衆院選が公示され、大震災・原発事故の被災地・福島県では自民党の安倍晋三総裁、民主党の海江田万里代表が第一声を上げた。訴えは被災者の胸に響いたのか。
安倍氏は、総裁に再び就任後に行われた三回の国政選挙すべてで福島県を第一声の場所に選んでいる。福島復興がなければ日本再生はないからだろう。
安倍氏は今回、相馬市の漁港で「復興を進めるためにも経済を強くしなければならない。デフレから脱却し、経済が成長し、皆さんの生活が豊かになる。これがアベノミクスだ」と訴えた。
景気が回復すれば、復興も進むという理論だが、安倍氏主導の経済政策(アベノミクス)が資材や人件費の高騰を招き、復興事業の進展に深刻な影響を与えていることも、また事実だ。
安倍氏は福島県を縦断する常磐自動車道の全面開通を前倒しする方針も表明した。原発事故からの復興をアピールする狙いだろう。
復興の基盤となるインフラ整備の重要性は否定しないが、被災者の一人一人に寄り添う生活支援もまた、大切ではないのか。
福島にとっては原発をどうするのかも重要な問題だ。自民党福島県連は県内にある全十基の廃炉を公約しているが、安倍氏が原発・エネルギー政策に言及することはなかった。不誠実ではないか。
海江田氏は、原発事故の避難者が最も多く暮らす、いわき市のJRいわき駅前で「復興に与党も野党もないのはその通りだが、(安倍政権の二年間で)復興が本当に加速したのか」と指摘した。
原発については「安倍政権は事故がなかったようにどんどん動かそうとしている」と、二〇三〇年代の原発ゼロ方針を強調した。
政権の問題点を追及することは野党の役目だ。原発ゼロは国民の多数が望んでいる。
しかし、復興に関しては、民主党は大震災当時、政権を担っていた当事者だ。責任を共有していることを忘れてはならない。批判合戦は有権者の胸には響くまい。
十四日の投開票日まで、福島をはじめ、東北の被災地に選挙応援で入る党首も多いことだろう。
被災者に寄り添い、一日でも早い復興を成し遂げるとの決意を、披歴し、その具体策を競い合ってほしい。それが福島をはじめ東北の一日でも早い復興につながると信じたい。被災地を訪れること自体が目的となっては困る。
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