<日和幼稚園訴訟>園側が責任認め和解成立
◎裁判長異例の前文 防災対策向上求める
東日本大震災の津波で私立日和幼稚園(石巻市、休園中)の園児4人が亡くなったのは、園側が安全配慮を怠ったためだとして、遺族が園側に計約2億6700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審は3日、園側が和解金計6000万円を支払うことなどで仙台高裁で和解した。津波犠牲者をめぐり初の賠償命令が出た訴訟は、提訴から約3年4カ月で終結した。
中西茂裁判長は和解項目に異例の前文を付け、「悲劇が二度と繰り返されないよう、被災園児らの犠牲が教訓として長く記憶にとどめられるべきだ」と言及。幼稚園や保育所など、幼い子どもを預かる施設の防災対策の向上を求めた。
和解項目は和解金の支払いのほか、(1)仙台地裁判決が認定した法的責任を園側が認め、謝罪する(2)園側が、幼稚園や保育所などは日ごろから防災体制を構築することが重要だと認める−など十数点に上った。
訴えによると、園児を乗せた園の送迎バスは2011年3月11日午後3時ごろ、園のある高台から海側の低地に向けて出発。約45分後に津波に巻き込まれ、提訴した遺族の子ども4人を含む園児5人が死亡した。
遺族側は「園側の事前対策の不備を認めた極めて意義のある和解だ。趣旨が広く社会に伝わることを願う」と強調。園側は「司法の勧告を厳粛に受け止め、幼くして失われた尊い命に思いを致し、冥福を祈る」とする談話を出した。
地裁は13年9月、園側は送迎バスを低地に発進させれば被災するという程度の予見はできたと認定し、園側に計約1億7700万円の賠償を命令。園側が控訴した。
◎和解項目の要旨
仙台高裁が教育現場の防災対策などについて言及した3日の和解項目の要旨は次の通り。
【前文】
当裁判所は、私立日和幼稚園側が被災園児らの死亡について、地裁判決で認められた内容の法的責任を負うことは免れ難いと考える。
被災園児らの尊い命が失われ、両親や家族に筆舌に尽くし難い深い悲しみを与えたことに思いを致し、この重大な結果を風化させてはならない。今後このような悲劇が二度と繰り返されることのないよう、被災園児らの犠牲が教訓として長く記憶にとどめられ、後世の防災対策に生かされるべきだと考える。
幼稚園側と遺族側は当裁判所の和解勧告を受け止め、以下の通り和解する。
【1】
幼稚園側は法的責任を認め、被災園児らと遺族側を含む家族に心から謝罪する。
【2】
幼稚園側は、幼い子どもを預かる幼稚園や保育所などの施設で自然災害が発生した際、子どもの生命や安全を守るためには、防災マニュアルの充実と周知徹底、避難訓練の実施や職員の防災意識の向上など、日ごろからの防災体制の構築が極めて重要であることと、日和幼稚園では津波に対する防災体制が十分でなかったことを認める。
(中略)
【5】
幼稚園側は、遺族側に和解金として計6000万円の支払い義務があることを認める。
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2014年12月04日木曜日