【衆院選と争点】県民の本気投票で示せ(12月4日)
第47回衆院選が2日、公示され、県内5選挙区には5党16人が立候補した。全国では1191人が立ち、熱い選挙戦を繰り広げている。大義が見えない解散に賛否はあるが、安倍晋三首相の2年間の政権運営を評価する貴重な機会と考えるべきだ。安倍政治に対してしっかり通信簿をつけるとともに、各党の被災地復興策を見比べる必要がある。
とりわけ本県は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興の途上にある。復興への県民の強い決意と願いを国に示し、古里を取り戻すためにも、棄権せずに一票を投じてほしい。
安倍首相は有権者に不人気な消費税増税の延期を打ち出し、争点を「アベノミクス」の継続の是非に絞り込んでいる。郵政民営化という単一争点(シングルイシュー)で大勝した小泉純一郎元首相の「郵政解散」が念頭にあるのだろう。
しかし、今回の衆院選はシングルイシューではない。安倍政権で決着していない問題は多数ある。原発再稼働、集団的自衛権、特定秘密保護法、沖縄・普天間飛行場の辺野古移設、中央と地方の格差など、どれ一つ取っても今後の日本にとって重要なものばかりだ。12日間の選挙戦で、与野党がこれらの問題に関して中身のある論戦を繰り広げることを期待する。
本県にとっては、大震災と原発事故からの復興が最大の課題だ。発災から3年8カ月余が過ぎ、県外では原発事故が話題になることは少なくなっているが、除染や中間貯蔵施設の建設、被災者の生活再建、住宅、賠償、帰還、廃炉など解決しなければならない難題が山積している。風化を防ぎ、復興を確実に進めるために、県民はこれまで以上に声を上げなければならない。候補者と各党には、古里の将来の姿を思い描けるような明確な政策、具体的な取り組み、財源などを訴えることを望む。
県民は候補者の政見、各党の公約を吟味して、必ず投票してほしい。「投票したい候補がいない」「選挙をしても何も変わらない」などの理由で棄権してしまっては、復興に懸ける県民の本気さが国に伝わらない。日本一高い投票率が必要だ。
残念ながら、選挙は完全を求めるものではない。眼鏡にかなう「ベスト」な候補者や政党がないから棄権するのではなく、少々不満があっても「ベター」を選択するものなのだ。投票しない理由を羅列するのではなく、福島の復興、未来のために一票を投じてほしい。 (芳見 弘一)