顧客情報管理(CRM)システム大手のシナジーマーケティング。TOB(株式公開買い付け)を通じてヤフーの完全子会社となり、12月26日に東京証券取引所ジャスダック上場が廃止される。関西のIT(情報技術)ベンチャーの旗手として単独で成長をめざしてきた同社は、なぜ大手の傘下入りを決めたのか。背景には上場企業の「名」を捨ててでも変化の激しいIT業界で勝ち抜き「実」を狙う、谷井等社長のしたたかな経営判断があった。
■単に「大手にのみ込まれる」ではない
「社長からお話があるので朝礼台に注目してください」――。8月7日午後3時、シナジーマーケティングの大阪本社。すると谷井社長とともに姿を現したのはヤフーの宮坂学社長だった。「このたび、一緒にビジネスをやることができ、うれしく思います」と宮坂社長があいさつすると社内のそちこちから驚きの声が上がった。
同日ヤフーは、1株1006円でシナジーマーケティング株を買い付け、総額92億円を投じて完全子会社にすると発表した。M&A(合併・買収)は谷井社長ら一部の幹部のみで検討を進めた極秘案件だった。
今回のM&Aは「大手にのみ込まれる」という単純な図式ではない。というのも、もともとシナジー側からヤフーに持ちかけた案件だったからだ。
初めて両社が接点を持ったのは2014年の始めごろ。シナジーの谷井社長とヤフーの幹部がカジュアルな会食をし、デジタルマーケティングの話題で大いに盛り上がった。インターネット広告大手のヤフーとCRMで国内草分けのシナジーが組めば、業界の一大勢力となれる――。CRMだけでは顧客のニーズに応えられないという思いがあった谷井社長だけに、「ノーダウト(疑いなく)でこれだ」と確信、3月までに正式にヤフーに経営統合を申し入れた。
背景にあるのは外部環境の急速な変化だ。これまでネット広告では、検索エンジンのトップページなどに一律にバナー広告を出すやり方が主流だった。ところが最近はウェブサイトのアクセス解析などビッグデータ技術が急速に進化、サイトを訪れる人によって広告を出し分けることが可能になった。例えば、米アマゾン・ドット・コムのサイトで手帳のページを見ていた人がヤフーのサイトを訪れると、同じく手帳の広告が表示される。
デジタルマーケティングの関係者の間では昨年ごろからDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)と呼ぶ言葉が飛び交う。消費者の行動パターンをデータとして解析していかに効果的に広告を出すかに関心が移りつつある。その前提に立つと、「今後はビッグデータという大きな流れのなかで広告とCRMが融合していく」と谷井社長は考えた。
シナジーマーケティング、ヤフー、CRM、宮坂学、セールスフォース・ドットコム、インターネット広告
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