無要の葉

振り上げた正論(つるぎ)は切り裂くためじゃない

そもそもブログとは一体全体なんですかという話

 インターネットの世界で遊んでいる僕たちはいつも楽しかった。今日もびっぱーがバカをやっているのを見て笑って友達のホムペを見て回って知らないおじさんの旅日記を楽しそうに読んでいたんだ。2ちゃんのまとめwiki更新にドキドキしたりフラッシュ職人に憧れたりDTMの交流サイトはすごいなあとか思ったり、インターネットの世界はいろんな人がゆるく遊ぶところだった。

 

 そんなある日、新しい言葉が生まれた。「weblog」という、web上に簡単に記録を残せるシステム。略してそれは「ブログ」って呼ばれた。無料のブログサービスが流行って、僕たちはこぞってブログを書きはじめた。ホームページを作る技術がなくても、テキストさえあれば簡単に面白いコーナーを作ることが出来るようになった。写真を載せれば更にそれっぽくなった。ホームページみたいにいろいろカスタマイズできた。僕たちは誰が一番面白い記事を書けるかを競った。

 

 ブログにはたくさんの情報があった。おいしいお店の口コミとか、最近見た映画の感想とか、楽しいことばかりでなくて病気で苦しんでいる人の日記とかいじめられて辛い気持ちを吐き出す学生の気持ちもあった。全く知らない人なのに、その人の人生の一部を覗き見できるシステムはすごいと思った。現実社会では絶対出会わない人たちに出会えるインターネットはすごい。その時まで僕たちは思っていた。

 

 でも、ある時から景色が変わって見えるようになった。ブログにアクセスした分だけ広告料としてお金がもらえるシステムが生まれた。これによって面白いことを書いてお金を稼げるようになった。最初はとてもいいことだと思っていたけれど、次第に僕らはブログの世界から遠ざかることになった。何故かって? ブログが面白くなくなったからだよ。

 

 アクセス数を稼ぐために、まずは悪口を言って注目を集める人が現れた。次に、みんなの大好きなコンテンツを著作権に関係なく勝手にまとめる奴も現れた。最終的にお金のためにブログをやる人も現れた。「お金儲けについての話」がしたいんじゃない。「お金を儲ける」ために面白くない話をたくさんするようになった。新発売の商品があったらとりあえず写真を撮ってブログに上げたり、新しいドラマが始まればあらすじだけ紹介して、ネタバレと言って発売されたばかりの漫画の最後のコマの画像まで掲載するブログが現れた。「お金のためなら節度やルールは関係ない」という風潮だ。僕らは飽き飽きした。毎回毎回同じ話でつまらない。

 

 彼らはブログが楽しくてやっているんじゃない。お金が儲かることが楽しくてやっているんだ。僕らがゆるく楽しく過ごしていた日々を「一銭の価値もない」とあざ笑い、「お金儲けをしていない愚民ども」のレッテルを貼り始めた。更に啓蒙活動を始めた。面白おかしい記事を書いていた僕の友達は無料ブログサービスを使っている。お金儲けより楽しいことを書きたいだけなのだ。それをあいつらはこう評する。

 

 

「有料サービスで広告の位置を考えなよ」

「そんな古いゲームだと検索で人がやってこないよ」

直帰率がひどいね」

「そんな夜中に更新しても誰も読まないよね」

SEO対策してる?」

「はっきり言ってただの個人の日記レベル」

 

 

 お金儲けをしていない僕らはお金儲けをしている人たちより劣った存在だった。

 

 知らなった。

 

 だって僕らはプロじゃないから。

 

 プロになるには、大事なものを犠牲にしないといけないって言う。

 

 そんなものを上げるくらいなら、一生アマチュアでいい。

 

 プロになんかなりたくない。

 


ロストワンの号哭 - YouTube

 

 

 心のある記事は書けますか

 子供の頃の夢は言えますか

 その夢すら金に換えたのは

 おい誰なんだよ もう知ってんだろ

 

 いつになればプロになれますか?

 そもそもブログとは一体何ですか?

 どなたに伺えばいいんですか?

 おいどうするんだよ

 

 

 もうどうだっていいや

 

 

 

 

   

※これはただの臨場感のあるフィクションです。