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 民主党のマニフェスト(政権公約)は「今こそ、流れを変える時」として「アベノミクスからの転換」「厚く、豊かな中間層の復活」を掲げた。

 「この道しかない」と繰り返す安倍首相に対して、「いや、ほかの道もある」と訴える戦略なのだろう。その意味で、かろうじて与野党の「対立軸」は見えてきたと言っていい。

 しかし、それが実効性をもつ「対案」と呼べるかと言えば、いささか物足りない。

 冒頭の2ページを埋めたのは安倍政権の2年間への批判である。「実質賃金が15か月連続マイナス」「GDPが二期連続マイナスに!」といった見出しが列挙されている。

 政権批判の受け皿をめざしたのだろうが、有権者が聞きたいのは現状からどう抜け出すかの道筋だ。そこを示さなければ、政権与党の経験を持つ政党として怠慢のそしりを免れない。

 特に消費増税の延期に同調し、一体改革を棚上げしたのは、財政リスクから目を背けていると言わざるをえない。

 アベノミクス批判にうなずける点はあるものの、具体的な政策につながっていない。第1の矢の金融緩和については急激な円安に伴う弊害を批判し「柔軟な金融政策」を掲げたが、それだけでは説得力に乏しい。

 第2の矢の財政出動に対しては、公共工事中心のあり方に疑問を投げかけ、子育て支援など「人への投資」を訴えた。「コンクリートから人へ」の発想は理解できるが、その理念を生かし切れなかったのが民主党政権ではなかったか。

 「一向に進まない」と批判した第3の矢の成長戦略も、「未来につながる成長戦略」を掲げたが、やはり抽象的だ。

 バラ色の公約を掲げて失敗した民主党への不信はなお根強い。野党になって2年。議論を重ね、政策を鍛える時間は十分あった。民主党の政権担当能力を示す絶好の機会のはずだ。

 集団的自衛権の行使容認の閣議決定については「立憲主義に反するため、撤回を求める」としているが、手続き論にとどまり、集団的自衛権そのものの是非には踏み込まなかった。党内論議をまとめきれなかったとすれば、党としての一体性に疑問符がつく。

 一方で、野党間の連携には前進もあった。維新の党との間では、同一労働同一賃金法や領域警備法の制定など5項目の共通政策で合意した。急場しのぎではあっても、今後の論戦を通じて、「次の政治」の選択肢を示し続ける必要がある。