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【「戦後日本」を診る 思想家の言葉】
網野善彦 中世に資本主義の源流見いだす
【知るための3冊】
▼『増補 無縁・公界・楽』(平凡社ライブラリー) 網野の名を毀誉褒貶の渦に巻き込んだ問題作。日常生活と接しながらも、異様な雰囲気をただよわす場所に市場ができ、それは資本主義の震源なのだ-スリリングな網野史学入門決定版。
▼『異形の王権』(平凡社ライブラリー) 後醍醐天皇とは何者か。この日本史上、最も手ごわい問題のひとつに明確な解答を与えた著作。網野史学がなぜ、マルクス主義史観退潮後に登場したのか、その意味を考えるためにも必読の一冊。
▼『日本中世に何が起きたか』(洋泉社歴史新書y) 前2冊は網野の最高到達点。だが網野の肉声のように分かりやすく、しかも学問の核心を教えてくれるのが、このあまり注目されない一冊。
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【プロフィル】網野善彦
あみの・よしひこ 昭和3(1928)年、山梨県生まれ。東大文学部卒業。日本常民文化研究所員、都立高教諭、名古屋大助教授などを経て神奈川大教授。日本中世史家として、『無縁・公界・楽』『異形の王権』など、従来の中世像の見直しを試みる著作を次々に発表。「網野史学」と称された。平成16年、死去。
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【プロフィル】先崎彰容
せんざき・あきなか 昭和50年、東京都生まれ。東大文学部卒業、東北大大学院文学研究科日本思想史専攻博士課程単位取得修了。専門は近代日本思想史。著書に『ナショナリズムの復権』など。
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次回「葦津珍彦(うずひこ)」は来年1月8日に掲載します。