C EC市場」は、10兆円を大きく上回り、2020年度には25兆円を超える見込みです。スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、自宅のパソコンからだけでなく、時間や場所を問わずにECを利用することができるようになってきたことが、市場の成長を後押しします。今後は、従来からECが利用されてきた書籍や電化製品だけでなく、生鮮食品や、ファッション、医薬品をECで購入する消費者が増えていきます。
「スマートペイメント」の市場は、対面決済、非対面決済とも堅調に拡大していきます。クレジットカードの利用額は今後も堅調に拡大し、2020年度には70兆円に達します。2020年の東京オリンピックに向け、キャッシュレス決済の推進が見込まれており、新たなビジネスチャンスが生まれています。
「インターネット広告」の分野では、特にスマートフォン利用者において、ブラウザからよりもアプリからのネット接続が増加することから、アプリ内のリワード広告や、SNSを活用した新たな広告手法が登場し、一定の成功を収めると見られています。
「ポイント」市場は、2020年度には1兆756億円に達します。大手企業を中心に、ポイントの付与率を全体として下げるサービス改定が行われています。これは、一見サービスの改悪に見えますが、むしろより優良な顧客に絞って優遇しようとする姿勢が現れているものです。今後、各企業にとって「誰が大事な顧客か」に基づいた施策が重視される傾向は強まっていきます。
コンテンツ配信市場
「ゲーム」市場では、ハードウェアの市場規模は、2020年度には831億円と予測されます。2014年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたPlayStation 4は、国内外で高い評価を受けており、海外のマイクロソフト社が提供するXboxプラットフォームの市場シェアを奪っています。しかし、新型ハードウェア投入の市場への効果は年々弱まっており、市場規模の縮小は続いていくものとみられます。
「ソフトウェア」の市場規模は、2020年度には1,657億円と予測されます。「ハードウェア」ほどではないものの、市場規模の縮小は避けられず、ゲームソフトの開発企業も開発リソースを従来型・課金型双方に最適に振り分けることが求められます。
「ソーシャルゲーム」の市場規模は、2020年度には8,203億円と予測され、今後もコンテンツ配信市場を牽引していきます。
「電子書籍・雑誌・新聞」市場は今後も成長を続け、一般消費者向けおよび企業・団体向けの合計で、 2014年度の2,210億円から2020年度には3,928億円にまで成長します。市場が拡大する一方、電子書籍・雑誌・新聞などの提供基盤の集約と寡占化が進み、コンテンツホルダーにとっては、既存の販売以外の形態、たとえば広告収入やデータベースサービスなどの新しい事業機会を捉えることが求められます。
「動画配信」市場は、NTTドコモの「dビデオ powered by BeeTV」など、携帯電話事業者が自社端末向けに提供するサービスの普及や、日本テレビ放送網が買収した「Hulu (フールー)」など、月額固定料金で豊富な映像コンテンツを視聴できるサービスの利用拡大により、 2020年度には2,000億円を超える規模に成長すると予測されます。
ソリューション市場
企業の業務システムを支える「データセンター」・「法人ネットワーク」は、合わせて1.7兆円に達する大きな市場セグメントとなっています。一方で、少子高齢化による国内経済成長の低下局面を迎え、事業者は、市場競争力の強化、成長する市場セグメントへの重点化が求められます。
データセンターと法人ネットワークに近い領域として現在、高い成長性を示す市場セグメントは「クラウド」です。しかしクラウド化には、ITサービスの価格低下を引き起こす潜在要因があることから、サービス提供事業者は顧客企業のクラウド利用を前提としつつ、サービスの付加価値向上の議論を進める必要があります。
「M2M」は近年、成長著しい領域となっています。2018年までの予測としては、遠隔検針そしてスマートグリッドに向けたエネルギー領域が成長を牽引し、その間に他の産業分野にも拡大してゆくことが見込まれます。
「情報セキュリティ」市場は、スマートフォンやタブレット端末を用いてインターネットを利用する機会が増大していることに伴って、新たな脅威の出現が続いており、需要は堅調であると予測されます。