レンディングクラブ(ティッカーシンボル:LC)が近くニューヨーク証券取引所にIPOされます。

この企業は金融サービス・セクターとしては極めて稀な、イノベーションを持ち込む企業と言えます。

同社は個人投資家からお金を集め、それを個人の借り手に融資するという業務を行っています。

普通、アメリカの消費者がクレジットカードでお金を借りると金利は約22%します。その一方で米国の銀行の普通預金口座にお金を預けても利子は0.06%程度しかつきません。

すると極めて単純化して言えば、この二つの金利の差を銀行がポケットに入れているわけです。

これは結構、暴利ですね。

オンライン・マーケットプレースを利用すれば伝統的な銀行より借り手は安い金利でお金を借りることができるし、貸し手ももっと高い利子をチャージすることが出来ます。

その理由はオンライン・マーケットプレースは費用比率が低いからです。銀行の費用比率が5~7%なのに対して、レンディングクラブの費用比率は2%に過ぎません。

いま借り手がクレジットカードをやめレンディングクラブから借り直すと金利が22%から14.8%に下がります。

いま貸し手が銀行の普通預金をやめレンディングクラブに出資すると利子は0.06%から8.6%に増えます。

このように資金の出し手にとっても、借り手にとってもWIN-WINの関係が築けるのです。

レンディングクラブにとって目先のターゲット・マーケットはクレジットカード融資残高のうち特に金利が高い3,900億ドル相当です。

これに加えて将来は3.3兆ドルとも言われる消費者金融市場、さらに13兆ドルをいわれる中小企業向け金融などがターゲットになります。

お金の出し手は個人だけでなく大学の基金などの機関投資家も含まれています。

レンディングクラブの特徴はサービスが早い、効率が良い、リスクがハッキリわかる、透明性が高い、隠れたフィーが無い、などです。

レンディングクラブの典型的な借り手はFICO(ファイコ)スコアで700点程度の個人で、世帯所得は7.2万ドル、勤続年数は7年、平均ローン残高は1.4万ドルといった感じです。また彼らはレンディングクラブを利用することで平均して6.4%程度、金利を下げることに成功しています。

一方、出資者の側からみると、まるで個人が銀行のようにお金を貸せることになるので、株式投資や投資信託など、これまでの利殖の方法に加えて、リスク修正後リターンが高い、全く新しい財テク機会が出現したことになります。

レンディングクラブでは膨大な過去データにアクセスし、瞬時にアナリシスをかけることでローンをプライシングします。普通、返済は固定金利でスケジュールはきっちり決まっています。

レンディングクラブはそのような小口のニーズを集約し、証券化します。これは基本的に住宅ローン証券の証券化などと同じですからレンディングクラブが銀行のように資本準備金を積む必要はありませんし、預金保険機構への拠出も必要ありません。

さて、このIPOですが今回売出し5,770万株のうち5,000万株が新株で、残りが既存株主からの売出しとなります。初値設定は10から12ドルで値決めは12月8日の週です。

幹事構成はモルガンスタンレー、ゴールドマンサックス、クレディスイス、シティとなっています。