シリコンバレーが世界のテクノロジー・シーンを支配し、アメリカ経済が独り勝ちする中で、ドルが独歩高を演じ、原油価格が急落し、新興国経済に途方もないプレッシャーがかかる……それが現在の世界経済の置かれた状況です。

僕はそんな様子を見るにつけ(これは、いつか観た映画だな……)という既視感を覚えます。

その映画とは、1996年頃から始まったドットコム・ブームです。当時は「グローバル・スタンダード」という言葉が流行りました。つまり「世界標準を決めているのはアメリカだ」という考え方です。

アメリカの景気は良かったのでドルは強含みました。

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するとドル建てで取引されている原油の価格には下方プレッシャーがかかりました。

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1年足らずのうちに原油価格が半値になったことで、外貨の獲得をエネルギーの輸出に頼っていたロシアはデフォルトしたのです。

当時はロシアだけでなく新興国が全般的に苦しんでいました。その理由は(新興国にお金を投資しているより、アメリカ本国にお金を戻した方が有利だ)と考えた米国の機関投資家が資金を引き揚げたからです。





アジア通貨危機は、そのような環境の中で起こったわけです。

セーフ・ヘイヴン(避難港)となるはずの日本国債は売られ、相場を読み誤ったLTCMが破綻しました。

普通、このような資金の引き揚げがあると、それが起こる前にブームになった国々が一番痛手を受けます。90年代の場合は、タイランドをはじめとするアセアン諸国がブームでした。

今回の場合、アセアンに代わって脚光を浴びたのはBRICsです。BRICsの中でもブラジルとロシアはとりわけ経済の基礎的要件がぜい弱です。

僕の考えでは、最初に大きな事件が起きるのはブラジルだと思います。

僕は基本的に現在のドル高のシナリオを来年も堅持して良いと思っています。しかし原油価格がこれだけ急落すると、どこかで引っ掛かって、息してない奴がかならず居るはずです。その死体がゴロンと転がった時、世界のマーケットには短期的なショックが走らないとも限りません。

結論的にはドル、米国株へのフルインベストメントは維持しながら、ほんのちょっとの危険な兆候にも慢心せずピリピリ緊張して目を光らせる……そういうスタンスで臨みたいと思います。