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【私説・論説室から】

保育所も迷惑施設か?

 「まるで“ニンビイ”扱いではないか」。保育所に対し、近隣から「子どもたちがうるさい」との苦情が相次いでいることに、そう思った。「ニンビイ」とは英語の「NOT IN MY BACKYARD」の略語で、「わが家のそばにつくられるのはごめんだ」という迷惑施設への反応を指す。福島大学の清水修二元副学長は原発、米軍基地、ごみ処理施設をニンビイ迷惑施設の代表例に挙げる。

 他人の物音に敏感なドイツではかつて、各地で近隣住民らが保育所を相手取り子どもの声や物音への苦情を裁判所に申し立てて、住民が勝訴するケースが相次いだ。二〇〇五年夏にはハンブルクの保育所に閉鎖命令が出た。時は総選挙直前。野党の保守、キリスト教民主同盟は、問題を放置していた社会民主党、緑の党による連立政権を「子どもへの敵意に寛大」と批判。これをきっかけに各州議会や連邦議会で議論が進み、ベルリン、ハンブルクでの条例制定を経て、一一年六月、「保育所や公園での子どもの物音は、環境に有害とはみなさない」ことを定めた法律が成立、保育所が訴えられることのない流れができた。

 東京都で条例改正の動きもあるが、親の長時間労働で夜間も預かり、住宅密集地にも立地する保育所が多い日本では、騒音問題はどこにでも起こり得るトラブルだ。せっかくの衆院選。争点の一つとして、国政が解決に取り組むきっかけとしては。 (熊倉逸男)

 

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