Fuzzy Logic

時事ネタ、音楽、映画、本、TV番組などなど、幅広く適当に語ります。

「不利益の政治」と、消費増税延期の影響

とりあえず14日までは選挙期間ということで、このブログでも可能な限り選挙関連、政治関連のネタを勇気を振り絞って取り上げていきたいと思います。


利益の政治から、期待の政治、そして「不利益の政治」へ。

というわけで、日本経済新聞の12月3日付朝刊の論説をご紹介。

デフレ脱却をめざすアベノミクスのひとつの特徴は、期待という人の心理に働きかける経済政策である。今すぐではなく、時間軸をつかいながら、ちょっと先の豊かさに期待を持たせる時間差攻撃がミソだ。「期待の政治」である。


ひと昔前の自民党は右肩上がりの経済を前提に、利益の分配がお家芸だった。公共事業を中心に全国津々浦々までみんな等しく豊かになる「利益の政治」だった。


しかしもはやその手法は使えない。すぐさま利益を与えるのも無理だ。期待の政治はそうした中から出てきた変化球である。


(中略)


ただ心配なのは、自分たちのふところの豊かさを追い求めるのはいいが、子や孫のふところまでちゃんと考えているかどうかという点だ。


消費再増税の延期について、中止を主張する政党は別にして、選挙の争点にはなっていない。デフレを脱却しまず経済を立て直さないことには前に進めないというのはその通りだ。経済を大きくするのが何より大事だ。成長戦略が促されるゆえんだ。


しかしどう考えても、膨大な借金を抱えたままで、この国が先々までやっていけるわけがない。少子高齢化はいやおうなく進む。地方はどんどん疲弊していく。入るを量りて出ずるを制すしかない。とりわけ毎年増えていく社会保障費の抑制はやむを得ない。


(中略)


これから、より迫られるのは「不利益の政治」のはずだ。それを知らん顔して論戦を交わしていていいものかどうか。過去の業績と将来への期待をはかりにかけながらの選択になるとしても、不利益も視野に入れたものでありたい。そうしなければこんどの選挙は次につながらない。


「不利益の分配」も問う時だ 衆院選公示 :日本経済新聞

ぼくが昨日の記事(「耳障りのいいこと」しか語れない政治家はいらない - Fuzzy Logic)で言いたかったのはこういうことだったんですが、さすがに非常にわかりやすくまとめられていると思います。じゃあその不利益をどうするのか。それを語るのが政治ではないのか?と。

考えられる道がいくつかあって、そのどれを選ぶかについての最大の要点は、「国民自身がどういう国をいいと思っているのか」「どういう国の形にしたいのか」という点。現状では、どれも妄想を語られてるみたいで、はっきり言ってどれも選べません。何も具体的なプランがないのに「やる気はあります! だから任せて! 大丈夫だから!」とか言われても、プラン準備できてない時点で、どう考えてもやる気ないじゃないですか。そんなこと言う営業マン、嫌でしょ?


消費増税延期の影響とは

BLOGOSで興味深い対談記事を見つけたので紹介させていただきます。ちょっと長いですが。

経済成長も、再分配も――消費税増税延期が及ぼす影響とは? - 駒崎弘樹×飯田泰之×荻上チキ (1/3)


そして、少子化対策の歴史は非常に不幸なもので、随分前から少子化が進むことはわかっていたにもかかわらず、十分な予算も施策も打たれずにきました。具体的には、94年のエンゼルプラン、99年の新エンゼルプラン、04年の子ども・子育て応援プランと、5か年計画のように戦力の逐次投入が行われてきたんです。そして、予算の分捕り合戦の中では、非常に微々たる予算しか得られず、当然、実際の効果も弱かった。いわば少子化対策の失われた20年という歴史があるんですね。


十分な予算を獲得するには、相当な政治的コミットメントが必要だということがわかってきた。そうして、ようやく消費税から税源を固定させて、少子化対策にドカンと7,000億円を割り当てようという話になったんです。これまでは数万人単位の待機児童解消を、5年間で40万人解消という規模感です。


その限りにおいて、消費税に肯定しうる要素があると思っています。ぼく自身、消費税一般に関してはあげないで済むならあげない方が良いと思っていますし、増税するにしても低所得者対策などを打つ、所属税の累進強化や相続税など、きちんと順番は考えないといけないと思っています。更に消費税によってのみ財政を再建すべしとも考えていません。


(中略)


もともと少子化対策、待機児童解消、そして子育て支援については、1兆1,000億円が必要だという試算があり、民主党政権時に、7,000億円を消費税増税分から、4,000億円はどこか別のところから調達するという話になっていました。しかし政権交代後、どうも4,000億円の確保は難しそうだから、とりあえず7,000億円で走り出そうという話に変わってしまった。これでは、全産業平均以下の保育士給与の改善や、児童養護施設の強化、学童保育の質改善等、望むべき水準を達成することは不可能になりました。子ども子育て会議は失望して、「1兆円用意するって言ったんだからちゃんと用意してよ」と要望書などを提出してきましたが、どうにもなりませんでした。


ひとまず確保できた7,000億は、4,000億を主に保育所の数を増やすといった「数」の部分に、3,000億を保育士の処遇を改善する、昔は孤児院と呼ばれた児童養護施設を強化するなど「質」の部分にあてることになりました。ようやく走り出せる! と意気込んだ矢先に、増税を延期するという話が出てきてしまった。5%から8%の増税にとどまったら、予算は4,000億しか確保されません。4,000億で「数」だけ増やすわけにもいかない。処遇が悪いために保育士の資格を持っていても働かない人が多い中で、ただ箱の数を増やしても、働く人がいなければ、結果として保育所は増やせないからです。低処遇や過剰な業務負担を解決すべく、処遇改善・人員配置改善等、質も改善しなくてはいけない。


ですので、増税しないならば、かわりの3,000億をきちんと確保してほしい。といっても1兆円強を用意するといって結局7,000億しか用意してくれなかった前科もちの政府をそう簡単には信じることはできない。これが審議会に参加している、保育園団体や子育て支援業界の思いの最大公約数でしょう。


(中略)


ええ、子育て分野は、介護保険、医療保険や年金など保険制度で制度設計され、恒久財源がベースとしてしっかりある他の社会保障と、予算の分捕り合戦をしなくてはいけません。保育三団体や幼稚園などの団体は力があると言われますが、他の分野に比べたらぜんぜん弱いし、ベースとなる保険料収入がないから、そもそも弱い。増税が延期されたかわりに何らかの形で予算がついたとしても、2017年度の消費税増税もやめる、つまり永久凍結されてしまったら、おそらく予算を措置し続けてくれないのではないかという心配がある。


ですから、たとえ努力目標だったとしてもようやく紐づけられた消費税に私たちはこだわるしかない。法律上ではっきりと明記されていますが、それでも「弱い紐づけ」だという指摘もあるかもしれません。ですが、財務省から予算がとれたという政治的なモメンタムが、非常に重要なんですね。

抜き出したのは、病児保育事業を推進するNPO法人「フローレンス」の駒崎さんの発言です。この一連の流れは消費税延期の影響に関して象徴的かと思われましたので取り上げさせていただきました。

もちろん、一庶民としては消費増税はされたくありません。家を購入するなど、大きな出費を控えた人にとっては、下手すれば百万円単位の影響がある人もいるでしょう。

しかし、財源が無限ではない以上、予定された増税が実行されないというのは、こういうことだと思います。弱者のために増税反対、というのは一見美しい論理ですが、その裏で別の弱者に差し伸べられるはずだった手が引っ込められているという現実は見落とすべきではないのではないでしょうか。



今日はここまで。次は「投票率を上げる」ということについて考えたいと思います。