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「儲かる」っていう理由で始めたことより「面白いから」って始めたほうが売れる時代

消費者の声がカンタンに広がる時代

ソーシャルメディアがこれだけ発達して、普通の人がスマホで24時間情報にアクセスする時代。
会社や製品の情報は、すぐに手に入ります。
価格もすぐに比較できるし、評判だってすぐにわかる。

「こういうビジネスモデルにしたら、儲かる」
「こういう製品を作ったら儲かる」
「こんな店を出店したら儲かる」

儲けるためという動機でやったものは、売れない時代になる。
そう思うんです。
お客さまのため、お客さまのしあわせのためにビジネスをしている。
そういう企業理念を持っている会社は多いと思うけど、それは口先だけ、ベースの発想が「儲けるため」という会社が多い。
なんとかお客さまを騙してでも非常識なほど高い製品を買わせよう。
ともかくウチの売上を目標額までにするために、なにがなんでも売りつけよう。
そんな会社ってあります。

お客さまのしあわせのために会社をやっているのであれば、それが一番の目的にならなければ、おかしな話です。
お客さまのしあわせのために、売上が予算に達しなくても、いい。
会社の規模だって小さくしていってもいい。
そういう覚悟をもたなければ、これからの時代はますます売れなくなるのです。
だって、お客さまは無理やり買わされたことはわかるし、それが嫌な体験だったら、決してリピーターにはならないから。

自社の商品が好きかどうか

経営者や働いている人たちが、自分の商品が好きかどうか。
これはとても大切なこと。
こういう視点の欠如が、あなたの会社やあなたが成功しない原因だったりする。

たとえば、あなたが外食をしようとしますよね
ふたつレストランがあります。

ひとつは有名シェフが経営している、全国展開しているお店です。
このシェフは以前、オーナーシェフでした。
料理を作ることが好きで、お客さんに美味しいと言ってもらえるのが悦びでした。
とても美味しい料理が話題になって、たくさんのお客さんが来店するようになり、そこに目をつけたベンチャー・キャピタルが大金を注ぎ込んで、全国展開をさせたんです。
店は順調に数を増やし、会社の売上も伸びていきました。
そのうち、シェフは料理を作らなくなってしまいました。
なぜなら、やらなければならない仕事がたくさんあったからです。
お店はどんどん増えていくし、会社も大きくなっていきますから、料理なんて作っている暇はなくなってくるのです。
シェフは、自分の店の数が増えることや売上が伸びること、来店客が増えること、利益や儲けに悦びを感じるようになっていきました。
「あ、もしかするとオレは料理を作ることより、ビジネスがやりたかったんだ」と思うようになりました。

もうひとつのお店のシェフもオーナーシェフです。
美味しい料理を作ることに情熱をもっています。
料理をお客さんに食べてもらい、美味しかったねといってもらえることに悦びを感じているシェフです。
自分の仕事が、好きで好きでたまらないのです。
そして彼は、自分の好きな「料理」で、お客さんを悦ばすにはどうすればいいかを、いつも考えています。
お客さんが誕生日だと知ると、特別な料理を作ってあげます。
ささやかだけど、心暖まるプレゼントだって用意します。
初めてのお客さんにだって、悦んでもらえるよに、精一杯サービスしようとします。
だから料理だけでなく、食器や盛りつけ、店に掛ける額、BGMのことだって考えます。
どうしたらお客さんに悦んでもらえるだろう。
どうしたらやっていて楽しい店、お客さまも楽しいと感じてくれる店になるだろう。

あまり売上とか、利益率とか、来客数とか、前年比とかは興味がありません。
そんなに意味を感じていないからです。
いつもたくさんのお客さんが来店してくれているから、もちろん儲かっています。
お客さんがお客さんを連れてきてくれます。

ハワイが好きなオーナーがやっているハワイアンカフェは楽しい雰囲気 儲かるから始めたわけじゃなく、好きだから<「アロハス」大阪堺市>

ハワイが好きなオーナーがやっているハワイアンカフェは楽しい雰囲気
儲かるから始めたわけじゃなく、好きだから<「アロハス」大阪堺市>

さて、どちらも同じ値段だとしたら、あなたはどちらの店で食べたいですか?
食材の原価、人件費、売上、客単価、対前年比、儲けばかり考えている有名シェフのお店と、料理を作ることが大好きで、お客さんに美味しいと言ってもらえることに悦びを感じているシェフの店と。

当然の話ですが、後者のシェフの店に行きたいです。
好きなことをしている人がしてくれるサービスは素晴らしいに決まっています。
経営者でも、サラリーマンでも、フリーターでも、仕事に悦びをもっている人にはかないません。

あなたは自分の商品が好きですか?
この視点をもてないことが、あなたのビジネス上の問題点なのです。

そば好きの店主がやっている店のそばはきっと美味しい

以前、長野県のそば屋さんと話したことを思い出した。
こんなことを言っていた。

「最近のお客さまは、そばをすすらないのです」

そばはすすって食べます。
それがある意味、正しい食べ方。
思いっきり音をたててすする。
それが美味しい。

そのそばをすする音を、厨房から聞いていると、「あ、美味しく食べてもらっているんだな」そう思ってしあわせな気持ちになるそうです。
たしかに食事の時に、音をたてるのは、マナー違反としつけられます。
でも「そば」は例外です。
すすって食べる。
古典落語の「時そば」を聞いていると、美味しそうにすするのが上手な落語家さんは、リアルの美味しそうです。
そういう食文化。
(だから、そばを食べる時には、すすって食べたほうがいい)

この店主の話を聞いていると、そばが大好きなんだなっていうのが伝わってきます。
そばが大好きな店主がやっている店のそばは、美味しいに決まっていますよね。

蕎麦が大好きな店主がやっているそば屋は美味しいにちがいない

蕎麦が大好きな店主がやっているそば屋は美味しいにちがいない

大企業のメーカーを見ていると、どうも経営陣に「自分の商品が好きな人」がいないんじゃないかと思うことがある。
自分の商品が大好きっていう人より、マーケティングが優れているとか、営業力があるとか、そういう理由で社長やえらいさんになっているじゃないんだろうか。
自分の商品に興味がなかったら、自分の商品が好きでも嫌いでもなかったら。
そんなの、売れるわけないと思う。
個性のない、どこにでもある商品になってしまいます。

大きな会社だから、有名な会社だから、安定している会社だから。
そういう理由で入社してきた社員が多くなればなるほど、その会社は苦しくなる。
そんな時代になってきたのです。

そばが大好き。
自動車が大好き。
オーディオが大好き。
化粧品が大好き。
お酒が大好き。

自分の売っているものにどれだけ「愛」があるか?
そういうことが、これからの時代、大切になってくる。
ある意味、それが真理です。

モノづくりの悦びを忘れたメーカー。
サービスすることの悦びを忘れたホテル。
モノを売ることの悦びを忘れた百貨店や商店。
人を助ける悦びをもたない医者。
教育することの悦びを置き去りにしてきた教育者。

見渡してみると、こういうところが多い。
そんなところから買いたくないし、そういうところとはつきあいたくない。
そういうことです。
だからそういう会社は結果、儲からなくなるのです。

でも世の中変わりつつあります。
真理に沿ったビジネスをやっているところが増えてきます。
世の中の人々も気づいてきます。
だから、真理に沿ったビジネスをすることが大事なんだと思う。

「迷ったら、どちらが儲かるかではなく、どちらが楽しいかで判断しよう」

まさに、エクスマの考え方が重要になってくるのです。

名古屋に向かう新幹線で、気持ちのいい窓外を眺めながら思っていたのは、概ねそんなことだ。

 

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藤村 正宏
1958年、北海道釧路生まれ。著書「モノを売るな!体験を売れ!」で提唱したエクスペリエンス・マーケティング(通称エクスマ)の創始者。集客施設や企業のコンサルティングを行っている。コストをあまりかけない、誰でもカンタンにできる手法で、圧倒的な成果をあげている。 執筆活動、講演活動もする。現在フリーパレット集客施設研究所主宰。

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