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Thursday, December 4, 2014

東京入管でスリランカ人被収容者が死亡――くりかえされる医療放置による死亡事件

  11月22日(土)、またもや入管の収容施設で死亡者が出てしまいました。

  亡くなったのは、東京入管に収容されていたスリランカ人男性、Mihindukulasuriya Nickeles Emmanuwel Fernandoさん(ご遺族の同意のもと、実名と写真を公開します。以下、「ニクルス」さんといいます)です。57歳でした。

  当会では、亡くなったニクルスさんの親族、当会顧問の指宿昭一弁護士らとともに、12月1日(月)に記者会見をおこない、私たちが東京入管の被収容者との面会等をつうじて把握した事実関係などを、報道関係者に公表しました。




1.死亡日当日の状況――被収容者の証言

  被収容者の証言からあきらかになった、ニクルスさんが亡くなった当日の状況は、以下のとおりです。

  11月中旬から東京入管に収容されていたニクルスさんは、他の被収容者2人と雑居房にいましたが、22日の朝、胸の激しい痛みを訴え、7時半頃に同国人の日本語のできる被収容者の通訳で入管職員と面接をおこないました。このさい、ニクルスさんは、聖書を手に持ち職員に見せるなどして「私はクリスチャンだ。嘘は言わない。本当に心臓がひどく痛む。病院に行かせてほしい」等と泣きながら職員に懇願したといいます。職員は当日が土曜日で局内に医者がいないことなどをを理由にこれを聞き入れず、8時頃にはニクルスさんを雑居房から監視カメラ付きの単独房に移動させました。

  ニクルスさんは、単独房移動後も泣きながら病院に行かせてくれとうったえていましたが、職員はこれに取り合わなかったといいます。8時50分頃ニクルスさんの声は聞こえなくなったそうです。9時半から12時までは開放処遇といって被収容者は、各居室から共用部や他の部屋に移動することができるようになるのですが、ニクルスさんは開放処遇の間中うつ伏せの状態のままで姿勢は全く変わっていなかったようだと他の被収容者は証言しています。13時すぎに他の被収容者がニクルスさんの居室をたずねたところ、ニクルスさんは意識不明で脈がなく、体のつめたくなった状態でした。この被収容者はすぐに職員を呼び、職員は心臓マッサージや人工呼吸、AEDの使用などしたが、まるで反応がなかったといいます。救急車が到着し、13時30分頃にニクルスさんは単独室から運び出されたとのこと。

  その後、ニクルスさんは搬送先の病院で死亡が確認されました。警察で法医解剖(新法解剖)をおこない、病理検査中。死因については内因性のものである(外因性のものではない)という以上のことはまだわかっていません。



2.あいつぐ被収容者の死亡――その背景と問題

  入管の収容施設では、このところ、被収容者の死亡事件があいついでいます。この1年あまりのあいだに、収容中の死亡だけにかぎっても、入管は4人もの外国人を死なせています。

  昨年の10月9日には、東京入管でビルマ(ミャンマー)出身のロヒンギャ難民、アンワール・フセインさんが倒れ、搬送先の病院で10月14日に亡くなりました。死因は「動脈瘤破裂によるくも膜下出血」。フセインさんは9日に東京入管で嘔吐(おうと)、体を痙攣(けいれん)させて倒れ、意識不明の状態におちいりましたが、東京入管は50分ちかくものあいだ救急車を呼ばないという信じがたい対応をとりました(急死した被収容者に対する東京入管の医療放置などについての申入書参照)。

  今年にはいって東日本入国管理センターで、3月29日(土)にイラン人男性のSさん、翌30日(日)にカメルーン人男性のWさんが、あいついで亡くなりました(【抗議のよびかけ】東日本入管センターで被収容者2名があいついで死亡参照)。このうちWさんは、1か月近く医療放置され、最後には自力で歩くのが困難な状態になっていましたが、センターはそれでも彼に診療を受けさせることをしませんでした。

  また、収容中の死亡ではないものの、東京入管から東日本入管センターに移収されたのち出所した中国人男性Hさんが、7月11日に肺ガンで亡くなりました(元被収容者が死亡――東日本入管センターに診療の抜本的改革等を申し入れ参照)。Hさんは、収容中、頭痛や腹痛をうったえていましたが、ガンの発見が遅れ、出所後に死亡したものです。

  今回のニクルスさんの件もふくめ、入管収容施設でこうもたてつづけに死亡事件がおきている背景には、緊急医療体制のいちじるしい不備、処遇のやはりいちじるしい不備、そして、外国人にたいする入管の人権無視の体質があるとみてまちがいありません。

  緊急医療体制の不備については、昨年のフセインさん事件でその問題があきらかになったはずであるにもかかわらず、法務省および東京入管はそれをじゅうぶんに教訓化することなく、またあらたな犠牲者を出すにいたったということになります。

  東京入管がニクルスさんをわざわざカメラ付きの単独室に移動させておきながらも、他の被収容者から知らされるまでニクルスさんの異変にまったく気づかなかったという点には、処遇の「不備」と言うにも軽すぎる、「ずさんさ」があらわれています。複数の職員がニクルスさんの居室を何度も通りがかっているはずであるのに、同じ姿勢で長時間動かないニクルスさんの異変に注意を払うことがなかったというのは、おどろくべきことです。12時の昼食の搬送時などもふくめ、異変に気づく機会は何度もあったはずなのです。ところが、職員がようやく事態の深刻さを認識したのは、ニクルスさんの体がすでにつめたくなった後で、しかも、その状態を発見したのは職員ではなく、おなじブロックの被収容者だったのです。

  そもそも、東京入管はなんのためにカメラ付きの単独室にニクルスさんを移動させたのでしょうか。以上の経過をみるに、結果的にニクルスさんは、他の被収容者とともに雑居房にそのままいたほうが、安全だったにちがいないのです。病状を心配し気にかけてくれる他の被収容者の目が届く雑居房のほうが、深刻な病状をうったえても病院に搬送しないばかりか、人が伏して動かなくなっていてもこれを深刻な異常と認識しないような入管職員の目しか基本的には届かない単独房よりも、はるかに安全であることはたしかです。

  こうした緊急医療体制および処遇のいちじるしい不備のさらなる背景には、入管の組織的な体質としての外国人にたいする人権無視の思考があると言うべきです。東京入管のみならず東日本入国管理センター等、入管施設には重篤な状態にある被収容者に対し救急車を呼ばない、または、重篤な状態にある者でも病院に行かせないといった医療放置がしばしばみられます。入管職員にしても、相手が家族や友人、あるいはそうでなくても、たとえば通りすがりの見ず知らずの他人が相手であっても、けっしてこのような対応はしないのではないでしょうか。ところが、被収容者に対しては、ニクルスさんにたいしておこなったような仕打をしているのです。ニクルスさんが病状をうったえ、聞き入られることなく亡くなるにいたるまでの入管の対応からは、いわば、外国人は死んでも構わないという外国人の人権を著しく軽視した姿勢を見て取らないわけにいきません。

  入管は外国人を収容する限りその人権、生命、安全、健康を守る義務、収容主体責任があります。それらを守ることができないならばそもそも収容をいっさいやめるべきです。

  当会としては、東京入管および法務省にたいし、ニクルスさんを死にいたらしめた経過や組織的構造的問題について、また事後の対応について、今後、抗議や申し入れをつうじて追及していきます。また、みなさまにも、抗議・意見提示をよびかけます。



【抗議先】

法務省



東京入国管理局

  • 東京入管総務課電話  03-5796-7250
  • 東京入管代表ファクス  03-5796-7125



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