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【埼玉】

民主主義の礎再認識を 「郷土の誇れる出来事」秩父事件から130年

秩父事件130年記念の写真展で、ゆかりの地について話す品川さん=秩父市で

写真

 明治政府の政策で困窮した農家らが蜂起した秩父事件から今年で百三十年。長年にわたり「暴徒」とされた関係者の復権などに取り組む「秩父事件研究顕彰協議会」は、秩父市上町の矢尾百貨店五階で、記念事業の写真展を開いている。協議会の会員たちは「現代の民主主義の礎となった事件。郷土の誇れる出来事としてあらためて知ってほしい」と呼び掛けている。十日まで。 (羽物一隆)

 展示写真は、事件の中核となった困民党の幹部や、決起場所となった秩父市下吉田の椋(むく)神社、当時をしのばせる街並みなど三十点。風景は三十〜四十年前に撮影したものが多い。出品した協議会員の品川栄嗣さん(77)=東京都多摩市=は「開発が進み、事件当時をしのばせる光景は少なくなった」と話す。

 品川さんは秩父市上町出身。地元にいたころは事件について聞く機会はなく、都内で働いていた約四十年前、古本屋で買った本で読んだのが初めてだった。興味を持って調べるうち、事件関係者が「お上に逆らった暴徒」と扱われていることを知った。

 事件関係者の復権を目指す動きは、地元でも一九七〇年代に本格化していた。品川さんらが遺族を訪ねて史料を集め、農家らの蜂起が善政を求めた行動であったことを確信。品川さんらは八四年の百周年集会で「自由と民主主義の先駆的活動だった」とアピールし、翌八五年に協議会を発足させた。現在は全国に約百五十人の会員がおり、史跡めぐりなどで事件を紹介する活動をしている。

 会長の篠田健一さん(70)=小鹿野町飯田=は「憲法も国会もなかった時代に、安心して暮らせる世の中を命懸けで訴えた人々がいたことを再認識できる」と話していた。写真展は午前十時〜午後五時(十日は午後四時まで)。入場無料。

 九日は秩父市下吉田の吉田農村環境改善センターで、百三十周年記念集会を開く。同日午後二〜四時には、一九八〇年放送のNHK大河ドラマ「獅子の時代」で、秩父事件に加わった元会津藩士をモデルにした人物を演じた俳優の菅原文太さんが講演する。参加費は一般千円、高校生以下五百円。記念集会の問い合わせは、吉田で「草の乱」を見る会(道の駅龍勢会館内)=電0494(77)0333=へ。

 <秩父事件> 1884(明治17)年10月31日から11月9日にかけて埼玉、群馬、長野などの民衆数千人が蜂起した事件。自由民権運動の流れをくむ出来事としても知られる。明治政府のデフレ政策で生糸価格が暴落し、増税も加わって困窮した養蚕農家や自由党員が「困民党」を組織。11月1日に椋神社(現在の秩父市下吉田)で武装蜂起し、一時は現在の秩父市中心部に当たる大宮郷を占拠した。政府側は鎮圧のため憲兵隊などを動員し、困民党側は長野県南佐久方面まで退いたが壊滅した。

 

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