ヨン氏は対テロ闘争と民主化という観点から米軍の活動を支持しており、イラクでの米軍増派計画の必要性を強調していた。2008年頃からは拠点をアフガニスタンに移して取材を続け、最近ではタイの政変をバンコクから報道している。
ヨン氏は「米国人ジャーナリストでは最も長い年月を戦場で過ごした人物」とも言われており、インターネットを通じての報道は、2007年、2008年に「全米最高の軍事ブログ報道」賞を受賞している。
米国でこれほど広範に知られた実績を持つヨン氏が、日本の慰安婦問題の調査を始めたという。しかも、これまでの調査の結果、「日本軍の強制連行」を出発点とする米国の主要ニュースメディアの報道は間違っているという結論を打ち出したというのだ。
なぜヨン氏は面会を求めてきたのか
この10月、慰安婦問題の調査のために日本を訪れたヨン氏に東京で会った。私はふだんの勤務地のワシントンを離れて、たまたま日本に滞在していた。ヨン氏に会ったのは、知人を通じて先方からの取材の申し込みがあったからである。
49歳のヨン氏は、米国人男性にしては小柄だが、精悍そうな人物だった。ヨンという名前はアジア系を連想させたが実はヨーロッパ系で、すでに数代にわたってアメリカ国民なのだという。ヨン氏はフロリダ州で生まれ育ち、10代で米国陸軍に志願し、陸軍特殊部隊(グリーンベレー)に入隊した。数年後に除隊してから本格的な高等教育を受け、ジャーナリズムの道を目指したのだそうだ。
ヨン氏は、一体なぜ日本の慰安婦問題に関心を抱いたのだろうか。
本人に問うと、まず最近、タイを拠点としてアジアの諸問題に目を向けるうち、地政学的な観点から、慰安婦問題が日本、中国、韓国、そして米国までをも巻き込む政治や安保に影響する大きな摩擦要因となっていることが分かってきたという。ヨン氏はそのことに関心を持った。また、イラクやアフガニスタンの戦場でも「軍隊と性」には関心を持っており、その延長線上でもあるとのことだった。