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「憲法改正」を争点にする公示日のNHK報道 - 選挙後への布石か

公示日(12/2)の夜、NHKの7時のニュースを見ていて、番組中に行われた党首討論で何とも不気味に感じさせられた場面があった。司会のNHK政治部の曽我英弘が、ぞろぞろと登場する野党の党首に向かって、「憲法改正にどう対応するか」と念入りに質問をしていたことだ。選挙後に「憲法改正」が必ず問題になるが、それにはどう取り組むのかと、そう執拗に尋ね、各党の党首に返答をさせていた。NHKの報道では、今度の選挙の最大の争点は「アベノミクス」で、「他にも重要な争点がある」という説明を与えていたのだが、注目した実際の党首との議論では、アベノミクスの次に重要視していたのは、何と「憲法改正」の問題だった。「憲法改正」が今度の選挙の争点だなどと、今回、これまで報道したマスコミは1社もない。それを争点として持ち込もうとしているのは、平沼赳夫の次世代だけだ。多くの有権者も、第一の争点がアベノミクスで、第二が集団的自衛権を始めとする安保政策であり、安倍晋三の2年間の政治が審判される選挙だという認識でいる。立候補者や政党関係者たちも同じだろう。ところが、NHKの曽我英弘は、「憲法改正」をアベノミクスに次ぐ二番目の重要問題に設定し、その質疑応答で番組を埋めているのである。これは、NHKが勝手に「憲法改正」を争点にしようと仕掛けた図だ。NHK政治部はそれを作為的にやっているのが察知できたので、これは要警戒だなと思っていたら、深夜のTBSのNEWS23でも同じような場面があった。

TBSの党首討論会は岸井成格が無難に仕切っていた。が、横に座る曲者のTBS政治部長の日野桂文が一度だけ割って入る場面があり、それがやはり「憲法改正」についての質問だった。きわめて不自然で唐突な話だったため、議論は長く続かなかったのだが、NHK政治部の不穏な動きと合わせて考えると、裏に胡乱な計略が潜んでいることを疑わざるを得ない。この日野桂文という男の態度は、まさに安倍晋三の腰巾着そのもので、テレ朝の藤岡信夫と瓜二つの動き方をしている。安倍晋三が何か話すと、嬉しそうな顔をしてうんうんと頷いて首を縱に振り、イヌそのものの姿をカメラに撮らせる。そして、安倍晋三を岸井成格の厳しい質問からガードする位置に陣取り、岸井成格を無言で制止する目付の役割を果たしている。藤岡信夫が、古館伊知郎が安倍晋三の嫌がる質問をしないように、目線で制しているのと全く同じだ。日野桂文と藤岡信夫は、安倍晋三を生放送で守るガードマンなのであり、安倍晋三が立ち往生して目をキョロキョロさせる醜態を演じることのないよう、安倍晋三のために全力で奉仕している。日野桂文が安倍晋三に発した質問は仰天のもので、「集団的自衛権の行使容認を閣議決定したから、もう憲法改正は必要ないのか」というものだった。「憲法改正」についての意気込みや計画の存否を問う質問で、それを安倍晋三と平沼赳夫に発して尋ねていた。テレビを見ている右翼層を代弁した司会だ。

TBSというと、従来の報道からリベラル寄りという印象がある。そのTBSの政治部長とは思えぬ極右マインド全開の突っ込みに、何が起きたのか分からず、テレビの前で狼狽してしまった。NHKとTBSと、二つの偶然が同時に重なれば、裏で何が画策されているかを想像するのは容易だ。NHK政治部与党キャップの曽我英弘、TBS政治部長の日野桂文、テレ朝政治部長の藤岡信夫、(他にもいるが)この3人は、常に安倍晋三と緊密に連絡を取り合い、安倍晋三と豪勢な飲み食いをして密謀を凝らし合っている仲間だ。安倍晋三からすれば、宮家邦彦や百田尚樹と同じ腹心の部下の存在で、長谷川幸洋や後藤謙次や田崎史郎などのイヌ連中と並んで、自己の支配と権勢を維持するための道具である。どうやら、来年は「憲法改正」の政局になる。ここでもう一度、安倍晋三の選挙と政治の手口を復習して整理しなくてはいけない。安倍晋三の2年間の政権でこれが三度目の国政選挙となる。三度の選挙とも争点は「アベノミクス」だった。争点が確定するのは公示日の時点で、マスコミ報道によって争点が固まったときが、すなわち選挙で勝つ側と負ける側が決まる瞬間でもある。このことは、この18年間の小選挙区制の選挙を見てきた者は経験で知っている。安倍晋三は、選挙をするときは必ず「アベノミクス」を争点にする。子飼いのマスコミを使って、選挙の争点を「アベノミクス」に設定させる。景気を争点にすると有利にできるからだ。

三度とも「アベノミクスを問う」選挙である。そしてどうやら、報道の気配では、三連勝に落ち着きそうだ。選挙のときはアベノミクスを言い、景気を宣伝して周到に勝利を固めつつ、選挙が終わった途端、選挙では全く表に出してなかった「安倍カラー」で政局を激震させる。2013年の春には、河野談話の否定と憲法96条の改訂に動き、橋下徹と組んで邪悪な騒動を起こした。それが失敗した後、夏の参院選では再び「アベノミクス」を争点にし、ねじれを解消した途端、一気に秘密保護法の政局に出て乱暴に可決した。さらに、年が明けて2014年になると、武器輸出三原則の禁止を破棄し、とうとう集団的自衛権の閣議決定まで押し切ってしまった。安倍晋三がそこまでできたのは、選挙で二連勝し、永田町に盤石の体制を敷いたからであり、選挙に勝つたびに本人の倨傲と独善は過激化し、「安倍カラー」の濃度は毒々しさを増してゆく。要するに、曽我英弘と日野桂文の「憲法改正」は予告なのだ。次は「憲法改正」だと国民に示唆しているのである。昨年の夏、参院選のとき、退屈な「アベノミクスの是非」の論戦を聞いていたとき、まさか、それが終わった途端に秘密保護法が出てくるとは思わなかった。あのときの党首討論も、同じ常套句を海江田万里や志位和夫が言っていた。アベノミクスは一部の者だけが潤う経済政策だと。同じ演幕が続いている。見飽きた芝居が終われば、ギョッとする「安倍カラー」が目の前に出現するのだ。出番を待っているのだ。来年は2015年、戦後70年の節目の年である。中国は解放70年、韓国は光復70年、同じく節目の年だ。

戦後70年にあたる新年は、あと1か月でスタートする。三たびの選挙勝利を確実にした安倍晋三は、来年のプランを着々と準備中で、節目の年を派手な「安倍カラー」で塗りつぶしてくるに違いない。明文改憲の発議があるかもしれない。誰もが面妖に感じるのは、今回、維新の立候補者が異常に多い事実であり、民主が小選挙区でわざわざ自党の候補者を降ろして、維新の候補者を立てている状況である。解散前の報道では、今回は第三極が完全崩壊する選挙になるという見方で一致していた。その象徴的な事件が、みんなの解党と浅尾慶一郎の泣きべそと、その直前の醜い内輪喧嘩だった。今回の選挙で、第三極は国民から見放されて泡沫と消え、昔から同じ看板を掲げた政党のみが生き残るだろう、そういう観測がされていた。ところが、蓋を開けてみれば、維新は84人もの候補を大量擁立していて、選挙予想でも40人前後の当選が見込まれている。党首討論でも、やたら江田憲司が威張っている。小選挙区で民主が協力支援しているからであり、民主の支持票が流れ込むからだ。安倍晋三は、本音を隠して演技に徹し、アベノミクスの宣伝しか言わないのだが、どうやら、国民を欺いているポーカーフェイスは安倍晋三だけでなく、民主右派と維新の連中も同じ思惑なのだ。ほぼ間違いなく、選挙が終わると同時に野党再編の政局になる。強烈な新自由主義と右翼イデオロギーを党是とする維新が、民主と合体し、民主は維新と同じ政策の右翼政党に様変わりするだろう。選挙の裏側を睨めば、「憲法改正」への与野党の策謀が、言挙げせぬまま足並みを揃えて水面下で進行している。

2012年の三党合意のような衝撃の政治が、今度は「憲法改正」で再現されるかもしれない。海江田万里はこの選挙でお払い箱となり、岡田克也が代表に、江田憲司が幹事長になり、安倍晋三と「憲法改正」で合意する挙に出るのではないか。戦後70年の来年、「安倍談話」を出すことはすでに公言されていて、河野談話と村山談話の見直しに動くことは安倍晋三の既定路線だ。この選挙に勝利して民意の正当性を得、さらに民主と維新がコンバージェンスすれば、その環境は十分に整う。忌まわしい予想であり、Blogの読者を憂鬱にさせて申し訳ないが、公示日(12/2)のテレビ討論を見ながら、そのような憂鬱な次の事態を想像した。選挙を重ねるたび、この国は中国・北朝鮮と同じスタイルの独裁と人治の統治体制に変貌している。安倍晋三が金正日と酷似した全権委任者(総統・首領)になり、マスコミによる独裁者の偶像崇拝がどぎつく進んでいて、独裁者に忠誠を誓わない者が片っ端から排除されている。誰も止められない。日本国憲法の民主主義の制度の下で、ナチス・ヒトラー型の政治が着々と工事され、後戻りできない構造物に固まり、民衆がそれに順応する国家になっている。われわれは、アベノミクスを「主体思想」の「千里馬運動」のように称え、それを歓呼し万歳する平壌市民になりつつある。アベノミクスによって収奪されながら、刷り込みによってそれを信仰する倒錯した人間になっている。思えば、ヒトラーが支持を得た秘訣も、経済再生と景気回復のスローガンだった。安倍晋三の「デフレ脱却」は、ヒトラーの「インフレ克服」と相似形だ。いよいよ、戦後70年という舞台で右翼の悲願である「憲法改正」の政局が始まる。

さて、最後に、党首討論のテレビを見ていたら、志位和夫が、沖縄での選挙協力を誇示する一幕があった。だが、それを言うなら、どうして、2月の東京の都知事選のときに沖縄方式を模索しなかったのか。もし、反安倍・脱原発の結集軸を東京で先に確立させていたなら、今回の沖縄と同じように、衆院選での統一候補の調整という絵を描く地平に進めたはずである。文化人と市民が主導し、共産・社民・生活・民主の4党を協議させ、さらにその右側の保守の一部(細川・小泉)を巻き込み、沖縄型の反安倍統一戦線へと持って行けたはずだ。自民党県連の前幹事長と組んで、それをシンボルとして担げるのだから、リベラル寄りの保守で脱原発の細川護煕を担げないわけがない。左翼は道を誤った。



by yoniumuhibi | 2014-12-03 23:30 | Trackback | Comments(2)
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Commented by NY金魚 at 2014-12-03 17:41 x
ひとりの俳優であった賢者が逝かれて、権力の衣を着た愚者が、魑魅魍魎の力を借りてやりたい放題。いったいほんとうの愚者たちはだれか、という言葉を発することをめいっぱいこらえて、賢者の最後の演説を聴きなおしましょう。
菅原文太最後の演説、沖縄県知事選挙2014年11月1日。
https://www.youtube.com/watch?v=EOV7qIZisw4#t
この最後の言葉ひとつを取り上げても、この人が生きてきた強い足跡を感じる。遺されたぼくたちがやらねばならぬふたつのことは明確に語られた。
「政治の役割はふたつあります。ひとつは、国民を餓えさせないこと、安全な食べ物を食べさせること。もうひとつは、これがもっとも大事です。絶対に戦争をしないこと!」
Commented at 2014-12-03 18:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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