(2014年12月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
原油価格の下落は世界経済にとって何を意味するのか? その答えは、原油価格が下落した理由と原油安が続く期間によって変わってくる。だが、総合的には、原油安は注意事項を伴うとはいえ、世界経済にとって有益なはずだ。
とりわけ重要なのは、石油純輸出国に与える影響かもしれない。脆弱な生産国の中には、弱体化が切に望まれる政権が含まれる。その筆頭格がウラジーミル・プーチン大統領のロシアだ。
だが、ここでも、良いことがあれば悪いこともある。モスクワのガイダル研究所のキリル・ロゴフ氏が指摘している通り、原油価格の下落はプーチン氏の失地回復主義を激化させる恐れがあるのだ。
6月下旬から今月初めにかけて原油価格は38%下落した。これは大幅な下落だ。だが、それ以上に大幅な原油安が1985年の春から1986年の夏にかけて起きた。1980年代の初めから半ばにかけての原油急落――偶然ではなく、ソ連崩壊に先行して起きた出来事――は、2つの事態の展開に起因していた。
1つは、1970年代の2度の「石油ショック」が引き起こした消費と生産のエネルギー強度の低下。もう1つは、メキシコや英国など、石油輸出国機構(OPEC)非加盟国の著しい生産の出現だ。
大きく変わる世界の石油生産
今回の物語もそれほど大きく異ならない。供給サイドでは特にそうだ。国際エネルギー機関(IEA)の最新の「世界エネルギー展望」によると、OPEC非加盟国の石油と天然ガス液の供給量は2013年の日量5050万バレルから2020年の5610万バレルへ増加する可能性がある。そうなれば、世界の生産に占めるOPEC非加盟国のシェアが58%から60%に上昇する。
増加分の最大64%が北米から生じると予想されている。北米の生産拡大の背景にあるのが、米国の非在来型石油――いわゆる「タイトオイル」――とカナダのオイルサンドだ。一方、OPECの生産量は概ね一定のままだと予想されている。
非在来型石油の生産の画期的進歩はすでに、生産にかなりの変化をもたらした。米国の石油・天然ガス液の生産量は過去4年間で日量400万バレル増加した。HSBCによると、米国の生産量は今年、日量140万バレル増える見通しだ。リビアの生産も回復している。最後に、ユーロ圏と日本と中国の予想外の経済的な弱さは、今年の世界需要の推定量を日量50万バレル減らした。