バター品薄:酪農家減少「生乳足りない状況は変わりない」

毎日新聞 2014年12月04日 21時31分(最終更新 12月05日 00時39分)

生乳生産量の推移と酪農家戸数の推移
生乳生産量の推移と酪農家戸数の推移

 大手乳業4社が4日、12月のバター供給量を増やす方針を示したことで、最需要期のクリスマスを前に、全国で深刻化していたバター不足は解消に向かう見通しとなった。しかし、北海道などで酪農家戸数が減少する中、バターの原料となる生乳の生産量の減少には歯止めがかからない状況だ。バター不足は今後慢性化する恐れもあり、農林水産省などは生乳の生産量拡大に向けた早急な対策が求められる。【平地修】

 「安心して必要な量を必要な時に購入していただく」。農水省の担当者は4日、雪印メグミルクなど4社から、12月の供給量を前月比で3割超増やすとの報告を受けたことを公表、消費者の不安が解消されるとの見方を示した。

 バター不足の最大の要因は生乳生産量の減少だ。2013年度の生産量は約745万トンで、1996年度から約14%落ち込んだ。14年度は昨夏の猛暑の影響で乳牛の乳房炎が多発したことも響き、4〜10月の生産量は前年同期比で2.4%減少している。

 乳業メーカーは通常、生乳を日持ちのしない牛乳や生クリームの生産に優先的に回す。このため一定の保存がきくバターは後回しになり、生乳減少の影響を真っ先に受けてしまう。政府は国家貿易で不足分のバターを輸入しているが、輸入バターは冷凍保存できる大口の工場向けが主で、家庭用には行き渡らない事情もある。

 今回、乳業大手は他の乳製品の生産をバターに振り向けて供給を増やすとみられ、「生乳が足りない状況には変わりがない」(大手メーカー)。生乳生産量が減り続ける限り、バター不足はいつ起こってもおかしくない状況で、「生乳の生産基盤の回復こそ重要」(日本乳業協会の石原哲雄常務理事)との声が強まっている。

 ただ、輸入飼料の高騰などで酪農家の経営環境は厳しく、14年の酪農家の戸数は全国で約1万9000戸と、95年から半分以下に激減している。これまでは1戸当たりの規模拡大で生乳生産の落ち込みを緩和してきたものの、限界が来ている。政府が交渉中の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)で、乳製品の輸入が拡大するとの不安も根強い。農水省は「来年度の予算を大幅に増やすなどして、酪農の基盤強化を進め、生乳増加を図りたい」とするが、酪農家や生乳生産の減少に歯止めをかけられるかは見通せない状況だ。

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